日弁連会長の「派閥」観

     昨日取り上げたダイヤモンド・オンラインの連載特集企画「弁護士界の憂鬱 バブルと改革に揺れた10年」での山岸憲司・日弁連会長のインタビュー(「『失敗』を認めない日弁連会長」)の後編がアップされました。

     予想されたことではありますが、こと司法改革に関しては、「給費制」に関連して、何らかの代わる制度も含めた経済的支援について考えが示されているほかは、ここでも弁明を交えながら、「改革」の効用を強調し、「失敗」はまだしていないというお立場に読めます。

     法科大学院の乱立と急速な法曹人口の増員でゆがみが生じた。そこを軌道修正していく。法科大学院についても、学んでいる学生はどうなるんだ、教員はどうするんだ、年間司法試験合格者数1500人になるように、法科大学院の数や定員数を考え、むしろ、法科大学院の教育資源を、弁護士になった人たちの継続教育の資源として使うべき、受験資格条件にすべきではないというならば、法科大学院は「のたれ死に」でいいということか――と。明らかに弁護士界内の「改革」反対派・慎重派を意識した発言にもとれます。

     したがって、結論的に「改革」に関しては、前記「前編」に対して申し上げた見方がそのまま当てはまり、あえてそれ以上取り上げるほどのことはない内容にも思えます。ただ、1点、後編では、前編では触れられていない、「改革」関連以外のテーマついて、彼の考えが明らかにされているところがあります。それは「派閥」についてです。

      「派閥vs無派閥」といわれた会長選再投票・再選挙で、大都市弁護士会の派閥候補として当選したとされる山岸会長に対して、記者はこう鋭く突っ込みます。

      「派閥によって弁護士界の物事が決定していくことについて、若手弁護士はしらけている。派閥に属する“おじいちゃん弁護士”のための日弁連になった、と」
      「派閥によって選挙の行方や物事の決定が決まっているのではない、という理解で良いのか」

     これに対して、山岸会長は、概ね次のようなことを述べています。

     ○ (「派閥vs無派閥」というように) マスコミはすぐに図式化する。派閥や会派とは何かというと、東京等の単位会では、実務研究や判例研究、グループを作って若手に対してOJTをやりましょうとか、いろいろやっている。勉強会を開いているし、政策についても勉強している。それが、個々の弁護士の血となり肉となっていく。
     ○ その仲間たちが、「ああ、彼ならば会長に良いね」ということで応援する。派閥か派閥でないかというのではなくて、選挙での応援団がだれか、ということ。「派閥vs無派閥」ということで書かれたが、非常に違和感がある。
     ○ (記者が)派閥と言っている委員会や勉強会等の会合の論理で、物事が決まるほど日弁連は単純ではない。副会長や委員会のメンバーなどを決めるときに、前副会長などさまざまな方の意見を聞いているが、委員会の活動実績とか、推薦され具合とか。それで調整を図っていく。派閥がどうのこうの、ということではない。ねじ曲がって報道されている。

     レッテルを貼られている側として、言葉に力が入ったようにもとれますが、この内容には、おそらく異論を持たれる弁護士の方は多いと思います。山岸会長は、会派といわれる派閥を、若手支援にも貢献している勉強会・政策研究会のようにいい(あるいはその面だけを強調し)、派閥で選挙の結果が左右されているわけではない、日弁連の運営に影響を与えているわけではない、マスコミが歪めた報道をしている、と。これは、明らかに派閥の本性ともいうべき実態をひた隠しにしています。選挙において集票マシンとして機能し、その結果が会務運営にも大きな影響力を持っている実態です(「『会派』という派閥の存在感」)。

     彼の立場からすれば、ある意味、こういう回答にならざるを得ないとみることもできますが、正面からこれを「勉強会」として、その成果が弁護士の血肉になるとまで、その効用を強調し、「集票マシン」色を完全否定しているようにとれるところは注目できます。そしてマスコミも悪い、と。記者の引用に誤りがなければ、「派閥と言っている委員会や勉強会等の会合の論理」という表現も、派閥=勉強会としながら、いつのまにか委員会と同列にならべて、ひっくるめて「派閥」ということにしていますが、こんな話は初耳です。いやな見方をすれば、より前記した派閥の本性から遠ざかったイメージを織り込んでいる感じすらします。

     司法改革との関連で弁護士の現状に切り込んできたこの連載企画のなかで、よく記者は、この「派閥」という存在に目をつけたと思います。「改革」の大本の議論に立ち返り、今、起きていることを直視して「失敗」という認識からやり直す。今の日弁連が、依然、そうした舵を切ることができない、その要因の一つとして、「派閥」を抱える弁護士会の体質がある――。この記者がそう認識したことで、大きな疑問符がつく日弁連トップの発言を引き出したのならば、それはそれで意味のある企画と評することができます。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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