当然のように使われる「改革」イメージ

     ダジャレ的、親父ギャグ的なネーミングというのは、意外と真面目な顔をして、世の中にあふれています。日本司法支援センターの愛称として知られる「法テラス」も、その口です。法の光で「照らす」と、建物の「テラス」。

      「法律によってトラブル解決へと進む道を指し示すことで、相談する方々のもやもやとした心に光を『照らす』場という意味を込めて造語したものです。悩みを抱えている方々にくつろいでいただける『テラス』(燦々と陽が差し、気持ちの良い場所というイメージを持つ)のような場でありたいという意味も込めています」(「法テラスホームページ」)

      「由来」として、大真面目に紹介されています。恥ずかしいほど分かりやすいところが、親父ギャグ的なものの特徴で、これもそんな丁寧に説明されなくて分かるよ、という突っ込みもできなくありませんが、真面目なところには真面目な筋の通し方があるということだろうとは思います。

     ただ、この組織の愛称に、この言葉が選ばれた時、親父ギャグ的表現であることと同時、なんともいえない妙な感覚がありました。なんだかお釈迦様のような。「法」という言葉には、サンスクリット語のダーマ(ダルマ)に当たる法則や真理をあらわす仏教用語としての意味もありますから、余計そんな感じかもしれません。

     しかし、この時、イメージとして、つながったことを言葉に表すならば、それは「上から」ということだろうと思います。「上から」法の光が行き届く。そして、これは実は今回の「改革」の中で、度々イメージとしてつかわれているものだということにも、気が付かされるのです。

     最近も、司法改革「路線」の「生みの親」といっていい、佐藤幸治・元司法制度改革審議会会長が、日本裁判官ネットワークのシンポジウムで発言したこんな趣旨の言葉( 「日本裁判官ネットワークブログ」がネット上で話題となりました。

      「法の光の当たらなかった人に法の光を、という今回の司法改革のメッセージを忘れないように」

      「法の光」という字面は、なんだか本当に新興宗教団体を連想させますが、それはともかく、佐藤・元会長がここで言っている「司法改革のメッセージ」とは何なのでしょうか。それは、おそらくはこの「改革」で散々被せられてきた「『法の支配』を『社会の隅々』にまで行きわたらせる」というイメージです。不正解決と「泣き寝入り」の存在とともに、司法の機能不全を描いた「二割司法」、そこから導き出された弁護士大量増員の正当性、弁護士過疎解消などとつながる理念です。

     ただ、そもそもこのイメージには、べたっと「上から」目線がくっついていました。以前も書きまたが、「法の支配」という言葉も、こうした文脈で使うのは本来的に誤用との指摘もありました(「『法の支配』というイメージ」)。そして、佐藤・元会長が、いまや「司法改革のメッセージ」として、当然のように言う、このイメージこそ、実はその描き方の妥当性がもっと突っ込まれてもよかった代物ではなかったかと、思えるのです。

     前記佐藤・元会長の言葉に、あるブログ氏がこう書いています。

      「そもそも、『法の光の当たらなかった人に法の光を』が理念だということは、それまでの日本は法治国家ではなかったということなんですか?(笑)そんなに法の光が当たってない人が、この日本にゴロゴロしていたんでしょうか」
      「もしゼロワン地域のことを言っているのだとしたら、いまゼロワン地域は解消されて、もう改革の目的は十分に達成されたと言えるでしょうし、闇雲に合格者を増やして、都市部で食えなくなれば勝手に地方に行くだろう、ごときの改革によって、『法の光の当たらなかった人に法の光を』当てられると本気で考えているのかどうかは、佐藤先生にぜひ答えていただきたいところだと思います」(「Schulze BLOG」)

     ブログ氏も指摘していますが、この理念の解釈は、地方で弁護士不足による不正解決が横行しているとか、図書館まで弁護士がいて「法の支配」が行き渡るといった、学者の方々の極端な、トンデモ発言をも生み出しているように見えます。

     彼らの口から、このイメージが語られるとき、もはや「上から」ということに、何の躊躇もない「正義」を振りかざす感じがあります。ただ、その前提となる現実社会、あるいは大衆の要求のとらえ方は正しかったのか、という疑問に突き当たります。そして、既にそのイメージが唱えられて10年、実際に「改革」がもたらした結果は、その疑問になんと答えを出しているのでしょうか。

     それを全く意に介していないような佐藤・元会長のような、推進派の方々の言葉には、やはり妙な気持ちにさせられます。


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    まとめtyaiました【当然のように使われる「改革」イメージ】

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    悲惨な境遇の修習生にも法の光をあててほしいです
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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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