遮断されている「改革」疑問視の論調

     最近、いくつかの経済誌の記者・編集者の取材を受けたり、お話しをする機会があって、少々驚くことがありました。それは、司法改革に対する考え方です。こちらが想像している以上に、今回の「改革」に対する疑問の声を聞くからです。

     経済誌のスタンスとしては、弁護士が経済的に困窮したり、就職難になったりなど業界に「異変」が生じていること、それと関係して法科大学院も壁にぶつかっているなどの現状に注目しながらも、企業サイドでの弁護士の必要性、とりわけ国際競争力の必要性を強調し、高度な人材育成に迫られているなどとして、結論として、増員基調の「改革」路線そのものには肯定的な内容が目立ちます。企業系の弁護士を登場させ、そうした必要論を語らせたり、今の流れを前提にして生き残り、勝ち残りの戦略を語らせるものもありました。

     2009年2010年に何誌かで特集が組まれ、最近、また、そうした動きにあるようですが、経済界からの要請や読者層を意識して、当然、前記したスタンスが想像できるのですが、意外なことに個々の現場の記者の問題意識はちょっと違います。10年前の「改革」構想の無理、ずさんさを直視した、完全な仕切り直しの必要性や、企業に偏ったニーズ論、有償・無償の区別がないニーズ論が、弁護士全体を極端に増やすことにつなげた根本的な間違いを非常によく理解している感じがするのです。

     もっともこうした現象は、以前にも書きましたように日刊紙の記者にもあることです(「本当に『原点に帰る』ということ」)。だからといって、経済誌のスタンスとしては前記のようであったり、全国紙の論調も、一貫して「路線」の上に乗った旗振りであったりして、はっきりと記者たちの問題意識とは乖離があるようにみえます。まあ、なぜ、そうしたことになるかといえば、どこかの人気映画ではありませんが、推進論調は「現場で作られているのではない、会議室で作られているんだ」ということになるのもしれません。

     一方、弁護士激増への慎重論について、最近、弁護士からよく、「これを自己保身として片付けられないで、一般に耳を貸してもらうにはどうすればいいか」といったことを尋ねられます。弁護士が経済的に追い込まれて余裕がなくなること、その結果どうなるのか、ということは、自らの存立の問題を越えて社会的な影響があることであっても、それを弁護士の口から言えば、即自己保身ということになる、というわけです。

     そこには、大マスコミの論調が作った結果である、うっすらと広がった世論傾向というものもあります。しかし、前記してきたような事実に基づけば、そうした論調とそれに基づく傾向は、現場の実態とそれに接した記者たちの問題意識とは別のものということにもなります。現実が遮断され、いわば改変された、バイアスのかかった論調が広められ、世論に反映していることになります。

     前記経済誌の記者の口からも「改革」の失敗、あるいはそれを直視することの意味、という言葉が聞かれました。「改革」構想の破綻がはっきりし、それをどこまで直視して10年前の議論の時点に立ち返って考えられるのかが、今、問われているなか、こうした遮断された状況もまた、どこかで突破していかなければならないと感じます。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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