内なる強制加入批判への危機感

     弁護士自治と強制加入制度に対し、会内の不要論を聞くことが多くなってきています。これまでの弁護士会の長い歴史の中でも、ここまで内部にこうした意見を抱えたことは過去になかったのではないか、との印象を持っています。

     直接に聞かれる批判は強制加入制度に対してです。以前にも書きましたように、それは弁護士の増員に伴う弁護士のビジネス化への意識、若手を中心とした経済的な余裕のなさが、ともに「経済的な自由」への要求を高め、「会費」負担への不満から、強制加入不要をいう声につながり始めているように見えます。

     そして、それは同制度が支えている弁護士自治の不要論にまで及ぶことも意味するわけですが、そこでは弁護士自治が本来持つ権力対抗性といった存在意義に対して、前記のような強制加入を存在させることを上回る価値を、会員が見出さなくなっているということも意味します( 「『弁護士自治』という責任」 「『弁護士自治』崩壊の兆候」)。

     この点について、「司法ウオッチ」の「司法ご意見板」に、坂本隆志弁護士がこんな書き込みをしていました。

      「現在の弁護士自治制度は、弁護士会への強制加入制度によって支えられていますが、今時の若手弁護士で、今の弁護士会が『国家権力と対峙して大衆の権利を擁護する』役割を担っていると本気で思っている人はほとんどいないと思います。司法制度改革一つを取っても、弁護士会はむしろ政府のやり方に迎合しているとしか思えません」
      「また、弁護士会内部では、各会派(派閥)が会員の意見をくみ取る役割を果たしているとされてきましたが、最近はどの会派にも属していないという若手・中堅弁護士が増えており、会内民主主義すらもろくに機能していない形跡があります」

     坂本弁護士は、ここで二つの重要な指摘をしています。一つは、前記したような弁護士自治の本来的な存在意義について、若手弁護士にその認識が薄いことの原因が、対司法改革を含めた弁護士会の姿勢にもあるということです。「オールジャパン」といわれた「改革」での、その姿勢は、権力に対抗する日弁連の位置取りを完全にぼやけさせたということだろうと思います。

     そして、もう一つは会内民主主義ということです。会派が機能していたというのは、あくまでそれが存在する大都市会の話になりますが、弁護士会内の民主主義が機能していないという会員のとらえ方が、強制加入制度の最低条件を満たしていない、という会員意識につながっている可能性があるということです。

     坂本弁護士は、こう続けます。

      「個人的には、弁護士会への強制加入制度はもはや必要ない(存続させてもまともに機能することは望めない)と思いますが、仮に存続させる場合でも、会務の大幅縮減や会費負担の軽減のほか、書面による議決権行使を認めることなど、弁護士会運営の『民主化』は最低限必要だと思いますね」

     強制加入存続への条件としての「民主化」策を挙げています。強制加入を維持するための会務の「仕分け」ともいえる適正規模化や、意見集約の形を模索すべきとする提案には、賛同する会員も少なくないように思えます。

     これを投げかけられている弁護士会側の重要なポイントは、一点といってもいかもしれません。つまり、それは、こうした弁護士自治と強制加入をめぐる会内世論状況をどこまで危機として認識しているのか、ということに尽きるように思えるのです。それは、人によって、二つの意味を持ってしまうかもしれません。一つは、もちろん、坂本弁護士が指摘する若手を中心とした弁護士の認識が、制度を脅かすものとして、会の主導層が差し迫った危機感を持っているのかという意味。そして、もう一つは、実は、会の主導層自身が、もはや何が何でもそれを死守するという意識にないかもしれないという意味で。

     弁護士自治が外に対し、国民を守る「盾」として、権力からの攻撃を受けるのでなく、弁護士会員という内に向かっての「規制」として内部からの攻撃を受ける時代。何がこれを生み出し、また国民が気付かないところで、この先何をもたらされようとしているのかを、今、冷静に観察しければいけないところにきています。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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