弁護士会に根を張り続ける「会派」

     今から6年前の2006年に、第二東京弁護士会が創立80周年を記念して発刊した機関誌「二弁フロンティア」特別号での、ある企画が話題となりました。「会派を語る」。この企画は、二弁内の「会派」と呼ばれる8つの派閥の関係者が、それぞれの自会の創立の経緯から、その後の発展と展望を過去のエピソードなども織り交ぜて語るというものでした。

     これがなぜ、話題になったかといえば、それはこの内容そのものではなく、扱いにあったというべきです。これが、各会派や有志グループの出版物というのならば、取り立てて珍しい企画ではなかったかもしれません。しかし、これが弁護士会発行の出版物となると、話は別です。いうまでもなく、会派は弁護士会の組織ではないからです。

     会派を擁する東京、大阪、愛知の弁護士会では、表向きその存在とは、一線を画する姿勢をとってきました。強制加入団体という立場から、あくまで有志団体の活動と混同を避け、また、そのこと自体が会派未所属会員との間でのフェアな扱いであるとする配慮もあったと思います。

     とりわけ、重要なポイントは、この会派が、実質的に日弁連・弁護士会役員などポスト人事の擁立母体となってきたことでした。その意味でも、逆に弁護士会としては、この存在と形式上距離を置いたような扱いをせざるを得ないところもあったようにみえます。

     前記企画の異例さは、その存在を弁護士会の歴史のなかに取り込んだような趣があったところともいえます。それは、逆にこの弁護士会の歴史を80年という節目で振り返るとき、この会派という存在を無視できなかったといってもいいのかもしれません。過去、そして将来にわたり、東京の弁護士会にとって、会派という存在がいかに大きいものなのかを、この企画が物語っているようにも思えます。

     以前にも書きましたが、この会派という名の派閥に対しては、それが存在しない大都市以外の弁護士会会員が冷やかな視線を向けてきたのはもちろん、会派が存在する弁護士会内にも根強い批判が存在してきました。それは、やはり前記したような、会員の意思を直接反映させるべき選挙で、人事母体として会派が果たす「集票マシン」機能に対するものでした(「『会派』という派閥の存在感」) 。

     しかし、ある意味、会派が大都市弁護士会で確固たる地位を占め続けてきたことは、その批判を上回る強い会員の支持基盤を持っていたというべきだろうと思います。それは、前記人事における効用からいえば、もちろんその筋の野心を持つ方には、ある種の魅力ある組織ということにもなりますが、それにとどまらず会内のあらゆる意見集約を彼らからすれば、「スムーズに」展開し、また会務から個人業務に至るまで、その人的な関係の利がもたらされることがいわれます。

     前記企画などもそうですが、近年の傾向としては、会派関係者からは、前記人事関連での会派批判を意識してか、現在の弁護士増員政策との絡みで、法律事務所のOJTが危ぶまれたりしているなか、会派を介した人間関係、先輩とのつながりのための場としての効用を強調する声も聞かれます。若手の会派離れが、各会派とも課題となっていることもあります。

     しかし、こうした形でこれまでの会派の性格が変わり、新時代へ「再定義」されているという方向にあるというわけでは残念ながらありません。今回の日弁連会長選挙をめぐっても、多くの会員から聞こえてくるのは、会派という存在への驚きと疑問の声です。

     実は、弁護士会の取材を始めた30年以上前から、選挙でこうした声を聞かなかった年はありません。地方の弁護士会の人間には、本当にこの会派という派閥の存在が、強力な結束で集票機能を果たす現実を理解できず、異様なものとして受け止めている方も少なくないのです。まるで政策や主張とは無関係に、作用しているように見えるその関係は、選挙では、非会派候補には大きな壁であるのはもちろん、会派候補同士の戦いにおいては、まず、押さえなければならない定石として存在し続けているのです。

     これが弁護士にとって、ふさわしい形なのかどうか――残念ながら、こうした問いかけが、大都市弁護士会のこの体質を変えるという状況には、至っていないのが現実です。


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     ご教示ありがとうございました。
     今後ともよろしくお願い致します。

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    昨年、東弁の「LIBRA」でも同種の特集が組まれていましたよ。ご参考まで。

    http://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2011_02/p02-17.pdf

    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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