「悪徳弁護士」の正体

     悪い弁護士の話は、もはや巷にあふれかえっているといっても、過言ではありません。インターネットの普及で、情報として、その存在が社会に広く、伝えられてもいます。「悪徳弁護士」という言葉は昔からありましたが、この現代日本の社会でも、「悪徳」という言葉の使い方としては、「悪徳商法」に次ぐくらい一般的になっているのではないでしょうか。

     ネットなどで流れている「悪徳弁護士」という存在は、大きく二つに分かれます。一つは、ある人々、ある勢力にとって「悪徳」とされた弁護士、もう一つは、だれが見ても(もしくは法的に)「悪徳」な弁護士です。

     前者には、例えば「反日」だとか「左翼的」だとか、政治的な立場での評価であったり、逆恨みなどからの事実に反した悪口、誇張を含んだ中傷が含まれます。

     問題は、後者です。もちろん、前者の人びとは、後者に該当すると主張しますし、ここの判断は微妙なものもあります。政治的な立場は、ネットという環境も手伝って、世論の支持を形成すれば、あるいは後者の「だれが見ても」という評価につながる可能性はありますし、「事実に反している」かも、究極は裁判所か弁護士会が評価することです。

     いずにしても、後者の完全にアウトという、「悪徳」とされても仕方がない弁護士が存在することは事実です。

     弁護士の不祥事は、それこそミスに近いものから、悪意に満ちているととれるものまで、それこそ程度の差があり、どこからが「悪徳」と呼ぶにふさわしいかは明確ではありませんか、一般的な認識として、およそ次のようなものに大別されます。

     ①弁護士という立場を利用した依頼者・相手への恐喝的な行為。
     ②依頼者・相手双方からの謝礼の受領を含めた相手方との内通。
     ③弁護士報酬の法外な要求。
     ④依頼者から預けられた供託金などの金銭の使いこみ。
     ⑤依頼者へ連絡しない、やるべき手続きを怠るなど受任案件の放置。

     普通の弁護士に言わせれば、①~③の行為については、通常の犯罪同様、発覚のリスクを考えたら、およそやるわけがないものです。どの世界も犯罪を犯す輩はいる、といえなくありませんが、ここは、よりによって正義を使命として掲げている弁護士に、こうした人間が紛れ込んでいる責任はだれかが負うのか負えるのか、という次元の話だと思います。

     多いのは④と⑤です。日弁連の機関誌「自由と正義」には、懲戒処分を受けた弁護士の実名と処分理由を載せた公告が掲載されていますが、こうした案件が最近、多くなっている印象です。

     かつて供託金に関しては、ある依頼者から預かったものを別の事件の供託金として流用し、別の事件の依頼者からの入金はないまま、結局、弁護士の使い込みという扱いになる、といったパターンを説明する弁護士もいました。
     
     ただ、最近はちょっと事情が違うかもしれません。要するに金銭的に余裕がないのです。拝金主義には、もっと贅沢をしたい、稼ぎたいという欲望からくるものと、経済的に余裕がないことの結果からくるものかあります。

     一般的には儲けているとされる弁護士ですから、なかなか理解されにくいとは思いますが、実は経済的な余裕のなさが非違行為に手を染める弁護士の傾向につながっていると思います。もちろん、その背景には弁護士の増員という状況もあります。増えた分だけ悪い奴が増える、という一般的なくくり方はできてしまいますが、増員自体が作った経済的な環境の問題ということは抜きには語れません。

     もっとも、いくらそんなことを言っても、こういう行為をやらない弁護士はやりません。質、倫理の問題をいわれてもしようがありません。弁護士会の懲戒制度そのものの効果を疑問視する見方もありますし、それ以上に、同制度が「悪徳」を厳しく罰していない、といった弁護士会不信のような論調がネット世論のなかにはあります。また、そうした認識のもと、自力で「悪徳」と闘おうとする市民の呼びかけもみられます。「被害者の会」的なものが、今後、広がる可能性がないわけでもありません。

     弁護士の懲戒件数は、2009年76件と、日弁連が統計を取り出して以降、最悪を記録しました。新受件数は前年をやや下回ったものの、1402件と2003年以降、年間1000件以上が続いています。

     この問題について、弁護士と弁護士会が、新たな姿勢で臨むことが必要になってきています。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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