弁護士会「会費」の無理

     弁護士が毎月支払わなければならない「会費」について、弁護士の中の不満が高まっています。ひとつには、金額が高いということもありますが、それにとどまらず、年々、その趣旨そのものを疑問視する意見が強まっている印象を持っています。

     弁護士会によって違いはありますが、平成21年度で東京の弁護士が年間支払う会費の総額は約57万円だったそうです。内訳は、所属する弁護士会の会費、日弁連会費、日弁連の特別会費など。弁護士は以前も書きましたように、事務所所在の各地弁護士会に強制的に加入させられ、その会員であると同時に、全国組織である日弁連の会員なので、自動的に全員重複して会費をとられているわけです。少ない会員で運営している地方の弁護士会の方が、一人の会費負担は大きいという話もあります。

     新人については、登録後しばらくの減免措置はありますが、やはりこの額が弁護士によっては、負担となり、最近は滞納の現実もあるようです。

     一般の感覚からしても、おそらくこの額は、「会費」というイメージからは高いものだとは思います。実は、高額になっている理由は、その性格によるものです。

     弁護士会の会費は、普通の団体などの構成員が支払う「会費」と、異なる性格を持っています。「会費」といえば、主に会員の登録事務、会報の発行といった会務のための費用捻出を目的としたものを連想されるかもしれません。ただ、弁護士会の場合、それにとどまりません。

     端的にいえば、弁護士会の「会費」は、一般的には公的な領域をカバーしているからです。前にも書きましたが、そもそも弁護士会には強力な自治権が認められており、その根幹に懲戒権があります。まず、弁護士会は、他の団体の場合、監督官庁が行う懲戒を、すべて自らやらなければなりません。調査を含めて相当なおカネがかかります。もちろん、入退会の審査も弁護士会自らがやります。

     と同時に、そうした自治を持つ団体であるからこそ、さまざまな公益活動を担います。弁護士会自らが行う人権擁護、消費者問題などの委員会活動、法律相談のほかに、被疑者弁護、少年事件の付添、犯罪被害者、難民認定、外国人、子ども、精神障害者、心身喪失者等、高齢者、障害者、ホームレスに関する法律援助の事業を基金を作り、会員からの拠出で行っているのです。

     会員の持っている会費の趣旨に対する不満というのは、要するにこうした公益性の高い事業は本来、国費でまかなわれるべきものなのに、なにゆえ日弁連執行部はえんえんと会員にその負担を回してくるのか、という疑問からくるものです。しかも、日弁連執行部も、その本来の形は認識してはいるのです。現実に国費の負担も会員負担もなければ、事業を縮小せざるを得なくなりますが、それもできない、として、いわば無理に無理を重ねて、会員に負担をお願いし続けているということなのです。

     もちろん、日弁連は総会にかけて、多数決で、こうした会員負担の方針をその都度決定してきました。だから、会員の多数の承認を得た、と執行部はいうでしょう。ただ、それでも会員のコンセンサスが完全に得られているか、疑問です。それは、総会での意思決定のあり方にも関係がありますが、それは回を改めます。

     そもそも以前にも書きましたが、会員の中には、強制的に加入させられながら、執行部は会員の意思を平等にくみ上げず、上から下への方針徹底に比重を置いている、という不満が高まっています。そのうえの、意思に反した多額の会費の徴収という状況のなか、会員の中から、任意加入論、自治返上論が台頭してもおかしくないムードになってきています。

     ただ、このことを一般大衆は、どう理解するのでしょうか。前記した額は、確かに「会費」としては高額だけれども、こと弁護士となると、「彼らはもうけているんだから、そのくらい出せるだろ」というとらえ方をされてまうかもしれません。本来公費でまかなうべきところを弁護士個々人が稼いだ収入から拠出していることの無理について、考えがいく前に、まず、その弁護士イメージが、それを遮断してしまうように思えます。

     それには大マスコミにも責任があると思います。

     実は、日弁連は2月9日に開いた臨時総会で、前記したような事業を支えるため、弁護士がさらに月額5500円支払う会費値上け案を賛成多数で可決しました。それを12日付の朝日新聞が社説で取り上げています。

     この社説、結論は弁護士が身銭を切ってきたことの筋違いを認めているようなのですが、その一方で、嫌みのように、こんな言葉が文中に登場します。

     「ぐるり回って多くが弁護士の懐に入るお金かもしれないが」
     「『職域拡大運動ではないか』との冷めた見方もあるが」

     とても、筋違いの方を大衆に理解してもらおうとする記事とは思えません。筋違いは筋違いだが、無理というわけではなく、あまり弁護士をほめるような真似はしたくない、というところでしょうか。

     増員問題、「給費制」問題同様、実情を伝えようとする弁護士・会と、国民の間に、大マスコミが立ちはだかっているような印象です。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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