不透明な日弁連「保釈保証制度」事業構想

     日弁連が検討している保釈保証制度事業について、保険業法に抵触するのでないか、そこをどうクリアしているかが見えてないということを以前書きました(「日弁連『保釈保証制度』事業構想の不思議」)。

     日弁連の構想は、組合員である弁護士の業務支援等を行っている全国弁護士協同組合連合会(全弁協)が「保証機関」となり、裁判所が「被告人以外の者を差し出した保証書を以て保証金に代えること」を許した場合(刑事訴訟法94条3項)を前提に、保証書を発行する、というものです。被告人の弁護士、親族らからの申し込みを受けて、全弁協が彼らと保証委託契約を結び、保証書を交付するという形で、5月の全弁協の総会に諮られる予定になっています。

     しかし、「保証機関」は刑事被告人の逃亡が生じた場合、保釈保証金相当額を裁判所に対して納付することになり、その対価として契約者から手数料を受領するわけですから、保険の提供とみることができます。保険業法2条1項に規定する「保険業」または3条6項に規定する「保険証券業務」に該当しないのかと話です。そうだとすれば、当然、保険業法に従って認可を取得し業務を営まねば違法行為に当たるわけですが、その話がどこにも出てきません。また、同2条1項2号の同法の除外事由となるもののなかにも、全弁協に該当するものが見当たりません。

     そもそも日弁連がモデルとしているのも、韓国の保釈保証保険制度です(「韓国『保釈保証保険制度』との距離感」)。

     ただ、もし、日弁連がこの議論を回避しようとしているとすれば、考えられる方法は一つしかありません。この事業を、全弁協が組合員に保証を提供する中小企業等協同組合法(中企法)に基づく業務であるとする位置付けです。同法9条の2、1項3号の規定に基づき、共済事業として提供されるとすることで、保険業法2条1項1号の「他の法律に特別の規定のあるもの」という除外事由に該当するという主張になります。

     しかし、実はこれにも首をかしげる声が聞こえてきます。中企法9条の2、3項には、以下のような規定があります。

       「事業協同組合及び事業協同小組合は、組合員の利用に支障がない場合に限り、組合員以外の者にその事業を利用させることができる。ただし、一事業年度における組合員以外の者の事業の利用分量の総額は、その事業年度における組合員の利用分量の総額の100分の20を超えてはならない」

     日弁連の構想では、全弁協と契約を結ぶ被告人の関係者が主要な保証委託者になります。日弁連機関誌「自由と正義」2011年1月号には、事業採算性の検討のなかで、保釈請求者数3万7250人、保証総額約745億円(保険料収入14億9千万円)と試算していますが、前記基準にこれがどうしておさまるのかという疑問です。そもそも共済事業は組合員に対して提供されるものですが、「被告人の関係者」が主要な保証委託者になるこの構想は、前記例外規定にもどうみてもおさまりきれないのではないか、と思えるのです。

     問題は、こうした論点がどうクリアされているのかが、日弁連側の発表のなかにも触れられず、また会内で聞こえてもこないことです。保険業法については金融庁、中企法については経済産業省という所管官庁に対する、日弁連側の釈明が行われていてもおかしくありません。

     日弁連内では、会員間でこの構想は、ほとんど話題になっていません。会員は「自由と正義」や日弁連新聞、さらには一部新聞の報道だけしか目にしておらず、構想を知っている会員も内容は、ほとんどがそこに流れた情報だけです。「保釈」というテーマに対する関心度の低さもありますが、制度構想者が掲げる「人質司法」打破とこの構想の具体化が、結び付いていない会員が多くいます。会員のなかには、日弁連会長選挙が4月にもつれ込んでいるなか、「日弁連執行部はそれどころではないのではないか」という声すら聞かれます。

     しかし、一方で、仮にこの日弁連の構想が実現した場合、つまり前記したような課題を何らかの形でクリアし、事業として認められた場合、同様のスキームで民間の数社が名乗りを上げることが既に予想されています。そのことがまた、保釈をめぐる環境をどのように変えるのか、不透明な面もあります。

     それだけに、日弁連の構想が多くの会員に認識されないまま、不透明な形で進むことには、やはり違和感を持ちます。


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    日弁連の構想する保釈保証保険は問題が多いようです。弁護士が直接事業を行うことに違和感を覚えます。この事業の裏には、保険会社の利益と、保険会社に付く弁護士の利権のにおいがしてきます。何だかいやな感じがします。

    保険業法の問題以前に・・・

     被告人に逃げられたらどうしようもないし,そんな保証で裁判所が保釈を認めるとも思えないから,そもそも事業として成立しない。だから反対するまでもない。そんな風に考えている会員が多いのではないかと思います。弁護士会では,とても実現しそうもない夢物語が語られることなど珍しくもないので,そんなものにいちいち付き合っていたら身体が持ちません。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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