日弁連会長選挙規定改定への疑問

     予想されたことではありますが、日弁連内で会長選挙規定改定の動きが具体化してきました。今年2月10日に4候補で行われた日弁連会長選挙で総得票最多、最多票獲得会全国3分の1会以上(18会)の当選基準をいずれの候補も満たさず、山岸憲司候補と宇都宮健児候補の上位2人で3月14日に行われた再投票の結果、山岸候補8558票(最多会14会)、宇都宮候補7486票(同37会)と、再び両者が当選基準を満たさなかったため、史上初の再選挙にもつれ込んだ事態を踏まえたものです(「日弁連会長選初の『再選挙』という事態」 「日弁連会長選『再選挙』決着からの始まり」)。

     改定の焦点が、この最多票獲得会全国3分の1以上という当選基準になることは明白です。つまり、この「3分の1ルール」があることによって、延々と決着しないことがあり得る、とみて、このルールに手をつけようとする動きです。最初の投票では、このルールを適用するが、それによって行われた再投票、もしくはその先の再選挙では、このルールを適用しないという方向が提案されるのではないか、との見方が出ています。

      「決まらない」ということに対する懸念と、当選条件として、どちらが優先されるべきか、といえば、総得票だろうといった見方が会内にあることを踏まえた動きとみることができます。しかし、今回の事態を踏まえて、直ちにこのルールに手をつけるということには、疑問を感じます。

     要は、何のためにこのルールが存在したのか、ということです。以前にも書きましたが、3分の1の弁護士会でも最多の支持を集められない候補は、総得票で最多でも、日弁連の会長には不適格である、という大前提は、全国組織である日弁連が定めた地域偏重を回避するための民主的なルールです。もし、これを外せば、現実問題として都市部の大弁護士会の会員意思で代表が選出されることになります。それ自体が強制加入の弁護士会の会員で構成され、その意思が反映されるべき日弁連のあり方として望ましくない、という趣旨を、この条件から読み取ることをできます。

     確かに再投票・再選挙にもつれ込んだのは、この当選条件が存在したからですが、この要件は、今回のような「状況」にこそ、必要とされ、設置されていたということができます。その意味では、今回、その条件を満たさない最多票獲得者の当選への、ストッパーとして、この3分の1ルールが、はっきりと機能したということができるのです。

     このルールが完全に機能したら、早速それに消えてもらうという議論でいいのでしょうか。むしろ、注目すべきなのは、それが機能することになった現在の日弁連の「状況」の方にあるわけで、その「状況」の方に、要件を沿わすということで果たしていいのか、ということです。嫌な見方をすれば、この提案が、大都市部の派閥を背景に、総得票で勝利した候補者の執行部サイドから出されているという事情があるならば、今後の選挙において、今後に続く同系列の候補に有利になる枠組みを、この機会に構築しておこうとするものと、会員に受けとめられる面は、十分にある話です。

     今回のように2つの当選条件で、2候補がいわば、ねじれた格好で決着がつかない場合、両候補の間でのなんらかの条件での調整(例えば、3分の1獲得候補側に、次期日弁連事務総長の指名権を与えるなど)が考えられるのでは、という見方もありますが、現実的な会務への影響力を考えれば、全国から選出される副会長や理事の構成まで見据えなければならず、こうした形で次点候補支持者の意思を反映させる提案は事実上、難しいのが現実です。まして、もつれた場合の話し合いによる政策協定での決着など、「それができたら選挙になっていない」といえるような政策的な対立状況では、非現実的といわざるを得ません。

     改定推進側は、あくまで「決まらない」制度を放置できない、という主張一辺倒でくることが予想されますが、反対する考えの会員からは、このルールの意義を掲げて、現状維持を主張する声が聞こえてきています。「決まらない」とはいっても、結局、今回も再選挙で決着しているわけで、ねじれる2候補のどちらかに有利になる枠を事前に作って、ルールを無意味化することの問題性はやはり問われるべきだと思います。

     既にこの会長選挙規定改定のワーキンググループの人選が、問題として指摘されていますが(武本夕香子弁護士のブログ)、今後の動向は注目していかなければなりません。


    ただいま、「今回(2012年)の日弁連会長選」「弁護士自治と強制加入制度」についてもご意見募集中!
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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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