日弁連会長選「再選挙」決着からの始まり

     2期連続の再投票、さらに史上初の再選挙にもつれ込んだ日弁連会長選挙が終わりました。山岸憲司候補が8546票で最多票を獲得するとともに、最多票獲得会も19会と3度目にして、全国3分の1以上(18会)獲得という条件を満たし、当選しました(平成24年度・同25年度 日弁連会長選挙再選挙開票結果仮集計)。宇都宮健児候補は最多票獲得会では、今回も32会と山岸候補を大きく上回りながら、得票数では7673票にとどまり、逆転することができませんでした。

     今回の選挙では、はじめて「無限ループ」に陥る可能性が会員間でささやかれました。再投票で決着しなかった段階で、また同一の候補間で再選挙・再投票が争われる限り、投票行動や支持層の大きな変動は見られず、延々と前記最多得票数と最多票獲得会の2条件を各候補者が満たせず、会長を選出できないという状況に陥るのではないか、という話です。

     結果は、そうはならずに済みました。ただ、今回の再選挙の結果からは、「無限ループ」化、少なくとも再選挙で決着しない可能性は大いにあったとみることができます。3月の再投票の段階で、2候補のうち、圧倒的に当選への有利な位置取りにつけていたのは山岸候補の方でした。同候補は票差で宇都宮候補に1000票以上の差をつけ、かつ最多票獲得会も14会と当選条件まで4会と迫っていたからです。いうまでもなく、宇都宮候補が得票数で1000票以上、上乗せすることを目標にしなければならなかったのに対し、山岸候補は票差で肉薄している会に集中的に運動をかけ、あと4会頭一つでも票で上回れば当選できる、戦略的にも有利な立場にいたということができます(「日弁連会長選初の『再選挙』という事態」)。

     再選挙の結果は、山岸候補側の戦略が、最低限当たる形になったといえます。宇都宮候補の票の上乗せは187票にとどまったものの、3月の再投票結果より票差はつめられ、再投票で獲得した最多票会14会のうち、3会を失いながら、新たに8会を上乗せする形で、なんとか条件18会を上回ることで、選挙戦に終止符を打っています。投票率は前回を0.3ポイントだけ上回る51.1%と伸びず、全体としては会員の投票行動は低調で、再投票から対立構図の大きな変動はみられませんでした。

     しかも、山岸候補の最多票獲得会のうち、仙台、愛媛、釧路が1票差、鳥取2票差、沖縄、宮崎が3票差と、まさに頭一つの勝利であることをみれば、この選挙が三度未決着という結果と、それほど遠くないところにあったことはうかがえます。

     さて、今回の当選を伝える全国紙は、新人の山岸氏が、現職の宇都宮氏を破った、と報じています。もちろん、これは事実ですが、感覚的におそらく多くの弁護士会員の受けとめ方は、こうした構図ではないと思います。日弁連会長選挙で「現職」対「新人」という設定そのものが今回初めてということもありますが、山岸氏は「新人」というよりも、「旧主流派」候補として、いわば「政権」を奪還した会長という意味の方が大きいからです。宇都宮会長のもとで、「旧主流派」といわれた勢力の「旧」の字が、再び外れることになるのです。

     これは、宇都宮会長誕生までの、過去10年以上、日弁連の「改革」路線の旗を振ってきた「主流派」が、再び主導的な立場につくということを意味します。それは、取りあえず合格1500人と「更なる減員」に舵を切った日弁連の法曹人口政策方針や、会内で本道主義からの決別、見直しの声が出ている法科大学院問題への対応に、より路線維持の方向で、影響してくる可能性があります。彼らの会内での発言力が増してくるということです(「日弁連法曹人口方針の潮目」)。

     ただ、ここで見逃せないのは、やはり前記山岸氏の勝ち方、つまり今回の辛勝の現実です。対立候補に約900票差、しかも32会で最多の支持を得られていない状況での日弁連会長の船出は、もちろんこれも前例がありません。宇都宮会長が対立候補に約1400差ながら、46会の最多票でスタートであったことと比べても、山岸氏は東京三会で票差を付けている違いはあれ、かなり厳しい支持基盤にあることは間違いありません。

     このことは、今回の選挙でも浮き彫りになっている、派閥候補対非派閥候補、都市対地方、さらに「改革」路線堅持対脱路線という対立軸を引きずりながら、日弁連の分裂をより深刻化させていく可能性があるとみるべきです。もはや、選挙が終われば一致団結というムードにないことはもちろん、この対立軸を変えていく材料を、主流派「政権」にも今のところ何も見出すことができないからです。

     この前代未聞の選挙劇と新執行部の誕生が、崩壊につながる序曲になってしまうのか――日弁連は、もはやそうした視点でみなければならない段階に入ったように思えます。


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    私は崩壊の序曲と見ています。
    私個人は宇都宮候補を支持していましたが(選挙はそれほど熱心ではありませんが)、山岸会長は恐らく舵取りが大変だろうと思います。

    すなわち。宇都宮前会長の功罪は会員に主流でも反主流でもない非主流という選択肢を与え、しかし、それが続かなかったがために非主流の行き所がなくなるという問題を生じさせたところにあります。

    従来、主流派が勝って来たのは、主流には必ずしも賛成していないけど反主流もねという層(反主流は反対だが非主流には批判的)が消去法的に主流派に投票してきたからです。主流と非主流の一番の違いは法曹人口増大の停止とロースクール問題ですが、山岸候補がよほどバランスよく舵取りしないと中央と地方(正確には中枢部と街弁層)の温度差は広がる一方だと思います。少なくとも地方にはロースクール積極派はロー教員も含めて相当少数です。これは、地方の保守派でも変わりありません。

    恐らくですが、山岸会長が舵取りに失敗すると、将来は高山派が勢力を拡大します(非主流層を取り込む)。しかし、高山派は特に法テラス等との関係で原理主義的なところがありますから、少なくとも国全体との関係では相当軋轢を生むでしょう。結局それは弁護士会の弱体、崩壊へとつながると思います。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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