弁護士会法律相談「無料化」の苦悩

     弁護士会の法律相談件数減少の一つの要因として有料の問題が挙げられていす。弁護士会が有料で実施しているために、資格要件を満たせば無料の日本司法支援センター(法テラス)などに相談者が流れているという話です(「弁護士会法律相談件数減少という兆候」) 。

     こうした現状認識から弁護士会の法律相談センターでの法律相談料を全面的に無料化する方向で検討した論稿を、佐藤昭彦弁護士が日弁連機関誌「自由と正義」3月号に寄せています(「特集 法律相談センターの現状と課題 無料相談拡充の検討」)。このなかで、面白い表現が出てきます。

      「『法律相談』こそ、実は最も有効な弁護士業の『広告』である」

     あるいは一般市民の方には、ぴんとこない表現かもしれません。つまり、弁護士が相談を受け、分かりやすいアドバイスをすることが、相談を担当した弁護士の能力をアピールする「広告」だというものです。これによって、事件受任につながれば、これは広告効果ということになります。

     これは、そもそも法律相談無料化への根本的な弁護士側の発想につながっています。無料化によって弁護士会の相談件数を増やす意味は、もちろん一つには、法テラスの登場や他士業の相談、さらには法律事務所の活動活発化など、市民にとっての法律相談の「受け皿」は広がってきているとの見方もあるなかで、さらに弁護士会がより市民利便の立場で、活用されやすい形を模索するという面があります。

     しかし、理由はもう一つあります。佐藤弁護士の論稿にも登場しますが、弁護士目線の受けとめ方として、相談数の増加は事件受任機会の増加につながるという期待感があるのです。以前、ご紹介しましたが、東京の弁護士会で法律相談は、会員の権利であり、担当を外されることは「ビジネスチャンス」を与えられる権利を奪われるもの、という、議論までありました(「『法律相談』というニーズ」) 。

     この論稿のなかで、佐藤弁護士は2009年11月に、この無料化について彼が所属する札幌弁護士会が行ったアンケートや会内の検討で、弁護士から出てきた反対意見として次のようなものがあったと紹介しています。

     ① 市役所等での無料法律相談では人生相談的なものや対応困難なものが多く、弁護士会の相談も無料化すると同様のものが多くなるだけで受任につながらないのではいか。
     ② 法律相談は弁護士職務の基本で有料が原則であり、無料化はそれと矛盾し、職務に対する報酬についても、無料との誤解を与える可能性がある。
     ③ 弁護士会が無料化すると、有料で法律相談を行っている弁護士の受任機会を奪い、また、各弁護士も無料化さぜるを得なくなり、これは事実上無料化の強制になる。

     受任機会につながる弁護士会の法律相談増への期待がある半面、無料化は逆に個々の業務への悪影響があるという見方です。しかし、この無料化への懸念に対する反論としても、佐藤弁護士は「広告」という考え方を提示しています。

      「確かに無料法律相談によって件数が増えても、受任率が増えない可能性は否定できないが、法律相談を『広告』と捉えれば、問題ない。将来において、相談者が別の件で相談に訪れ、受任する可能性や、相談者が他の相談者に当該弁護士(若しくは法律相談センター)を紹介する可能性もある」

     また、前記無料化による誤解に対しては、相談料をもらわなくても、相談日当を払えば、対外的に弁護士は「ただ働き」をしているのではないことを示せるとしています。さらに、無料化強制については既に事務所で無料化に対応しているところがあることや、相談料支払いに躊躇していない相談者もいるなどとして、強制との見方には疑問を呈しています。

     ところが無料化に伴い、当然、財源という問題が出てきます。ここでも一つは、弁護士日当を支払わず、これを弁護士個人の「広告」として日当は広告費用と相殺とする考え方。ただ、これだと直接受任につながらない場合、会員の法律相談センター離れを起こす可能性があるとして、日当を支払うことを前提とし、その場合、同センターを経由して受任した事件の着手金、報酬から一定の割合の事務手数料を徴収する方法を挙げています。日当を払わなければ、前記「誤解」論も出てくることを考えれば、目下考えられるのは、この方法ということになりそうです。

     あくまで佐藤弁護士は、この論稿をたたき台としていますが、どうもこの議論は、先が見えない印象を持ちます。受任機会が増えることを期待しつつ、無料化が足を引っ張ることを懸念する会員意識。「広告」理論も、広告費用を日当と相殺するほどには、効果を見込む自信はなく、下手をすれば法律相談センター離れ。ゆえに、着手金等から頂いて、日当を払いますと。どうやら結局、相当に広告効果を見込まないと、無料化の妙味を会員は味わえない話のようにとれてしまいます。

     そして、もう一ついえば、いかに市民利便を優先させようとしても、やはり会員の妙味をきっちり考えなければ、前には進めない等身大の弁護士会がここにあることも、この議論から感じとれます。


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    佐藤弁護士を検索しても・・・

    「確かに無料法律相談によって件数が増えても、受任率が増えない可能性は否定できないが、法律相談を『広告』と捉えれば、問題ない。将来において、相談者が別の件で相談に訪れ、受任する可能性や、相談者が他の相談者に当該弁護士(若しくは法律相談センター)を紹介する可能性もある
     ↑
    当該弁護士を紹介してくれればいいけど、法律相談センターを紹介されても
    当の弁護士は「妙味」はないんですけれどね。

    こういう空論を書く佐藤弁護士さんって、どんな仕事してるんだろうと思って
    検索してみても、事務所のホームページは出てこない。
    代わりに、やたら管財人のページが出てくる。 
    http://hokkaido-index.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-9d70.html

    管財で稼げるので、自分はホームページもなく一見さん不要の弁護士
    だとしたら、「言行不一致」では?
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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