司法試験「受験回数制限」が想定した前提

     いまや「悪名高い」という表現がふさわしくなってきている法科大学院修了後、5年以内3回という新司法試験の受験回数制限ですが、この制度の必要性と許容性が、1月27日開催の「法曹の養成に関するフォーラム」第7回会議の配布資料の中で、述べられています(「新司法試験と予備試験の結果について」)。

     必要性については、大略以下のようなことが書かれています。

     ① 旧司法試験では受験競争の激化、合格率の低下で受験生の受験技術優先の傾向が顕著になり、法曹の質を確保に重大な問題が生じていることと、多数の「司法試験浪人」による社会的損失の弊害が指摘された。
     ② そこでその防止策として、合理的な範囲内での受験回数制限の必要が考えられた。
     ③ 具体的には、法科大学院での教育効果が薄れないうちに司法試験を受験させることと、受験生滞留で新たな受験戦争が始まることを回避し、本人に早期に転進を促して、法学専門教育を受けた者を法曹以外の職業で活用するよう、制限設置が必要とされた。

     注目しければならないのは、修了後5年という期間の根拠が、法科大学院教育の効果測定を考えたとき、5年を過ぎると、効果が薄れてしまうというとらえ方があったこと、そして早期に転進を促すという根拠には、「法学専門教育を受けた者を法曹以外での職業で活用する」ということが念頭にあったことです。

     前段ついては、5年で薄れる教育を法科大学院が前提としているようなとらえ方もできますし、5年経過後に合格した場合、それはもはや法科大学院修了後の成果になるとしているというとらえ方もできます。そして後段については、「活用される」ことを前提としているわけですから、いわゆる「三振」対策というものが社会的に整備されていない以上、この前提は崩れることになります。

     つまり、ここに書かれていることを見る限り、受験回数制限の必要性は、前提において成り立っていないのではないか、という疑問を持ちます。

     続く許容性については、こう書かれています。

     ① 法科大学院修了者の相当程度が司法試験に合格すれば、回数制限が不当に法曹資格取得への途を狭めることにはならないと考えられた。
     ② 予備試験による再チャレンジ可能。

     いうまでもなく、修了者の司法試験合格率は3割を切り、「相当程度」という状況ではありませんし、予備試験については「チャレンジ可能」といっても、少なくとも現在は、受験制限を許容できるほど、門が開かれる状況にはありません(「第1回『予備試験』結果の受け止め方」)。

     要するここに書かれている受験回数制限の許容性も、当初、考えられた形としては成り立っていないことが示されているというべきです。

     この受験回数制限については、「司法ウオッチ」の「司法ご意見板」に、法科大学院修了生とみられる、こんな書き込みもありました。

     「法科大学院で得られる学位の価値が、受験回数制限により、実質上5年間の有効期限ものとなっている。つまり5年経過すれば、価値はゼロである。そんな有効期限付きの『学位』は他に存在しない。たとえ卒後に即就職をしたとしても、後に受験資格保持者として職歴にも生かせるよう、卒業後はいつでも受験できるようにすべきである」

     有効期限5年の学位という受け止め方は、逆にいえば、受験資格が切れた法科大学院修了の学位には、全く価値を見出していないということになります。就職先でも、有効となるのは、制度起案者が想定しているような、法学専門教育を受けた能力の活用ではなく、むしろ受験資格保持者という立場が維持されていることだといっているのです。

     受験機会が奪ってまで固執するほどの、必要性も許容性も、もはやこの受験制限には見い出せない現実があるというべきです。


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    法科大学院教育の前提としては、極端な言い方をすると、
    「仮に三振しても、法科大学院における高度な教育をもってすれば、社会のどこかでは活躍できる」というものです。

    しかし、現実には、法学部の延長でしかない授業も少なくなく(もちろん法科大学院によって違うのでしょうが。違うこと自体が問題ですが)、教育自体には、法曹になったとしても、値段に相応した価値まではないといってよいでしょう。
    法曹にならなければ、社会の受け皿がないことを考えれば、本当に無価値でしかありません。

    法科大学院を賛美する人は、2年ないし3年間、授業を受けてみたらいいと思います(とくに、合格率が全国平均を下回る法科大学院で)。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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