ある若手弁護士たちの「広告」をめぐる葛藤

     およそ弁護士会らしからぬ、テレビ・ラジオCМが話題となっている大阪弁護士会の広報へのチャレンジ。会内には、賛否両論あるという話は伝わっていましたが、その「お笑い」的テーストには、特に大阪以外の人間としては、やや安直に、これも「大阪気質かな」とか、「大阪だから受け入れられているかもしれないが、東京ではちょっと」とか「大阪人には親しみやすいのかも」といった括り方をしてしまいがちです。

     しかし、当の大阪の若手弁護士のなかにも、むしろ「お笑い」的な感じを弁護士会広報が狙うのは違うのではないか、という意見があります。大阪弁護士会が、今度はパーソナリティを立てて、ラジオ番組をやるという企画に対して、いずれも30歳代で、大阪弁護士会所属の角田龍平、塚崎幸司、辻村幸宏各弁護士が、USTREAMで生放送し、後日Podcastを配信しているトーク番組「ベントーク」で取り上げて、こう言っています。「大阪弁護士会は真面目な番組をやるべきだ」と。

     大阪人をひけらかしている人間は、そもそも面白くない。弁護士のパーソナリティを募集して、手を挙げる人間は、その時点で面白くはなく、会費を使って自分の名前を出して商売につなげようとする連中。パーソナリティを会派持ち回りで割り当てるという話もあるが、ラジオ番組を成り立たせるリスナーとパーソナリティの関連性が途切れる。関係性が出来上がっているAKBが持ち回りでやっているのとは訳が違う――。

     いやはや手厳しい。こうした3人のやりとりは、いかにも「大阪」的を意識しているような面白路線を大阪弁は、とにかくやめた方がいいという意見です。「大阪の弁護士は、いいノリしてまっせ」はやめよ、と。

     さらに、この番組のなかで興味深いのは、そもそも弁護士会広報が何を目指すのか、ということに対して示されている、彼らの問題意識です。

      「『仲良くして下さい』『仕事を下さい』ではなく、仕事のプロフェッションに特化し、信頼とか知性への憧れとか、社会貢献しているとかを、ちゃんと世間に言っていかなければならない」
      「弁護士は不幸産業であり、『不幸な人はいませんか』と打って出るべきではい、それは品がないという意見がある。不幸産業といっても違う役割があるという意見もあるが、やはり『仕事はありませんか』『問題はありませんか』ということの是非かクリアになっていない。そのことがCМに対して腑に落ちないものになっている」

     弁護士の広告が解禁され、当たり前にテレビでCМが打たれている時代、しかも競争という自覚を迫られているように見える時代に、若手の弁護士からこうした意見を聞くのは、ある意味、驚くべきことといっていいかもしれません。ただ、彼らがたまたま古い発想の若手であるというのでなく、むしろ気が付き出している若手なのかもしれない、ととれるものがあります。

     こんな意見が出できます。かつて弁護士会が広告を禁止していた時代があったということを修習生時代に聞いて、最初は「何を古臭いことをいっている」と思った。ただ、今、ホームページの文面を作るときに感じる。弁護士の仕事は、そういう宣伝の文面を作りにくい仕事なのだ、と。「いい仕事をしてまっせ」はとても下品。自画自賛ではなく、他人から評価されるべきであり、弁護士という仕事はその最たるものではないか。しかし、それが今、自画自賛せざるを得なくなっている――。

     自己宣伝ではなく、他者の評価によるべき、というのは、かつて最後まで広告規制緩和に反対した弁護士たちの主張を彷彿させます。まるで彼らのDNAを、今の若手弁護士のなかに見出すような気持ちにさせられます。むしろ、これは弁護士という仕事が本質的にはらむテーマであり、また、彼らが行きつく根源的な葛藤ではないか、とも思えてくるのです。

     もちろん、若手弁護士なかにも、彼らとは違ういろいろな受けとめ方があるはずです。弁護士が積極的にアピールし、情報公開することが、時代の要請として語られていることも事実です。ただ、「広告」としては常識のようにくくられるかもしれない、大衆にうけること、目立つこと、自画自賛することという要素に、本格的に向き合い出さざるを得なくなった時、やはり、「広告」という手段においても、弁護士という仕事は、一般化できない、他のサービス業と完全に同一視はできないことにたどりつかざるを得ないのではないか--。

     想像以上に、真剣な彼らの葛藤のなかに、そんなことを読み取ってしまいます。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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