弁護士資格「あぐら」論の中身と効果

      「資格は生涯の生活保障ではない」といった批判的な言い方が、いまだに弁護士に向けられて言われます。要するに、弁護士が、その「資格」で当然のように食べていけると思っているならば、大間違いだ、勘違いするな、あぐらをかくなといった、弁護士の「心得違い」を責めるニュアンスが込められています。

     しかし、現実的には、そんな風に考えている弁護士は、いまやほとんどいないといっていいと思います。経済的な環境の激変が、彼らにそんな余裕を与えていないということ、自覚を強めさせているということはあります。ただ、そもそも弁護士は、ずっと前から、そんな「資格」に安穏としていたならば、存在できない仕事だったともいえるのです。

     とりわけ、地方の弁護士から、これまでも自分たちの生き残りをかけて、それこそ必死にやってきた話を聞きます。周辺の大都市弁護士会からやってくる弁護士たちとの仕事の奪い合い。自分たちの地域ニーズを食い荒らされることを卑下した「植民地」と言い方を地方弁護士の口からも度々聞きました。競争状態が決してなかったわけではないのです。もちろん、大都市の弁護士が手を広げるのも、生存競争の結果です。

     それにもかかわらず、なぜ、弁護士に対しては、ことさら冒頭のような言葉が浴びせかけられるのでしょうか。弁護士が他の仕事に比べて、それでも「恵まれていた」ということはいえなくはないかもしれませんが、それも一体、どこの、どういった仕事と比べての話なのかは、あいまいです。そもそも、仕事そのものを一律横に並べて、語たるのもおかしな話で、スタートから環境的な有利不利は、業種・職種・業態によってあるのは当たり前の話です。弁護士という「資格」が、社会的にそれだけの役割と地位があり、それに見合う安定度と報酬が仮にあったとしても、本来はそれがどうしたという話です。

     弁護士側に自覚すべきことが全くなかったとは思いません。接客態度や大衆へのアピールの姿勢など、大いに反省すべき点もあるとは思いますが、ことさらに強調される前記切り口の論調には、やはりかなり弁護士に対するイメージが、影響しているように見えます。つまり、「バッチ」に胸を張り、寡占状態のなかで、営業努力なしでも儲けられる仕事。その状態を維持するために、供給制限がなされてきた業種。実は、ここには「不当に」というイメージがぴたっとくっついています。つまり、本来、こうした弁護士の心得違いや、優遇された環境がなければ、大衆はもっと安価で、良質のサービスが受けられるのに、それが彼ら自身によって、阻害されている、ということの強調です。

     以前にも書きましたが、妬み、やっかみの類を別にすれば、弁護士を依頼する一般大衆にとって、弁護士が儲けていようがいまいが、安定していようがいまいが、ある意味、どうでもいいことです。むしろ、これから依頼する立場からすれば、経済的に安定していない弁護士、かつかつな弁護士よりも、安定して儲けている弁護士を選択するかもしれません。儲けている=人気ととらえる傾向もありますが、それよりも安定していないことへの不安感の方が大きいからです。

     ただ、その意識に待ったをかけるのは、唯一、前記「不当」というイメージです。弁護士のずるさで、損をしているとなれば、もちろん話は別ということになるわけです。

     あえていうまでもないことかもしれませんが、もちろん、同業者も首をかしげるようなおかしな弁護士は存在します。彼らが存在している以上、同業者も「自分には関係ない」ではすみません。彼らが、いかに存在しない状態をつくるか、たまたま弁護士にコンタクトをとることになった市民が、いかに彼らのような弁護士に遭遇しなくて済むか、安心して弁護士にたどりつけるかを、自らのテーマとしても考えてもらわなければなりません。

     しかし、大マスコミをはじめ、増員論者がいかに旗を振ろうとも、現実的には、競争による淘汰が自然とそういう環境をもたらし、より低額で質のいい弁護士を社会にもたらすという楽観的な期待感よりも、それ以前に、望ましくない弁護士の跋扈と、それらとより遭遇する危険性が高まるとする不安感が、大衆の中には存在します。この見方は、決して検討違いではないと思います。

     大衆がいかに安心して弁護士にたどりつけるかというテーマに、冒頭の一律に当てはめられる「資格」あぐら論は、やはり道を開くものにはならないように思います。前記したように、もはや実態として、その勘違いが問題の本質ではなく、また、それをいうことが、この社会で我々が望ましくない弁護士と遭遇してしまう危険度を下げることにもつながらないからです。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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