「予備校依存」批判の結末

     学生が受験予備校に大幅に依存し、「ダブルスクール化」、「大学離れ」状況を招いている。受験技術が優先されている――。法科大学院制度導入に当たり、さんざん言われることになった、当時の現状認識です。法曹養成の在り方として、予備校=悪の立場にたった、この認識は、ある期待感を伴って、法科大学院という存在を強力に後押しすることになりました。

     つまり、受験技術・試験対策というものに、それほど力を注がなくても、合格にたどりつける法科大学院を含めた新制度という、いわば反対解釈です。当初、いわれた修了7、8割合格とともに、「予備校依存」を否定した立ち上げられた法科大学院は、やはり「受かる」教育機関として、志望者に伝わることになったのです。

     メッキは、すぐにはがれます。「7、8割」の話はすぐに消え、プロセスを強調しても点が残っている実態では、「対策」が必要でしたが、前記現状認識のもと、「理念」を掲げてスタートした法科大学院は、「受験対策」はできない機関として存在し、結果、「受からない」教育機関への道を転がり始めることになります。

      「弁護士『冬の時代』 司法試験予備校“勝手格付け”」

     経済誌「ZAITEN」8月号には、こうしたタイトルの特集を掲載しています(ジャーナリスト・伊藤歩氏)。内容は司法試験市場にしぶとく根を張り続けている司法試験予備校にスポットを当てるものです。「勝手格付け」とされていますが、格付け的な話はほとんどなく、前半は4大司法試験予備校(辰巳法律研究所、早稲田セミナー、東京リーガルマインド、伊藤塾)のこれまでの経緯、後半は法科大学院発足後の状況に誌面が割かれています。

     法科大学院発足後は、院生は予習、復習だけで精一杯。司法試験予備校に通う時間はないので、週1~2回の答練と模擬試験で利用する。法科大学院は受験指導は基本的にしないが、卒業生には合格してもらわないと存亡にかかわるので、学生の予備校利用はほぼ黙認状態――。こんな関係者の話を紹介し、法科大学院が抱えた矛盾が、もたらした現実を紹介しています。

     事実、いまや大新聞の法科大学院を紹介する「社会人の大学院ガイド」でも、合格のために、堂々と予備校の利用を推奨しているのが現実です(「苦しい法科大学院ガイド」)。

     そこで、悪とされた予備校は、どうなったか、といえば、一気に衰退の一途をたどっているというわけではありません。4大予備校で唯一、同誌の取材に応じた伊藤塾の話では、法科大学院入試や予備試験対策などの需要が生まれ、旧試験出願者がピークに達した2003年当時と司法試験部門の売上高は変わっていない、というのです。

     さらに、大会議室でのライフ講義に変って、ネット受講が一般化。コスト低減にも寄与しているとの見方もなされています。

     要するに、法科大学院の空手形は、皮肉にも悪とされた予備試験に生き残る道を与え、代って法科大学院が破綻の道を進んでいる、ということになります。

     ところで、法科大学院制度を推進側が予備校=悪をいったのは、一体、何だったのでしょうか。本当に旧司法試験下の状況を、法曹養成に望ましくないとみて、真剣に現実性があるものとして、この制度を対置したのでしょうか。それとも、このお粗末な結果から、なんとなく想像出来てしまうように、実現可能性よりもまず、彼らの通年講義型講座市場の妙味に目がいってしまったということなのでしょうか。


    ただいま、「予備試験」「受験回数制限」についてもご意見募集中!
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    No title

    予備校を排除した結果、予備校より効率が悪い大学教授たちが、法曹初等教育を担うことになった。レベルの大幅なダウンである。
    さらに、
    ・増員
    ・法科大学院の人気凋落
    ・弁護士の就職難
    ・弁護士の貧窮化(22年、所得70万円以下が5800n人以上、23、24年はさらに大幅な悪化)

    法曹界への人材登用は、法科大学院制度により、破壊されつつある。

    No title

    あらゆる受験界で、唯一、予備校を悪者にして、排除する愚行を起こしたのが法学部の教授たち。
    しかし、予備校排除が実現した背景を認識すべきだ。
    当時、快進撃を続けていた伊藤塾の伊藤真氏は、
    ・従軍慰安婦問題
    ・南京大虐殺問題
    ・東電OL殺人事件などの冤罪問題
    などを授業中にかなり熱く語っており、さらに、憲法の伝道者として、
    ・憲法の制限規範性(憲法は国家権力を制限するから憲法なのであって、国家が国民に制限を課す一般の法律とは異なること)
    を強調していた。
    要するに、自民党や文科省に睨まれる内容だったと思う。
    予備校排除で効率が悪いに決まっている大学に受験資格を独占させた背景には、このような政治思想の対立があった点は、しっかりと認識すべきだ。

    予備校について

     伊藤塾は,4大予備校の中では新興で規模も小さかったから打撃が少なかっただけで,早稲田セミナーは規模縮小,経営者辞任,身売りとひどい状況ですよ。そもそも,経営が上手く行っていたら取材拒否なんて普通しないでしょう。
     ちなみに,大学側が「予備校=悪」というデマを振りまいた理由は明確で,彼らは一時期,予備校に学生を奪われそうになったのですよ。当時の学者が書いたものを読みんでいると,予備校に奪われた学生を取り戻すために法科大学院を作ろうという雰囲気があからさまに感じられました。
     でも,司法試験受験者の多くは一応大学にも通っていたので,大学が経済的に損をしていたわけではなく,単にプライドを傷つけられただけです。通年講義型講座市場の妙味とかいう以前に,彼らは予備校のことを完全に軽蔑していたので,全くと言ってよいほど予備校の調査・研究しておらず,今でも調査すること自体を拒み続けています。総務省が伊藤塾の塾長にヒアリングしたときも怒ってましたし。

    No title

    伊藤塾が景気の良い話をしてるようですけど本当かな?
    上場企業ゆえに決算短信を出してるTACは毎回25%超ずつ司法試験の受験生が
    減ってるようですが。
    モノカルチャーの伊藤塾は違うかもしれませんが、司法試験に続いて公認会計士
    試験も一気に新規受講者が減ったものですから、他の資格予備校も青色吐息が
    実態だと思います。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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