弁護士業務広告規制への目線

     経済的な環境変化に伴い、弁護士の個人業務広告に対する目線は、随分変わってきたようですが、それでも全体を見渡してみると、広告を実際にうつことに関しては、依然、積極派と消極派の間に、相当な意識の格差があるような印象を持っています。

     そして、このことは当然、日弁連の広告規制に対する会員の目線の違いとなっています。3月15日の理事会で全面改定された日弁連の指針や、その前提となる規程が公開さていますが、広告を積極的に活用しようとする弁護士からすれば、弁護士の広告は、自由化されたとはいえ、規制でがんじがらめというとらえ方にもなります。あるいは、一般市民が、これを見ても、そうとらえることになるかもしれません。

     こうした現状があるなかで、重次直樹弁護士がブロクで興味深い分析をしています。

      「問題は、事業者団体・資格者団体の自主規制にあたるこれら規程等が、公正かつ自由な競争を促進する独禁法との関係で、どのような関係にあるのか、弁護士会の立場が必ずしも明確とは言えないことだろう」

     詳細は前記ブログを是非、ご覧になって頂ければと思いますが、要は同弁護士も紹介している公正取引委員会の「考え方」「指針」に基づくと、弁護士の業務広告の規制は、微妙な問題あるいは論点をはらんでいるということです。

     前記「考え方」の中では、資格者団体の広告活動について、以下のような見解が示されています。

     ① 事業者が行う広告は、需要者の需要を喚起する重要な競争手段の一つであり、事業者団体が構成事業者の行う広告について、需要者の正しい選択に資する情報の提供に制限を加えるような自主規制等を行うことは、独占禁止法上問題となるおそれがある。
     ② 資格者団体については、法律上「会員の品位の保持に関する規定」が会則記載事項として掲げられており、これを主な根拠として、資格者団体は、会則等において、広告に関する自主規制を行っている。資格者団体の行う広告に関する規制が法律上一定の根拠を有するとしても、会員の事業活動を過度に制限するような場合には独占禁止法上問題となるおそれがあり、その内容は、需要者の正しい選択を容易にするために合理的に必要とされる範囲内のものであって、会員間で不当に差別的でないものとすべきである。
     ③ 資格者団体が広告等に関する自主規制等を行うに当たっては、必要に応じ、会員からの意見聴取の十分な機会が設定されるとともに、当該役務の需要者や知見のある第三者との間で意見交換や意見聴取が十分に行われることが望ましい。

     この見解は、前記積極派の方々には、広告規制の現状に対し、十分に注目できる突っ込みどころを提示するものになっているように思います。細かな規制は、より弁護士の情報を求めている「需要者の正しい選択に資する情報の提供に制限を加え」ていないか、「品位」ということで「会員の事業活動を過度に制限するような場合」には当らないか、「会員からの意見聴取」「需要者や知見のある第三者」の意見は十分聴取されているか――。

     しかし、一方で最近消極派から聞こえてくる声があります。広告の影響を懸念するものです。それは、派手な広告を打つ事務所に顧客が流れることへの危機感とだけみてしまうと、広告競争になれていない、あるいは経済的に参加できない弁護士のやっかみのようにとらえる向きもあるようですが、必ずしもそうではありません。そこに目を奪われている依頼者・市民が果たして大丈夫なのか、適正な解決につながるのか、といった同業者だから分かる不安感でもあるのです。前記「考え方」に被せれば、果たして「需要者の正しい選択に資する」という前提を満たしているのか、という点です。

     重次弁護士は、そもそも公正かつ自由な競争を促進する競争政策への、公取の見解と、弁護士会の規制の背景にある考え方の間に、大きな温度差・隔たりを感じる、としています。その弁護士会の考え方とは、日弁連の指針がいうように「弁護士等の品位を損なう不適切な広告により国民の利益が損なわれることがないようにすること」が基本にあります。適正な競争の確保よりも、国民の利益が損なわれることの回避に注意を払い、それをまず重くみているところが、公取との違いと見ることもでき、その意味では、消極派の不安感は、やはりよりそちらにつながっているともいえます。

     日弁連は、重次弁護士も指摘する通り、いまだ広告に関して試行錯誤の過程にあるとの見方もできますが、積極派の疑問と消極派の不安のなかで、独禁法との関係を含め、改めて立場を明確にしなければならない局面に、ほどなく立たされるように思えます。


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    ありがとうございました

    匿名さん、貴重なご意見をどうもありがとうございます。

    これはまず、私が反省しなければいけないと思いましたが、私は弁護士が大衆にネットも含めて、積極的に情報公開と業務をアピールすることには反対ではないのですが、私の書き方に問題があるのではないか、と思いました。

    弁護士広告解禁前から、これまでの状況を見てくると、弁護士は全体として、試行錯誤しながらも、そうしたことに対して、積極的になりつつあると思いますが、現実問題として、そこにやはり個々の意識格差は存在します。匿名さんもご指摘のような派手な広告を打つ事務所への批判的な視点もありますが、費用対効果の面でどうしていいのか分からないというところもあります。ネットの活用も同様です。積極・消極の議論の時期が過ぎていると、ストレートにとらえられる方ばかりではなく、むしろ積極・消極間の意識格差は広がっているとみることもできます。

    さらに、意識格差の背景として、「広告」という存在に対し、いまだ弁護士全体に、やや誤解や混乱があるように思います。問題は、端的にいえば、広告=広報・情報公開ではない、という現実にあります。広告は、演出も脚色も伝わり易くするため、印象に訴えた表現を駆使しすることが当たり前に許されている世界です。そのリスクの部分を、弁護士の広告を考えたとき、どうとらえるのかという問題です。そこを一サービス業として、同一化する視点に立つほどに、ハードルは下がるわけですが、それでいいのか、ということです。別の言い方をすれば、そこから先を利用者側の取捨・選択の自己責任に完全に転嫁する形が、弁護士というリスクをはらむ「商品」になじむのか、完全にはなじまないならば、一般化しない視点でどうすべきなのか、ということでもあります。少なくとも、そこは、依然、解禁論議からの課題を引きずっているようにも、現状で改めて問われ出しているようにもみえます。

    以前、書きましたが、知り合いの街弁でも、いまや集客ルートは、紹介・法律相談・ネットが均等、という状態にまでなってきた、と言っています。紹介でやっていると、胸を張っている方は、もはや一部であり、大きな流れとしては、既に決定的になっているといえるかもしれません。ただ、メリットを強調する議論では、どうにもならない面があるのも事実です。いずれにしても、もっと、「前向きな議論を」というご指摘は、真摯に受け止めたいと思います。

    今後とも、よろしくお願い申し上げます。

    積極・消極より良い広報・広告の議論を

    広告については、積極・消極の議論の時期は、既に過ぎていると思います。
    市民にとっても、弁護士にとっても、良い広報活動のあり方を考える時期だと思います。
    広告の弊害から、消極論に飛躍すべきではありません。

    弊害を抑え、かつ、広告のメリットを拡大する方向を議論する、という、前向きな議論を、河野さんにお願いしたいと思います。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

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