「相互監視」できる弁護士会への実感

     以前にも書きましたが、弁護士会内では、これまでよく、弁護士の不祥事は、東京、大阪など主に大都市の弁護士によるもの、という意見が、特に地方の弁護士から聞かれました。

     かつて、その理由としていわれてきたことは、ある意味「やらかす」側の事情の話というより、どちらかというと「やらかさない」方が強調される話で、それは、「地方会は会員の顔が見える」というものでした。要するに人数の少ない弁護士会では、会員同士が顔みしりで、相互監視が働くが、大人数の弁護士会では、それができないから不祥事を招きやすいのだ、と(「『顔が見える』弁護士会の功罪」)。

     懲戒でみる限り、今現在も、東京・大阪の弁護士の事案は目立ちます。弁護士の場合には、人口が都市偏重型に分布していますから、相対的に多くなる傾向や、経済活動が活発なところでより発生しているというような見方もされてきましたが、一方で、前記「顔が見える」効用は、今も根強くいわれる、現実的な不祥事抑止の環境です。

     現に都市部でも、この効用と絡めて、会派といわれる派閥の存在意義をいう会員もいました。東京や大阪の大弁護士会のなかにある会派所属の会員ほど、不祥事を起こしにくい、つまり、会派の人間関係が、沢山の弁護士を擁する大都市の弁護士で、その「顔の見える」環境を提供しているといった言い分になります。

     この「顔が見える」抑止の環境とは、具体的にどういったイメージのものかといえば、問題に対して、事前に相談ができ、あるいは助け舟を出せ、あるいは忠告できる環境といったところでしょうか。「相互監視」という言葉を当てはめる方もいますが、他者が外から事前に止められると同時に、自らも不正・不当な手段に手を染めにくい関係性ともいえます。

     では、数の問題として、現実的にどのくらいの規模を弁護士はお互いに「顔が見える」環境として実感しているのでしょうか。最近、地方会のある弁護士が興味深いことを言っていました。会員数700人程度、年間新会員数50人程度がその限界ではないかと。地方の経済環境といったこととは全く別にして、弁護士会のムードがこの位の数を境に、大きく変わると。相互に知らない会員が増えるととともに、関係性が違ってくるという実感です。そして、前記したような、本当の意味で、「相互監視」がかっちりと機能しそうな規模は、最大で会員数100人程度ではないか、という印象を語っていました。

     この辺は、地方の弁護士でも、かなり個々の弁護士によって、受けとめ方が違うところだと思いますし、この数値もあくまでこの弁護士のとらえ方、印象なのですが、一方で、なかなか内部の人間でなければ、分からず、また、外に伝えにくい弁護士の実感が、ここにあるのも、事実のように思います。

     弁護士の不祥事の話となれば、いまはもっぱら「やらかす」方の理由として、経済的な激変がいわれ、また、激増政策が続き、増員ありきの現状では、そもそもこうした「やらかさない」環境の適正規模自体「言ってもしようがない話」のような扱いをされ出している観もあります。また、こうした適正規模の話を弁護士が口にすれば、例外を列挙して、またぞろ自己保身のための増員抑制論のようにいう批判が登場するムードもあります。

     ただ、即独時代になくなりつつある、それまでのボス弁との関係のなかで作られてきた修養のプロセス同様、あるいは、これもかつてそれなりに機能していることを弁護士が実感でき、そして今、失われようとしている関係性であるならば、この観点から弁護士のあり方を見直すことも、依頼者・市民にとって、別に悪い話ではないように思えます。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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