現象としての「若手弁護士提言」

      現在、選挙戦に突入している日弁連次期会長選挙にぶつける格好で、若手弁護士有志が、今後日弁連が直ちに着手すべき政策を提言し、現在、ネット上でアンケートを実施しています(「今後の日弁連に対する若手弁護士有志からの提言」に対するアンケート)。

     世話人には旧60期の一人のほか、新61期~64期の計17人の弁護士が名前を連ねています。人的なつながりや経緯は分かりませんが、顔ぶれには民主党議員の政策秘書を務めていた方が数名おられます。法曹人口問題が注目されるなかで、日弁連のリーダーが選ばれるのだから、もっと日弁連のカバナンスの問題が検討されていい、という問題意識が彼らの提言の基本にあるようです。提言は5つで大略以下のような内容です。

     ① 日弁連の全支出内容の分析とその公開説明会の定期実施。
     ② 会員増による会費収入増の会費削減への反映。
     ③ 弁護士の活動領域拡大のための研修や業務インフラ提供等の施策実施
     ④ 日弁連会長選挙の被選挙権での10年間の登録期間要件の見直しなど日弁連の若手会員の参画担保。
     ⑤ 現行法科大学院制度を前提とした制度見直し、弁護士会の関与強化。

     一見して、「公開」と「参画」を若手会員が日弁連に迫っている点は、注目できるところです。彼らは日弁連の支出が、2000年度約27億円だったものが、2010度には約50億円と大幅に増加している現実、会員が増えながら会費が減額されない現実への会員の疑問を解消する方向を提案。返す刀で業務に直結した研修、事業拡大への重点戦略投資、事業インフラ支援等、日弁連が予算を割き、取り組むべき方向を打ち出しています。

     「参画」という意味では、日弁連会長選挙の被選挙権要件見直しまで若手が切り出したという意味において、画期的といっていいかもしれません。

     あえていえば、これもこの提言の特徴といっていいと思いますが、彼らがカバナンスと表現するように、ここまではすべて組織内部の、内向きの話です。日弁連が対外的にどうあるべき、ということではなく、会員のために何をすべきなのか、ということであり、このこと自体が、いわば日弁連執行部の現在の姿勢に対するアンチテーゼといえるかもしれません。外に向かい発言し、また予算を投入することに邁進しながら、その構成員から不満が出ている現実。いわば外ヅラよりも内ヅラをなんとかしろという声が出ている、強制加入団体である日弁連のこれが現実といっていいと思います。

     「参画」がいわれているのは、そうした状況下でも、こうした声を現実に反映させ、変えるのには、若手の参加がなければ不可能といっているようにもとれます。ここにも彼らの目に映った日弁連の現実があるように思えます。弁護士として経験を積み、組織を知る10年の意味も、彼らには希薄なものでしかないかもしれません。

     ただ、5番目だけが違います。彼らは、問題の主因を法科大学院乱立と合格率の低迷に位置付け、法科大学院制度の存続を支持し、日弁連にここだけはその方向での対外的なアクションを求めました。法科大学院側から聞こえてくる声とかぶります。少なくとも日弁連が、法科大学院本道主義にメスを入れたり、転換することには賛同していない姿勢に読めます。

     なぜ、彼らは、この一項を入れたのでしょうか。彼らは日弁連が司法審路線から外れるのは望んでいないようにもとれます。弁護士増員も含めて、対外的な対立路線へ日弁連のエネルギーが割かれることにも、反「改革」的スタンスが自己保身とられることにも、彼らは違和感があるのかもしれません。彼ら若手のほとんどが、新法曹養成制度によって法曹になったという意識があるかもしれないことを抜きにしても。

     この提言へのアンケートに弁護士がどう答え、どのくらい若手が賛同し、そしてまた現在出馬している会長候補者がこれにどのくらい耳を貸すのかは、全く分かりません。しかし、この提言そのものが、今の日弁連を象徴する一つの現象であることは間違いありません。


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    私の意見ですが(若手と中堅の間の弁護士です)

    ①は賛成。少し日弁連も肥大化しすぎ。自由競争にゆだねるのなら、もう少し公益事業は少なくても仕方がない(逆に公益性を重視するなら自由競争に歯止めをかけるべき)

    ②は①の検討の上で可能なら賛成。

    ③は総論賛成。ただし各論ではなんで若手に無償でノウハウを提供しなければならないのかが疑問。自由競争なら若手に無償でノウハウなんか提供しないと思いますけど。

    ④は賛成。自由に選挙で決めたほうが分かりやすい。

    ⑤は興ざめと言うのが本音。法科大学院制度が支障をきたしているのなら抜本的に是非(別に是なら是でよい)を検討するのが筋。結局のところ、法科大学院制度が崩壊すると20年後、「あの訳の分からなかった法科大学院時代の出身の人ね」となるのを恐れているように見える。
     なお、法科大学院→法曹人口一定確保なら自由競争性にやや親近性があるのだから③みたいにノウハウを提供してくれなどというべきではないと思います。親しい人を除けば同業はライバルなのだから。
     逆に若手をしっかり面倒見ると言う弁護士会を志向するなら、法曹養成・法曹人口は抜本的に改める必要性があると思います。
    というところでしょうか。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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