大法律事務所所属弁護士数の「異変」

      「日本の50大法律事務所」という資料ページが、ネット上で公開されています。藤本一郎弁護士が、日本の法律事務所のうち、日本法弁護士の所属人数でのベスト50ついて、修習期ごとの採用人数などを、自身のホームページ(「藤本大学」)上で2004年から毎年発表しているものです。

     その最新2012年版が先ごろアップされました。4月1日現在の日弁連会員名簿に基づくものです。

     そもそも「50大法律事務所」と聞いて、一般の方は、どの程度の規模のものを想定するのでしょうか。前記発表によれば、西村あさひ法律事務所469人、長野・大野・常松法律事務所336人、アンダーソン・毛利・友常法律事務所316人、森・濱田松本法律事務所308人、TMI総合法律事務所241人(いずれも所在地東京)。これらが過去6年、順位に若干の変動があるものの、ベスト5の常連事務所で、1位2位は過去5年間前記2事務所で固定されています。一方、50大事務所の最下位は、柳田国際法律事務所(東京)、弁護士法人岡林法律事務所(東京ほか9都市)、三多摩法律事務所(東京)の各25人となっています。このランキングの最低ラインの人数は、この3年間、大きな変動がありません。

     一般の人の感覚からすれば、あるいは上位に関しては、日本にそんな大きな法律事務所が存在しているのかと驚かれる方も、依然、少なくはないと思いますが、逆に下位についていえば、25人でベスト50にランキングされるというのは、やはり日本の法律事務所は小所帯主流だと思われる方もいるかもしれません。

     さて、2012年版を見ると、そこに「異変」を読み取ることができます。上位事務所の所属人数減です。300人以上の4大事務所のうち、西村・あさひ14人減、長野・大野・常松13人減、森・濱田松本4人減と、3事務所で減少。2010年統計がこの4大事務所で111人の純増、2011年統計は52人の純増であったのに対し、今年は25人の純減となっています。

     この4大事務所とも、一昨年くらいから採用抑制の傾向にあり、64期は63期に比べ、合計で37人減ってはいますが、それでも81人を採用していますから、全体での減少は、「何らかの理由で大手事務所を去った弁護士がかなり多くいる」(藤本弁護士)ことがうかがえます。

     一方、ベスト50のなかで、ひときわ目立つのが、第9位弁護士法人アディーレ法律事務所の64期32人採用、全体で35人増です。一昨年初めて所属弁護士数35人25位でランクイン、昨年52人12位、本年は87人でベスト10入り。32人という人数は、日本で最も多く新人を採用した法律事務所ということになります。

     アディーレのほか、弁護士法人ベリーベスト法律事務所(27位)、弁護士法人法律事務所MIRAIO(40位)、弁護士法人アヴァンセリーガルグループ(48位)等の「過払いブーム」で力をつけたとされる、一般消費者向け業務を中心とした新興事務所が初のランクインをしています。

     全体的に企業法務や外資系の巨大事務所が頭打ち、もしくは退潮ぎみであるなかで、過払いブーム一段落後も、前記したような新興事務所が、今のところ、依然勢力を伸ばしている、といった印象です。

     ただ、この50事務所に関していえば、増加の半数近くがアディーレではあるものの全体として所属人数は、まだ75人増えてはいます。

      「毎年ここで紹介する50事務所の合計弁護士数は、上述のとおりややペースダウンしたとはいえ確実に増加しています。現在ですら、日本の弁護士業界は、欧米と比べて、弁護士の総数を考慮すると寡占状態にあると言えます(更に言えば、中国と比べても寡占状態は著しいです。中国には現在20万人前後の弁護士がいるとされていますが、中国第1位の規模を誇る律師事務所の執業律師数はおおよそ2000名であると言われています)。更に特定の法律事務所に人員が集中することでサービスが向上することが期待できるなら良いのですが、仕事の性質上、利害相反の問題からして、かえってクライアントの利益を損なう結果にはならないのか、業界全体の制度設計として、このままで良いのか、去年同様に気になるところです」

     藤本弁護士は、今回のランキングの解説を、いわば大事務所の弁護士の目線で、こう問題提起して締めくくっています。しかし、見落としてはいけないのは、あくまでこの50大事務所所属弁護士の総計は3677人、日本の弁護士の約11%足らずの世界ということです。ここから語れることと、語れないことは区別しなければなりません。

     彼らをそれでも「勝ち組」と見る方は、弁護士としてこの1割の側に入りたい、入っていたいと考える方もいるでしょうし、そういう存在であればこそ、この1割の「異変」「不調」に強い関心を示す方もいると思います。ただ、マスコミなどを通じていわれている彼らのニーズ論や、「リーマンショック」「過払いブーム」の影響を受けた「異変」のうえに立ち、彼らの目線でいわれる「業界全体の制度設計」というものが、それ以外の大多数の弁護士とそれに頼る大衆にとって、どういったことをもたらすかは、やはり注目し続けていかなければなりません。


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      「日本の50大法律事務所」という資料ページが、ネット上で公開されています。藤本一郎弁護士が、日本の法律事務所のうち、日本法弁護士の所属人数でのベスト50ついて、修習期ご

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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