日弁連会長選2期連続再投票の行方

     次期日弁連会長選挙の再投票が決まりました(平成24年度・同25年度 日弁連会長選挙 仮集計途中経過報告) 。7985票でトップの山岸憲司候補と、6608票で現職の宇都宮健児候補、上位2人で争われることになります。

      総得票数とともに当選条件となっている、全国52弁護士会の3分の1以上の会(18会)での最多票というハードルをトップの山岸候補が越えられなかったことによるものです。総得票数で2位の宇都宮候補は37会で最多票を獲得したのに対し、総得票数でトップの山岸候補は12会にとどまっています。

     実は、ここまでの展開は予想されていた弁護士会員も多かったと思います。日弁連会長選挙史上、初の再投票にもつれ込んだ2010年の前回選挙で示された地方会と大都市会会員の意識の格差、大都市会に存在する派閥の影響、さらには今回の4氏出馬、しかも前回選挙の再投票で劇的な勝利を収めた宇都宮候補が今回も出馬しているという状況のなかで、またしても大都市会で票を集めた得票トップ候補が、前記3分の1会最多票のハードルをクリアできないのではないか、という想像はできなくなかったからです。

     確かに現実はそうなりました。前回選挙の再来という評価が早くも聞こえてきています。ただ、今回の結果について、前記のことを想定した人にとっても、おそらく予想外の点があります。それは、「改革」を主導してきた旧主流派候補の善戦ぶりです。

     前回2010年選挙では、旧主流派で派閥をバックにした山本剛嗣候補と宇都宮候補の一騎打ちでしたが、第1回目の選挙では970票差でトップ当選した山本候補が東京三会、大阪など9会で最多票にとどまり、宇都宮候補は42会を制覇していました。この結果だけでも、今回旧主流派・派閥候補の山岸候補は、票差で次点の宇都宮候補を引き離し、会獲得でさらに条件の18会に6会と迫りました。

     ただ、それたけではありません。旧主流派分裂選挙になった今回(「日弁連会長選の分裂的様相」)、もう一人の旧主流派候補の尾崎純理氏に3318票が流れている現実です。単純に尾崎候補と山岸候補の獲得票を各弁護士会ごとにまとめた場合、宇都宮候補は最多票獲得会をさらに14会失い、旧主流派票としては、楽々3分の1要件をクリアしている形になります。

     このことは、来る3月14日に行われる再投票の行方を占ううえで、当然、宇都宮陣営にとって、前回よりも厳しく受け止めなければならない結果というべきです。もちろん、尾崎候補獲得票がそのまま再投票で旧主流派票として山岸候補に流れるとはいえませんが、少なくともこの票の流れによっては、前回のように再投票でも、およそ旧主流派の3分の1要件クリアは困難といった見通しにはならないということです。

     今回の投票率は62.3%と、過去16年9回の選挙で最低だった前回第1回目63.9%をさらに下回るものでした。前回再投票では投票率が1回目を下回り、63.2%になりながら、宇都宮候補が1436票差をつけて総得票で逆転、会獲得も46会と伸ばしました。投票率が下がった再投票でのこの結果は、1回目の地方会のはっきりした反応に、前記条件を含めて旧主流派は勝ち切れないとみた「諦め組」と、勝ち切れるとみて新たに投票行動に出た新参加組がいた、とみることもできます。

     宇都宮候補側からすれば、前回の勝ちパターンに持ち込みたいところですが、予断を許さない状況だと思います。第4の候補、森川文人氏も1805票を獲得しています。純然たる反「改革」の立場からの出馬であり、陣営は選挙期間中は旧主流派2候補と宇都宮候補を同一視して、3対1の構図で批判的な論調を展開していました。そうしたことから支持層には、2回目は棄権という選択肢をとる有権者会員も多数いそうですが、何としてでも旧主流派に「政権」を渡せないとの判断での次善の策として、宇都宮候補支持に回る会員もいるとの見方があります。宇都宮候補陣営としては、この反「改革」派と「新参加」組のなかの、旧主流派「政権」阻止票にも期待したいところだと思います。

     もっとも、再投票でも総得票数と最多票獲得会条件のねじれが解消されず、その場合の初の再選挙という可能性も、前回より高い状況にあることも確かです。

     さて、このねじれによる、2期連続の会長選再投票という現実は、少なくとも二つのことを浮き彫りにしています。一つは、前記したように、前回同様、この選挙結果を見る限り、「改革」が生み出した弁護士めぐる状況のなかで、日弁連、さらに弁護士の今後について、大きな意識格差が存在し、それが解消する方向に向かっていないこと。そして、もう一つは、この選挙が現会長への信任投票的性格を帯びた日弁連会長選挙でもあったことからみると、現会長と執行部が、いかに厳しい支持基盤のうえに立っているかということです。

     このことは、日弁連という組織と弁護士の将来を考えるときに、今、直視しなければならない現実のように思います。


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    弁護士間の意識格差が出てきたことは、ある意味当然であるし、これまでそれが明確化されていなかったことのほうが、異常であるともいえます。
    つまり、一定規模の集団の意識が同一のベクトルに向いている状態のほうが、異常であって、十人十色というように、意識がばらばらになっていることを認めつつ、集団における意思統一を図る訓練が、弁護士会には必要に思えます。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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