合流の見通しが立たない分裂状況

     再投票が決定した次期日弁連会長選挙(「日弁連会長選2期連続再投票の行方」)ですが、この選挙は永久に続くのではないか、ということが、会内で真剣にささやかれ始めています。つまり、来る3月14日の選挙でも、決着しないという見通しです。その場合は、再選挙ということで、一からやり直しとなるわけですが(日弁連会則61条の3)、同じ候補が争うのであれば、それでも結果は、同じになり、延々とこれが繰り返されるのではないか、という、まるで都市伝説のような話です。

     実際、日弁連会則は、再選挙が繰り返されるということは想定していないとみられます。ただ、そうなれば、決着は年度をまたぐということもあり得るわけですが、会則は任期の満了で退任する役員は、新たに選任された役員が就任するまで引き続きその職務を行う(63条3項)としていますので、仮にそうなった場合は、宇都宮健児・現会長が引き続き職務に当たることになります。

     この想定外の事態を受けて、会員のなかには、会則の選挙条項見直しの必要性をいう方もいるようですが、総得票に加えた全国3分の1最多票獲得会という当選基準をいじるのは、現実問題難しいと思います。最多得票会条項がなければ、大票田である大都市会会員の投票行動で選挙がいつも決着してしまうということになります。その意味で、弁護士の人口分布が、大都市偏重である実態であればこそ、この条項の意味があるということもできます。

     そう考えれば、まさに前回と今回のような、地方会と大都市会の会員の意思がくっきりと分かれることがあるのであれば、なおさらのこと、この条項の必要性は際立つということもいえます。地方会員がこの改正に賛成するわけもあません。

     このいわば全国の弁護士の意思を一応反映させるという建て前に立つ配慮条項があっても、これまでの日弁連会長選挙では、大都市持ち回り的な決着が続き、また、「改革」路線でいえば、主流派(旧主流派)といわれる候補が前々回の選挙まで確実に当選してきたのは、別の政治力学が働いていたこともあるとは思いますが、ここまでくっきりとこの条項が機能してしまうような、大都市会員と地方会員の意識格差が表面化した状況がなかった、ともいえます。

     もちろん、それをもたらしたのは、「改革」の影響です。争点の法曹人口に対して、その影響の深刻度が大都市と地方が大きく異なってきていると考えれば、これまで度々見ることがあった、まるで日弁連の「改革」方針に沿わせて、その顔色を見るかのごとく、「地方にはニーズがまだまだある」と語る地方会員の言も、少なくとも地方会会員の意思を一般的に代弁していないことを選挙結果は、如実に物語ったというべきです。

     そういう意味では、再投票が続き、いよいよ再選挙まで現実的なものとしてささやかれている今の日弁連の状況は、会員意思の分裂状況が、これまでにないレベルにまできたことを示しています。思えば、日弁連が1990年に「改革」の狼煙を上げ、2001年の司法制度改革審議会の意見書を経て、それが具体化するなかで、会内から「改革」批判が出されても、ここまでの合流の見通しが立たない分裂状況が生まれることを予想していた人は、どれだけいたのでしょうか。

     法曹人口、法曹養成問題にしても、当初から反対論を掲げていた弁護士もいたわけですが、これが個々の弁護士の将来に、これほど切実な問題をはらむとは、「改革」を受け入れた多くの弁護士は認識していませんでした。会内世論が分裂し始めた当初、これを楽観していたのは、明らかに「改革」主導層、旧主流派側でした。

     「なれない改革には不安がつきもの」
     「反対派もいずれ合流する」

     こんな言い方を彼らから、さんざん聞いた気がします。予想に反し、亀裂は深まった、別の見方をすれば、ことここに至るまで、地方会員を中心に、この路線が配慮してこなかった会員の意思が確実に存在したということだろうと思います。執行部側と一般会員の乖離という言葉が、地方会から聞かれていましたが、その正しさがこういう選挙結果で裏付けられている観もあります(2009年中部弁護士会連合会定期大会「適正な弁護士人口政策を求める決議」)。

     選挙そのものは、おそらくどこかで決着するでしょう。しかし、今の日弁連の状況は、会長が選出されても、その戦いが終わっても、直ちにこの分裂が解消される方向に進むものでもありません。そして、今回の再投票、あるいはその先にあるかもしれない再選挙は、そうした日弁連の現実を対外的に強くアピールするものになることも間違いありません。


    「司法ウオッチ」会員特典として弁護士情報検索サービス「弁護士データバンク」を追加。ただいま新規登録先着100名様、3月まで会費無料キャンペーン実施中! http://www.shihouwatch.com/membership.html

    ただいま、「次期日弁連会長に求めるもの」についてもご意見募集中!
    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。
    http://www.shihouwatch.com/

    司法改革に疑問を持っている人々ための無料メールマガジン「どうなの司法改革通信」配信開始!無料読者登録よろしくお願いします。http://www.mag2.com/m/0001296634.html

    にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
    にほんブログ村

    にほんブログ村 その他生活ブログへ
    にほんブログ村



    人気ブログランキングへ

    スポンサーサイト

    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事





    コメントの投稿

    非公開コメント

    管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR