日弁連「会内広報」への会員目線

     弁護士と会話をしていて、日弁連や弁護士会から送られてくる機関誌・紙について話が及ぶと、よく弁護士がこんな風にいうのを耳にしました。

      「いやー、もっぱらツンドクだよ」

      「積読」。読書と積んでおくの、いわば、おやじギャグ的な合成語です。積読にも、一般的には、いろいろあるようで、書籍を取りあえず買い漁ってしまい、積み上げて納得してしまうタイプ、買ったわ良いものの、読みかじって放置してしまうタイプ、はたまたちゃんと端から読むのだけれど、思いついた時、目についた時に買ってしまうので、常に目の前に積まれている、あるいはそうでないと安心できないタイプ等々。

     ただ、前記のような、機関誌・紙については、少々事情が違います。弁護士会に限らず、全会員に配布されているような出版物は、会費に含まれているにもかかわらず、というか、含まれているがゆえに、いちいち購入しているという意識がないことから、一般的にどうも「有難み」がなくなってしまう傾向があります。つまり、積読になりやすい。

     もちろん、弁護士についていえば、毎号気合を入れて、隅から隅まで目を通している方もいるかと思いますが、やはりそうばかりではないようです。そもそも興味を感じて、いちいち自腹を切ったものとは違っても、仕方がないと言えば仕方がないかもしれません。

     そうした弁護士会員の受けとめ方がある一方で、会内ではこうした存在に、今、二つのことが言われています。一つは、こうした会内広報の形式的なあり方についてです。端的にいって、状況を変えつつあるのはネットの登場です。日弁連についてみても、広報媒体ということを考えた場合、もはや対内外広報で、月間100万アクセスというホームページの存在感が増しています。速報性、二次利用ということを考えても、その利便性は明らかで、もはや紙媒体の意味をかなりの部分で奪いつつあります。既に会員専用のメルマガには2万3000人が登録しているとの報告があります(「自由と正義」2012年2月号)

     日弁連には紙媒体として、機関誌「自由と正義」、機関紙「日弁連新聞」のほか、FAXニュース「日弁連速報」がありますが、人件費を除いた広報予算約1億8000万円のうち、1億5830万円が「自由と正義」の製作・発送費に充てられているというのが実態です。コストの面と利便性から脱紙媒体は時代の要請との見方もあり、日弁連も同速報については2012年1月から電子メール配信を始めています。

     もはや全会員に郵送で出版物を送付するというスタイルは、ネットユーザーが依然100%ではないということに対する、強制加入団体としての対応という点を除いて、存在意義を見出しにくい、という見方もできなくありません。

     もう一つ、言われているのは、会内広報の内容的なあり方です。つまり、「自由と正義」などに取り上げられるものが、公平な会内世論の反映ではないところを強制加入団体として問題視する会員の見方です。事実「改革」をめぐる会内を二分する意見が、現実問題として、機関誌・紙に公平に登場することはなく、内容は執行部による執行方針が強く反映したものとなります。

     弁護士の地方ニーズに触れる企画では、各地の弁護士がいかにも大方針に沿うかのように、「ニーズはまだまだある」論を展開し、地元会員から冷やかな見方が出たり、修習生はその会を目指せ、といった皮肉がネット上で飛び交ったりもしました。

     また、3年前になりますが、法曹人口増員に反対するある会員弁護士の「自由と正義」掲載予定の原稿が、事前チェックで不適切な記事となり、不掲載になったことが話題にもなりました。日弁連が事前検閲で執行部の方針に不都合な言論を封殺した、として、会員のなかには「(不)自由と(不)正義」などと批判する声もありました。

     もっとも、当時、新聞のコラムにも書きましたが、正直、これは驚くというほどの出来事かどうかは疑問でした。なぜかといえば、こうした日弁連の媒体でボツにされた原稿の執筆者が、当時、新聞社にいた私のところにやってくることが過去にもあったからです。「ならばうちで」ということで、公開させて頂くこともあったわけです。

     もちろん、「自由と正義」は純粋な会員向け機関誌ではなく、外部の人間も購読しているものですから、専門家のさまざまな意見や見方が提示されること自体、社会とって意味を持つともいえます。

     3年前のボツ事件には、驚きを持って受けとめた会員も少なくありませんでしたが、昨日今日の話ではない、そんなもんだという会員ももちろん少なからずいたと思います。しかし、以前からそうした体質があったとしても、今、注目しなければならないのは、強制加入そのものへの不満が会内で高まりつつあるということです。もはや会内広報のあり方の改善問題ではなく、強制加入見直しへの火種となる、会員のフラストレーションにつながるとみることもできるのです。

     何やらいつの間にか、「ツンドク」などと、のどかなことを言っている状況では、なくなりつつあるように思えます。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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