「盗撮弁護士」匿名報道が呼び起こした疑念

     山の手線の電車内で女性のスカート内を盗撮したとして、警視庁戸塚署が東京都迷惑防止条例違反の現行犯で、第二東京弁護士会所属の弁護士の男を逮捕していたという報道(6月20日、産経ニュース)が話題になっています。弁護士によるとんでもない行為とあきれ返っている方々ももちろんいるとは思いますが、少なくとも聞こえてくるのは、どうもその点ではありません。なぜ、これが「弁護士の男」と報じられ、実名が明らかにされていないのか、ということの方です。

     いうまでもなく、そこに「弁護士」ということによる、何か特別な対応があったのか、という疑念です。早速「Yahoo知恵袋」では、この件について、市民のこんな質問と回答のやりとりがなされています。

     質問「一般人だと名前が報道されるのに弁護士だと報道されないのは何故ですか?」
     回答「マスメディアが日弁連や弁護士会を敵に回したくないと思っているからでしょう。法律家の犯罪というのは、一般市民からすると、重要度の高いニュースです。普通の会社員や大学生が犯罪を犯すのとは、ワケが違います。それなのに、匿名で報道したり報道を控えたりするのは、理解に苦しみます」

     ただ、メディア側には一応の言い分があります。産経新聞にこの扱いの理由を聞きました。それによると、こうした案件で、警察は現行犯逮捕した段階ならば、逮捕者の氏名を明らかにするが、今回のように既に釈放してしまった段階では、明らかにしない。そうした対応は、今回のような弁護士でなくても、一般的に行われており、従って、新聞社側は今回も氏名を把握していない、と。要するに、報道の段階では、弁護士だからといって手心を加えてはいない、ということで、前記回答にあるような、日弁連・弁護士会を敵に回したくない、ということではないという話になります。

     では、警察側の対応はどうか。弁護士であるということから、早々と釈放することで、結果として氏名を公表しない、という形にしたなど、何らかの一般市民に対するものと違う対応があったと思うか、ということに水を向けると、少なくとも対応した産経新聞の人は、この点で、大いに可能性があるという疑惑の眼を向けていました。

     どうもこの件で、不公平という点からの問い合わせや反応が既に多く寄せられているのか、予定していたように、彼は前記言い分を語っていましたが、本来この件で実名報道をしたいところなのに、何やらメディアが手心を加えているようにとられていることが不本意のような口調でした。

     もっとも、彼は、既にこの弁護士についてネット上で話題になり、一部本人かどうかは分からないものの氏名も流れているということを認識していましたから、独自取材までして、この件で弁護士氏名を公表する、ということまでの案件とは新聞社として見ていないということにはなります。

     もちろん、前記報道の価値はなんといっても「弁護士」というところにあります。前記回答者がいうように、誰がやろうとも許されることではないにせよ、法律を「武器」とし、正義と人権を使命として掲げる存在がこうした行為に及んだという事実です。それは、取りも直さず「弁護士」という肩書を持つ人間にもこうしたことに手を染める奴がいるという情報として、それはたとえ匿名報道でも、十分に大衆に伝わることになります。

     ただ、今回の事態を見て分かることは、よりよって「正義」の顔した弁護士が行う「不正義」が大衆にもたらす不信感は、その資質に対するものにとどまらず、それが一般市民とは違う形で不問にされていくのではないか、という疑念を伴っている、ということです。そしてそれは、社会に対する大きな不信感にもつながっているようにみえます。そのことは、大衆の目線として、弁護士は、もっと自覚しておくべきように思います。


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     山の手線の電車内で女性のスカート内を盗撮したとして、警視庁戸塚署が東京都迷惑防止条例違反の現行犯で、第二東京弁護士会所属の弁護士の男を逮捕していたという報道(6月20日、

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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