「出来レース」としての法曹養成制度検討会議

      「法曹の養成に関するフォーラム」の後継組織である、「法曹養成制度検討会議」のメンバーが発表されましたが、その顔ぶれには落胆の声が聞こえてきます。フォーラムでおなじみの顔がそろい、大学関係者が多いその構成は、フォーラムと同様の展開になるのではないか、と。つまり、法科大学院をなんとしてでも守れ、という主張が、会議をリードする、いわば「法科大学院制度護持検討会議」になることが目に見えているのではないか、という話です(「PINE's page」 「Schulze BLOG」 「福岡の家電弁護士 なにわ電気商会」 「ニガクリタケは偶に生えます」 「白浜の思いつき」)。

     皮肉をいえば、これぞ「有識者会議」という典型例。つまりガチガチの出来レース、逆に言えば、出来レースだからこそ、やる意味があるとする方々がいる「有識者会議」の姿のようにみえます(「根本的な議論への内なる抵抗」)。

     一般的に考えれば、フォーラムでの1年間の議論を経て、さらに法曹養成制度関係閣僚会議が、1年かけて結論を出すことを前提に、その下にこの検討会議を置いて話し合う、そしてフォーラムの「論点整理」を踏まえるという検討会議が、またもや同じようなメンバーで議論をする、ということの意味に疑問を持たれてもおかしくありません。

     もちろん、現在の法曹養成のテーマはそれほど簡単に結論を出せない、だから国費を投入して、こうしたプロセスを経ることには意味がある、といわれれば、そうですか、という話になるかもしれませんし、フォーラムの結論に異論がある側からすれは、まだまだこれから巻き返しのための延長戦という期待の仕方もないわけではありません。

     しかし、出来レースとしての「有識者会議」は、およそそういうことではありません。少なくとも、今回の典型例のメンバー構成には、「論点」について、それを検証するために、これまでとは別の視点からの議論を深めるための場を構成している印象は希薄ですし、ましてや巻き返しどころか、異論のガス抜き的な意味すらも感じられません。つまり、ひたすらこれまでのレールの上を走らせる1年が見えるということになります。

     では、それが何なのかといえば、それは前記した法科大学院を中核とした法曹養成を守るための施策、つまりは前記弁護士ブログ氏の指摘にもありますが、受験条件化・予備試験などには手をつけない形での法科大学院制度の存続、下位校切り捨てと定員削減による合格率アップによる人気回復――。ある意味、現在、起こっていることと、それを生み出している制度の問題を最も議論すべき点、メスを入れるべきという点を固定化する、はみ出しを許さない、とするものと予想できます。これが、この出来レースの出来レースたるゆえんということにもなります。

     ただ、どうしても疑問を持ってしまうのは、これがそもそも国家が出来レースをしかけるほどの価値があることなのでしょうか。法科大学院制度存続に関係者がこだわる理由としては、作ってしまった以上の「有効活用」という表向きいわれる論調のほかにも、教員失業や責任論の回避といったことも、ささやかれています。ただ、そのことが本当に、その価値なのでしょうか。多くの人が予想するように、前記レースを突き進んでも、法曹界に人は来ず、どんどん沈下していく。そして弁護士の変質だけが、「改革」の負の遺産として、残り続けることになります。この出来レースに、そうしたこの国の司法の未来を回避することを上回る価値を国家が見出すのでしょうか。

     責任ということでいえば、もちろんそこにこそ、将来問われるべき責任が発生してもおかしくありません。ただ、出来レースの仕掛け人にも、その参加者にも、その意識があるかどうかは大変疑わしいといわなければなりません。自分が参加した有識者会議の提言が誤りだった、失敗だったという反省の弁を聞けるとは、残念ながらとても思えません。それがまた、「有識者会議」というものだ、といわれてしまえば、それまでなのですが、これまた司法改革という議論で、それが繰り返されるような予感がするのです。


    ただいま、「日弁連の『法科大学院制度の改善に関する具体的提言』」についてもご意見募集中!
    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。http://www.shihouwatch.com/

    司法改革に疑問を持っている人々ための無料メールマガジン「どうなの司法改革通信」配信中!無料読者登録よろしくお願いします。http://www.mag2.com/m/0001296634.html

    にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
    にほんブログ村

    にほんブログ村 その他生活ブログへ
    にほんブログ村



    人気ブログランキングへ

    スポンサーサイト

    テーマ : 資格試験
    ジャンル : 就職・お仕事





    コメントの投稿

    非公開コメント

    驚くべきロー教授の認識

    岡口裁判官のfbに、予備試験が三振者救済のためであるとの記事紹介の情報に、甲南ローの教授の書き込みがありました。読んでぞっとしましたし、こんな認識で審議をされてはたまらないと思いました。さすがに、ロー側の人の多数がこんな考え方ではないことを信じたいのですが、どうなんでしょうか。
    曰く、三振した者で予備試験受ける者がそんなにいるのだろうか、二流ローは三振者を集めて鍛え直し、二打席目、三打席目のヒットを狙えば合格率もあがるので、こう考えると三振制度は結構良い制度ではないか、と書き込まれてます。三振者には学費免除とか奨学金があるので、リピーター学生もけっこういるし、とのこと。
    声もあげられない三振者が潰しが効かずに苦しんでる窮状とか、学費が免除になってもリピーターする三年間の生活費がまた借金になる辛さを理解できないのでしょうね、ローの中枢にいる教授は。私には、書き込み内容がロー制度存続のために学生から二度、三度と絞り取れば良い、というロー側の視点しか考えてないとしか読めませんでした。
    それに続く書き込みも実態を把握してないご様子でびっくり。こんな認識でロー制度が運営されてるなら、学生は本当にかわいそうです。
    予備校批判を繰り広げた上で、リピーターを黙認するどころか、二流ローの稼ぎ場所と積極的に取り入れを考えるようなら、本当に本末転倒です。
    弁護士になるのにどれだけ借金を負わせるつもりなのか。そして合格後は就職先もなく、自由競争すれば良い、金にならない仕事も掘り起こせるはずた、などと言って一体誰が法曹を目指すというのでしょうか。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR