「監視弁護」という存在

     首相官邸前で毎週金曜日の夕方に繰り広げられている、関西電力大飯原子力発電所の再稼働に反対する抗議行動に対する、当局の過剰・不正規制への、いわゆる監視弁護団が有志によって結成されています。名称は「官邸前見守り弁護団」。8月3日現在で、156人の弁護士が賛同者として名前を連ねており、この中には宇都宮健児・前日弁連会長、海渡雄一・前日弁連事務総長といった顔も見られます。

      「主催者とは(連絡を取っていますが)別個です。とにかく弁護士がその場に沢山いること、共通腕章でそれが視認されること、相互に情報交換し緩やかに連携することで、トラブルの未然防止、過剰警備への牽制、万が一の際の逮捕者支援、証拠保全などを心がけています」(同弁護団HP)

     8月2日には、官邸周辺の道路や歩道の封鎖を、「市民の抗議行動の自由に対する不当で合理的理由のない規制」とし、警察当局が参加者を威圧的な態度で見下ろし、参加者をビデオで継続的に撮影したことを、「警備上全く不要な行為であり、参加者の肖像権の侵害」と抗議し、さらに抗議行動の参加者の生命・身体の安全を確保するために、首相官邸前と国会正門前の道路の解放を含め、市民の表現の自由を尊重と、過剰警備中止を求める声明を発表。また、同月9日には、声明発表翌日3日にも「過剰かつ不当な規制があった」として、警視総監と麹町警察署署長あてに、規制中止を申し入れています。

     監視弁護という仕事は、その社会的な意義の大きさに比して、一般にあまり知られていない、また注目されていない弁護士の仕事の一つのように思えます。訴訟以前に、予防的見地から当事者の要請に応え、公衆に対する助言者・指導者であることが求められている弁護士の活動といった位置付けになりますが、要するに、そこに弁護士がいるということで、起きてしまった不正の監視者・目撃者になると同時に、不正のストッパー役にもなることが期待される、という存在です。

     もっとも、現実的には、弁護士の面前でも、公権力による不正が行われたり、監視者である弁護士自身が、いわばその犠牲となって逮捕されてしまう、という事態もあります。その効果は、万全ではありませんが、そこを弁護士が精いっぱい、文字通り身体を張って公衆と民主主義の根幹ともいえる表現の自由を守ろうとするのが、この弁護士業務なのです。

     彼らの声明文には、この官邸前抗議行動を指して「平和的」という言葉が何度か使われています。実は、かつて世界各地の人権NGOから送られてくる人権弾圧のレポートを集約した国際人権団体からの情報を、日本語訳した短信を日本の法曹界に流す仕事を長年やっていましたが、それこそ多くの諸外国のケースで、「平和的」デモを、「暴力的」デモと位置付けて、国家権力が暴力的に鎮圧するというケースを度々目にすることになりました。大衆行動に対する権力の常套ともいえる手段に、神経をとがらせなければならないのが、まさにこの監視活動の現実でもあるのです。

     こうした性格の業務だけに、非常に弁護士の意思的なもので支えられてきた、いわば有志的色彩の強い活動といってもいいと思います。それだけに、現実的にはかかわったことがない、あるいは関心を持っていない弁護士も多い分野であるといえなくもありません。ただ、弁護士の社会的な役割を考えるうえでも、あるいは弁護士自治の意味を考えるうえでも、行動する、発言する市民にとっての、その重要性・必要性が、もっと注目され、評価されてもいい活動であると思います。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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