「さらなる減員」という焦点

     法曹人口をめぐり、日弁連会長選挙候補者もそろって、現在の年間司法試験合格者2000人を1500人へ減員する方針を掲げ、また、日弁連も「基本政策」として、それを打ち出す方向にあると伝えられるなか(「日弁連法曹人口方針の潮目」、実は地方の弁護士会を中心に、「1500人」方針への不満・不信が急速に高まっている観があります。

     先日も、朝日新聞が社説で、こうした1500人への方向を「減員」と批判的論調を掲げていますが(「『朝日』が見ようとしない『改革』の現実」) 、そもそもこれは「減員」として期待できる数ではないことを、多くの弁護士会員が認識しているのです。

     日弁連の試算でも、仮に年間合格者を1500人にしても2027年ころには法曹人口が5万人規模に達し、2053年ころに約6万3000人で均衡するとしています。ちなみに合格者数1000人でも2043年には4万9000人に達するということです。つまり、いわれている通り、これはあくまで「増員ペース」の問題で、人口そのものの抑制策ではない、のです。仮に増員そのものを否定しないとしても、このペースにも、需要が果たして追い付いて増えるということが現実的にあるのか、そこをどう実感しているのかの問題があるのです。

     今回の日弁連会長選挙では、4候補のうち純然たる反「改革」派の森川文人候補だけが、年間500人というラインを掲げたほかは、3候補はいすれも1500人。とりわけ、これまで増員基調できた旧主流派の2候補も1500人を掲げたわけですが、これは選挙を意識し、前記「基本政策」の方向に歩み寄ったとの見方がなされています。それだけに、「このラインでとどまるならば、結局、状況は変わらないのではないか」という悲観論とともに、むしろ「基本政策」が掲げるとされる「さらなる減員」に会員の関心が移りつつあります。

     もともと全国的にみれば、弁護士会では「1000人」を決議として挙げているところもあり、「1000人以下妥当は多くの弁護士の実感」とする声も聞こえてきます。既に、地方会に1000人を下回る決議の新たな採択への動きも出始めているようです。

     日弁連内で「1500人」が既に既定路線になるのであるならば、次の会内的な議論の焦点は、やはり「さらなる減員」になるということです。日弁連会長選挙の結果で、もし、旧主流派の会長が当選し、「政権」を奪還した場合、その方向での取り組みが不安視されていることは前記エントリーでも書きましたが、仮に当選という結果が出ても、その執行部の方向を多数が是としているということで片付けられないのが、今の日弁連と弁護士の状況です。業態・地域・世代、それぞれに格差が存在し、「弁護士」とくくっても、それによって全く違う状況を抱えているのが今の弁護士だからです。

     一方、「さらなる減員」には、前記「朝日」論調をみるまでもなく、「さらなる逆風」を弁護士会としては覚悟しなければならないのは確かであり、逆に、そこを読んだ「内向き」の情勢論が、会員の意思を束ねる方向に打ち出される可能性もあります。

     ただ、その意味では、正面から「さらなる減員」方向を模索し、打ち出すに当たっては、「基本政策」に掲げられると伝えられる就職難の解消や質担保につながる現状の検証もさることながら、全体を増やすことで本当に必要とされるところに弁護士が満たされる形になるのか、あるいは「二割司法」でいわれたような大規模な機能不全や潜在的ニーズが果たして存在していたのかなども問われなければなりません。根本的なこの「改革」の法曹人口問題の描き方は正しかったのかどうかまで立ち返った議論を、どこまで弁護士が提起できるのかにもかかっているように思います。 


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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