ゴシップ誌が取り上げた全弁協「保釈保証事業」

     一時のように、マスコミや機関誌・紙によって、情報が表に出なくなっている日弁連の保釈保証事業構想(「潜行する日弁連『保釈保証制度』事業」)ですが、思わぬところで取り上げられているという情報が入りました。「週刊実話」9月6日号の「ニューススクランブル」というコーナーです。

      「今秋設立 ヤクザ専用 『保釈金代納制度』に群がる“奴ら”」

     同誌のこの見出しは、さすがに問題があるといわなければなりません。当初の予定はともかく今秋に設立が確定的な状況かは疑わしいものですが、いうまでもなく、この制度が「ヤクザ専用」のものとして構想されているわけはありません。男性向けゴシップ誌とされ、暴力団関係の話題も掲載される同誌の取り上げ方としては、こうなるという見方もありますが、これはやり過ぎ、あるいは同誌の色を付け過ぎという評価はせざるを得ません。

     しかし、本文の内容は司法担当記者のコメントや関係者の取材に基づき、これまでの一般メディアの取り上げ方とは明らかに違う視点を提示しています。以前、当ブログでも触れたこの制度と暴力団との関係です(「暴排条例がある社会の不安」)。

     長引く裁判の間に被告人が逃亡したりしないように、通常、高額な金額が設定されている保釈保証金。これが高額なために、保釈請求ができない暴力団が急増。組からも見放された構成員らが拘置生活を強いられている。ところが、それを一変させそうな機運を作り出しているのが、この構想である――と。

     つまり、保証書による保釈に道を開こうとする、この構想は保釈のハードルをぐっと下げることによって、暴力団の拘置免除にも道を開いてしまう、また、そういう期待がもたれているという話です。既に保釈金の立て替え事業で、着実な実績を作り、多くの弁護士にも利用されている一般社団法人日本保釈支援協会が、重罪や暴力団の資金源になる事案への支援をしない方針を徹底していることを取り上げることで、裁判所の許可が出たものは、すべて手続きの対象にする全国弁護士協同組合連合会(全弁協)が保証機関となる、この制度の危険性を印象付けています。

     また、記事はこれまた制度があまり表立って明らかにしていないようにとれる没取の際を想定して全弁協がかける保険について、それを引き受ける予定の「損害保険ジャパン」の社名を挙げて言及しています。同社がこの制度が保釈のハードルを下げることに協力するというニュアンスを伝えるとともに、さらには、前記ここでも取り上げているように金融庁との間の折衝でネックとなる「保険」とみなされるという問題が、関係者がこの制度の仕組みについて「鳴りを潜めている」理由ということを司法担当記者に語らせています。

     こうしたとらえ方そのものにも、この制度を推進する側には当然異論があると思います。ただ、重要なことは、少なくともこの制度のこうした危険性は払拭されていない、ということです。そして、問題はそういう意味で、今回の取り上げ方がされる素地は十分にあるということを、果たして推進している側がきちっと認識しているかということです。

     反響という面からは、ゴシップ誌という特殊性をいう声もありそうですが、「週刊実話」は、当然、その内容から暴力団関係者や警察関係者の目にとまるメディアです。既に、この制度の影響について、警察関係の一部から強い関心の目が注がれているという情報も入ってきていますが、今回の記事も単なるゴシップ記事のようにとらえるのであれば、それは相当に今後の周辺の動きを見誤るものになるはずです。

     反社会勢力への間接支援、暴排条例への抵触といった問題が絡むだけに、「損害保険ジャパン」は、企業として、ブランドイメージにかかわることになりますから、当然、穏やかではないはずですが、情報が詳細に伝えられていない全弁協組合員でもある多くの弁護士にも、穏やかではいられないことのように思えます。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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