日弁連会長選初の「再選挙」という事態

      ついに日弁連選挙史上、初の再選挙になる結果が出ました(平成24年度・同25年度日弁連会長選挙再投票 開票結果仮集計) 。2月10日に4候補で行われた選挙で総得票最多、最多票獲得会全国3分の1会以上(18会)の当選基準をいずれの候補も満たさず、山岸憲司候補と宇都宮健児候補の上位2人で3月14日に行われた再投票の結果、山岸候補8558票(最多会14会)、宇都宮候補7486票(同37会)と、再び両者が当選基準を満たさなかったということです。改めて立候補を受け付け、4月27日に投票が行われることになりました。

     総得票最多の山岸候補の最多票獲得会18会に及ばず、票で同候補に1000票以上差をつけられた宇都宮候補は獲得会では、地方を中心に37会を押さえるという、ねじれの構図は1回目と変わっていません。前回2010年に、再投票で総得票の1000票差を逆転し、逆に1400票以上差をつけ、最多票獲得会も4会上乗せして当選した宇都宮候補の勝ちパターンには、今回同候補が持ち込めなかったということになります。

     1回目の選挙での旧主流派候補の善戦からも、宇都宮候補が前回のような位置取りにつけていないこと、そのことから前回のように旧主流派陣営や支持層が再投票で、勝ち切れないといった見通しに立たないことも考えられ、再投票では決着がつかず、再選挙になる可能性も、前回より高いということはいえました(「日弁連会長選2期連続再投票の行方」) 。

     ただ、今回の再選挙の結果には、予想外の展開が見られます。50.8%という驚くほど低い投票率です。これは過去18年11回の選挙(再投票を含む)で最低だった今回第1回を11.5ポイントも下回り、1981年の谷川八郎会長辞任に伴う補欠選挙を除けば、通常の会長選で史上最も低い数値です。

     今回の再投票では投票率が50%を下回った弁護士会が7会もあり、それらは第一東京、第二東京のほか横浜、愛知県、福岡県といった、いずれも大・中規模弁護士会です。都市部で2回目の投票行動回避があったとみることができます。

     一方、各候補間の票の移動や変化でも、それは読みとれます。最多票獲得会を山岸候補で見ると、山岸候補は1回目にとった12会のうち、地方会4会を失ったものの、前回宇都宮最多会4会、尾崎最多会・同数会各1会の計6会を上乗せしていますが、全体的に前回の勢力図が一変するような大きな変動は見られません。また、各弁護士会での票の動きを見ても、第二東京で1回目トップの尾崎票のうちの相当数が山岸候補に流れ、前回2位の宇都宮票を抜き、最多票となったとみることができるのを除けば、大都市部で両候補とも票の大きな上積みがなく、最大票田の東京では、両候補とも票を減らしています。

     このことから、票の動きで見る限り、注目された旧主流派の前回尾崎票が、全体として大きく山岸候補に合流したとはとれず、また、もともと旧主流派に流れるとは考えにくい森川票にしても、大半が宇都宮候補に流れたとも見えにくい結果です。それは、1回目の尾崎・森川支持票の相当数が2回目は棄権したことをうかがわせます。

     前回2010年のように勝ち切れない選挙とは見られなかった旧主流派・山岸候補(現に今回は再度ドローに持ち込んでいるわけですが)にとっても、前回に比べ、厳しい状況がはっきりし、旧主流派の「政権」奪還の恐れが強かった宇都宮候補にとっても、天王山となるはずだった再投票に、新たに参戦する強力な援軍票はないばかりか、両候補ともに票を減らしている会があることを見ても、戦線離脱組が相当数いたとみることもできます。

     さて、あくまで今の段階でですが、この結果から二つのことがいえると思います。一つは、2期連続しての再投票、そして初の再選挙に至っている、この総投票と最多票獲得会数の、ねじれともいえる状況、つまりは、それが示す弁護士増員やそれに伴う弁護士の経済環境に対する考え方の都市部会員と地方会員の意思の隔たり、あるいは大都市の会派(派閥)を背景とし、また日弁連の「改革」路線を主導してきた旧主流派に対する妥協できない地方会員の拒絶感が、決定的な形で存在する現実が、今、日弁連に突きつけられているということです。

     この現実を直視して、地方の抵抗がある限り、もはや勝ち切れないとみるのか、逆にこれだけの地方の抵抗があっても、勝ち切れない日弁連の現実があるとみるのか――。それは両候補それぞれの立場からの見方になります。

     そして、もう一ついえることは、この再投票の結果からみても、もはやこの戦いに、関心を失い出している、もしくは回答が出せなくなってきている会員が増えはじめているかもしれないということです。それが両候補とも状況を変えられないと見る、会員弁護士の無気力からなのか、それとも洞ヶ峠を決め込んでいるだけなのか、はたまた真剣に自らの業務がそれどころではないのか――。そのこともまた日弁連の現実として、押さえておく必要があるように思います。


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    まとめteみた【元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記】

      ついに日弁連選挙史上、初の再選挙になる結果が出ました(平成24年度・同25年度日弁連会長選挙再投票 開票結果仮集計) 。2月10日に4候補で行われた選挙で総得票最多、最多票獲得会全国3分の1会以上(18会)の当選基準をいずれの候補も満たさず、山岸憲司候補と宇都宮健児...

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    お金はなくともひまがあれば投票はただでできますから、特に東京にはまだまだ仕事があり多忙にしている弁護士が多いのかと思いました。結局、東京の弁護士は自分の業務はまだあるから危機感を感じていないだけではないでしょうか。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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