韓国の弁護士誇大広告被害

      韓国で弁護士の誇大広告で被害が出ている実態を1月19日付け朝鮮日報が報じています。誇大広告の被害というのは、弁護士がインターネット上の広告でうたう専門分野が、実は実態が伴っておらず、依頼者市民が実際会ってみると、何も分かっていない、ということのようです。「騙された」と。

     前記記事は、「依頼人たちは『専門分野が6-7分野にわたる』と誇大広告を出している弁護士に泣かされている」としています。大韓弁護士協会では2010年1月から「弁護士専門分野登録制度」を導入。弁護士は、刑事・民事・家事・不動産・金融・医療など49種類の専門分野のうち、最大2分野まで選び、登録することができるそうですが、常習的に誇大広告を繰り返す弁護士は、少なくとも3-4、多ければ10以上の分野を「専門」とうたっているそうです。同国の弁護士法には誇張・欠落広告を禁じる規定もあるようですが、現実には前記のようなことが横行しているわけです。

     なぜ、こうしたことが起きているのか。この記事「弁護士による誇大広告の被害相次ぐ」には、「市場飽和・競争激化が原因」というサブタイトルが付けられています。韓国の弁護士も現在激増政策の中にあり、2008年に8000人程度だった弁護士数は、現在12000人を突破しています。また、今月18日に終了した第41期の司法研修院生は、入隊者を除き、同日修了した就職対象の研修院生854人のうち、裁判官・検察官としての任官や法律事務所への就職が決まったのは349人(40.9%)で、過去最低の就職率とだったと報じています。

     状況はどこも同じという印象をもたれる方も少なくないと思います。この韓国の弁護士増員については、日本の先取りとも、日本の方がさらに増員ペースは急といった評価もされています。専門登録制度については、まさに先取りで、現在、日弁連でも検討されていますが、以前書きましたように、責任主体としての課題が言われています。また現状での「専門」表示についても、実際の能力と照らして、どこまで表示が許されるかについて、日本の弁護士の中には戸惑いもあります(「弁護士の『専門』アピールと『誤導』のおそれ」)。

     その意味では、前記した韓国での「被害」ということに照らせば、日本での弁護士の「専門」をめぐる議論や悩む弁護士の姿は、むしろ依頼者市民にとっては、望ましい慎重さのようにも思えますし、韓国の現実は、やはり日本でのこの件に関する議論に大いに参考にされていいと思います。

     しかし、あえて言えば、それ以上に韓国の現実にみるべきものは、やはりその「被害」を与えかねない問題をいとも簡単に飛び越える結果となる「競争」の現実だと思います。
     
     一般的にサービス業と広告、ビジネスとしての競争ということを考えれば、顧客誘因のためのアピールの厳格性そのもののハードルが下がるのは、当然といえば当然です。それを弁護士ついても、顧客側の判断で淘汰が生じることを前提に規制しないとする考え方や、そこをまた自己責任とする考え方によって、競争そのものを阻害しないことを第一にとらえる見方をする人もいるもしません。しかし、こういう現象を素直にみれば、弁護士という仕事が広告において厳格な規制がなければ実害が生じること、あるいは別のサービス業と同一視できない厳格なハードルが必要となる仕事であることを示しているというべきです。

     そして、「市場飽和」的な状況から生み出される弁護士の競争がもたらす実害も、この例がはっきりと浮き彫りにしていると思えます。

     それしても、司法への国民参加にしても、弁護士の増員にしても、常日頃、あれほど「諸外国」「諸外国」といって、取り上げる推進論調の学者や大マスコミが、マイナス情報となると、途端に取り上げられない、推進に都合のいいことだけは、声高にピックアップしている感じは、どうしても否めません。私たちは、むしろこのアンフェアさを前提に考えていかなければなりません。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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