日弁連会長候補支持決議への疑問

     派閥というものが、選挙にとってどういう意味を持つのか--。このことは、会派と呼ばれる派閥を背景として出馬している候補と、そうでない候補の間で、2度にわたる選挙でも決着がついていない日弁連(「日弁連会長選初の『再選挙』という事態」) の有権者会員にとって、今、はっきりと突きつけられているテーマとみることができます。

     もちろん既に書いてきましたように、これまでの日弁連の会長選挙で、大都市の弁護士会に存在する会派が果たしてきた集票マシンとしての威力をみれば、それが現実的にどういう「役割」を担い、そこにどういう「意味」を見出していた弁護士たちがいたかは分かります(「『会派』という派閥の存在感」) 。しかし、ここで問われているのは、むしろ有権者の意思を反映させ、それを多数が承認する適材を選出することにつなげたい選挙の本来の役割にどういう意味をもたらすのか、また、もたらすことを予定しているのか、ということです。

     東京弁護士会の最大会派・法友会が昨年12月9日に可決した「次期日弁連会長選挙に臨む法友会の方針に関する決議」というものがあります。

     法友会執行部は、「執行部内での議論、会員相互間での議論を踏まえ、さらに、他の政策団体との意見交換会等も踏まえ」、法友会人事委員会に対して、「次期日弁連会長選挙に臨む法友会の方針」を諮問。昨年12月8日付で人事委員会の答申を受けた、と。この答申は内部の議論や参考投票を踏まえ、「法友会会員が一致団結して推せる候補をその所属の会派乃至は弁護士会にとらわれることなく」「政策的整合性を前提にその人となりを十分に勘案し」「次年度日弁連が当面する政策課題についての実現力の観点から最も相応しい人物を推薦する」という基本方針を前提にしたとしています。

     その結果、決議はこの答申のもとで現日弁連会長の宇都宮健児氏の再選不支持と山岸憲司氏が代表を務める「弁護士未来セッション」支持、要するに山岸氏支持、さらに既に出馬への意向を示していた尾崎純理との一本化への努力をうたっています。いうまでもなく、事実上の候補者支持決議です。

     会派に近い東京の弁護士のなかには、この一連の経緯について、違和感を持たれない方も多いと思いますが、よく見ると奇妙な気持ちになってきます。なぜ、会派は「会長選に臨む方針」を内部委員会に諮問までして、会員一致団結の候補を決定しなければならないのでしょうか。あれやこれやと列挙する基本方針で一定の「配慮」をしていることを連ねても、まず、そこに素朴な疑問を持ってしまいます。そこで束ねられたものの決議が期待する拘束力とは、そもそもが前記本来の選挙の趣旨を脅かす形になることは、誰の目にも明らかなように思えるのです。

     決議は出席会員全員一致で可決したとしています。もちろん、この決議の意味は、当日出席していない人も含めた、2500余人といれる法友会全会員への、「指令」としての意味を持つことはいうまでもありません。ある候補者を支持したい人が共通の意思を表明することとは、意味が違うというべきです。法友会執行部が、諮問までして、同会にふさわしい候補の「原案」を作成していること自体、やはりそれとは異質です。それとも、よく考えず、候補者の政策も見ずに、投票に行く会員のために、会派が代わりに審査し、「法友会の政策的整合性からするとこの人ですよ」という、会員へのお薦めサービスということでしょうか。

     出馬予定候補への支持だけではなく、対立候補予定者の不支持まで決議するのは異例でもあり、他会の会員からは驚きの声も聞かれます。今回の選挙が、初の現職会長の続投がかかった選挙であり、その意味で、信任投票的な性格を帯びているとはいえ、その部分についても、一致した見解を周知させようとしていることになります。

     ある種の予定調和的ともいえる選挙が成立していた時代背景をいう人もいます。その意味で、鋭く政策が対立する今の日弁連会長選挙では、かつて通用していた派閥と選挙の関係が成り立たなくなったようにいう見方です。だが、その見方が一面当たっていたとしても、やはり会派という派閥の影響力は、それよりもずっと以前から、弁護士が行う選挙に似つかわしくないものとして存在してきたことは認めざるを得ないように思います。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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