「ボランティア」と括られる不安

      「回転ずし」事業進出など何かと話題が多いアディーレ法律事務所(「法律事務所系『回転ずし』という現象」 「弁護士支援という『アディーレ』の挑戦」)代表の石丸幸人弁護士のインダビュー記事を、ダイヤモンド・オンラインが特集連載「弁護士会の憂鬱 バブルと改革に揺れた10年」の第2回で掲載しています。

     彼がどういう発想で、およそ従来の弁護士の姿とは違う事業を展開しようとしているのか、また、その彼が今と将来の弁護士像をどのようなものとしてとらえているのかに、切り込んでいます。

      「今、弁護士界全体のマーケットで、過半数が債務整理関連だ。つまり、極端なことを言えば、債務整理案件がそっくりなくなったら、半数の弁護士事務所が破綻するということだ」
      「もちろん、過払い案件がなくなったら、どうするかというのも考えている。弁護士の数が増えているので、今までのように弁護士法人を経営して行くことは難しくなる。もちろん、その中で勝ち残っていく努力をするのだが、そうはいってもリスクヘッジをして行かなくてはならない。数年前から弁護士業務ではない分野でのビジネスを検討していた。リスクヘッジの一つだ」
      「法人間ということではなく、私という所有者が共通することで、(法律事務所と株式会社間で)資金と雇用の異動は可能なのだ。したがって、リスクヘッジとしては有効だ」
     「寿司店経営の他に二つの対策を持っている。一つは地方に支店をつくっていく。弁護士が増えたといっても、地方は弁護士の偏在がまだまだ見られる。弁護士が少ない地域は多い。それに、まだまだ“殿様商売”の弁護士もいる。そういうところで、支店をつくって活路を見出していく。もう一つは、過払いの他に交通事故や離婚などの分野を取り扱っていくことだ」

     こうした彼の「実業家」目線ともいえるものに対する、同業者の受け止め方には、さまざまなものがあると思いますが、今の弁護士が置かれている現状では、眉をしかめる人ばかりではなく、むしろ好意的に受け止めている人もいます。それは割り切り方の問題、まさに彼が言った組織の成長のためには「リーガルサービスとの親和性なんて不要」といったとらえ方に、弁護士の可能性を見ている人がいるということです。

     ただ、このインタビューのなかで、やはり気になるところが出てきます。彼は、おそらく多くの同業者、とりわけ弁護士の増員に批判的な人々に向け、現在の議論が「食べられる適正人数」といった生活保障を前提としたものとみて批判的にとらえ、弁護士業を他のサービス業と同一にみる、あるいはその特殊性を認めない立場を強調しています。

     まさに弁護士増員での競争による淘汰を言い、増員に慎重な弁護士の「心得違い」をいう、弁護士会外から聞こえてくる典型的批判論調ですが、さらに彼はこの文脈で次のようなことを言っています。

      「弁護士だから、公的な役割があって手弁当で人権問題をやるから、だから競争するようなことがないようにしてほしい、というのは違う。基本的にわれわれは自営業者だ。他の多くの企業に勤める人たちと変わりはない」
      「そもそも、『競争制限しないと、ボランティアはやらない』というのがおかしい。ボランティアは強制されるものではない。任意でやるものだ。収入がない人でも、ボランティアやりたいという意思がある人は、やっているでしょう?」

      弁護士が人権問題に取り組むのは、ボランティアではありません。歴とした本来業務です。むしろボランティアでは困る大衆がいます。採算性の取れない仕事だから、それは任意でやる強制されない仕事、採算性のとれる仕事の合間にやる仕事でいいという発想では、大量にある採算性のとれない法的ニーズは、弁護士が片手間にやる分野になってしまいます。

     まさに、これまでの増員論議がそうであるように、この考えに立っているうちは、大量にある採算性のとれないニーズ、あるいは大衆が一番期待している部分に当たる多くの弁護士をどのように支えるのか、という、根源的な問題に、えんえんと立ち入らないことになると思います。自由な競争で生き残れ、ということこそ、まさに弁護士の生き残りしか考えていない発想に思えるのです。

     自由な競争の勝者となり、経済的に余裕ができれば、ボランティアをやる弁護士も現れる、という描き方でしょうか。もし、そうであるならば、それを信じるか、大衆に問いかけてみるべきです。

     一サービス業として受け止める弁護士の「覚悟」の先にある、大衆にとっての、最大の不安要因になるはずのものが、そこにあるように思います。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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