対立と分裂を直視する視点

     前回に続く再投票、そして今回はそれでも決まらず、再選挙にもつれこんだ日弁連会長選挙(「日弁連会長選初の『再選挙』という事態」)ですが、この状況がはっきり示しているのは、やはり地方会と大都市会の会員の意思のはっきりした隔たりです。

     いうまでもなく、大票田である都市部で勝利した総得票トップ候補が、地方で最多得票会を獲得できず、次点候補がそこでは大きく上回るといった、いわばねじれた現象が、再投票でも解消しない今回の事態は、いかにトップ候補が当選のために必要な18会制覇にあと4会と迫っているとはいえ、やはり前記会員意思の隔たりを認めないわけにはいかない状況だと思います。

     そして、そこには既に書きましたように、弁護士の経済環境に対する考え方、受けとめ方の現実的な違い、あるいは大都市の会派(派閥)を背景とし、また日弁連の「改革」路線を主導してきた旧主流派に対する妥協できない地方会員の拒絶感が、決定的な形で存在することも読みとることもできるとは思います。

     このことは、再投票を争った二候補のどちらか、あるいは再選挙という仕切り直しで、新たに名乗りを挙げた候補にしても、この選挙に最終的に勝利し、会長席に就く人物は、このことを、今、日弁連に突きつけられている現実として受けとめるべきだと思います。

     ところが、再投票を争い、総得票でトップとなった、旧主流派候補である山岸憲司氏の陣営から、最近、弁護士に流されたFAX(「弁護士未来セッション」ニュース号外その1)にはこんな文字が躍っていました。

      「地方と東京の対立をいたずらに煽ることは慎むべきです」

     どうも前記意思の隔たりにこだわることは、日弁連分裂を招こうとするものといっているようにもとれる言い方です。その真意として、①地方も東京も社会状況や若手弁護士が抱える問題・痛みは同じ②現会長が東京三会で支持されないのは、日弁連の活動にかかわる多くの会員が日弁連の現状を間近で見て、日弁連の閉塞状況と孤立化に憂いているから、またそのことが若手に伝わっているから③「地方対東京」「会派順送り」等の一方的なイメージ戦略だけで対立を煽って大きく広げることは弁護士の自治能力が疑われ、弁護士自治の危機にもなりかねない④大規模会のみならず地方会員の置かれた立場や考え方を最大限尊重して会務が運営されることを願っている――といったことが書かれています。

     対立候補からみれば、まさに我田引水な言い分ということにはなると思いますし、最後に地方会員の立場・考え方を尊重するととってつけたように書いても、全体の主張からは、むしろこの言い分こそが、対立を煽り、分裂の溝を深くするもののようにも見えます。

     地方会と東京の痛みが本当に同じといえるならば、そもそもこのような結果にはなっていません。それだけでも直視しているといえるかどうか疑問ですが、宇都宮健児会長が東京三会で支持されないのは、三会で日弁連の活動にかかわる会員が、日弁連の現状を間近にみているから、というのは、同会長の執行部が閉塞状況や孤立化を招いているともとれ、さらにいえば、それを支持する会員の意思、例えば弁護士の増員を懸念し、減員に期待する方向が、閉塞や孤立化への道といっているようにもとれなくありません。

     さらに地方会員から出ている「会派順送り」人事といった批判をすることが、弁護士自治の危機につながるというのは、およそ受け入れられない「脅し文句」でしかありません。

     再投票・再選挙という、異常ともいえる事態がなぜ、今、生まれているのか。まだ投票で意思を示していない多くの会員を含め、弁護士有権者は、来る選挙では、少なくともその現状と理由を直視できる候補者に一票を投じる以外、状況を変えられないことは、認識しておくべきだと思います。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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