日弁連会長選の分裂的様相

     選挙戦に突入している次期日弁連会長選挙ですが、これまでにない分裂選挙の様相を呈しています。この状況については、花水木法律事務所のブログで、解説されていますので、是非ご覧になって頂ければと思います(「日弁連会長選挙の解説と予想」)。

     ある意味、今回ほど、有権者会員の票の流れが読みにくい選挙はなかったといってもいいかもしれません。日弁連会長選挙に4氏が出馬するのは最多ですが、過去に東京・大阪以外で、初の日弁連会長誕生した1986年の選挙があります。

     ただ、当時と情勢は全く違います。神戸弁護士会の北山六郎氏と、東京の派閥をバックにつけた児島平氏の事実上の一騎打ちで、地方会員である北山氏が、そうした従来からの選挙スタイルで臨んだ児島氏を約1000票差で破ったことが注目されました。ただ、現実的な北山氏の勝因をいえば、東京の派閥が児島氏支持で割れたこと、大阪弁から出馬がなく近畿ブロックが北山氏で固まったこと、つまり実質大阪弁から出たのと同じポジションに北山氏がつけられたこと、革新系の弁護士ネットが北山氏を支持したこと、などが挙げられます。

     したがって、確かにこの選挙は日弁連会長選挙史に残る結果ではありますが、この選挙自体は、やはり派閥選挙や東京・大阪の持ち回りといった日弁連会長選挙の体質を根本的に崩したとまではいえないものだったというべきです。

     それに比べて、今回の選挙については、明らかに弁護士会の地殻変動を感じます。話題の一つは、現職の宇都宮健児会長の再出馬です。これは既に書いたように、日弁連会長選挙史上初めて、前会長任期2年の評価が選挙の争点の一つになる、信任投票的性格が加味される形になることを意味します(「宇都宮日弁連会長の『ミラクル』」)。ここに有権者弁護士がどう審判を下すか、ということがあります。

     ただ、実はそのことよりも、地殻変動という意味で注目しなければいけないのは、前記花水木法律事務所のブロクでも解説していますが、尾崎純理弁護士と山岸憲司弁護士という、日弁連「改革」路線を牽引してきた、いわゆる旧主流派といわれる勢力が分裂したということです。

     前記ブログでは、尾崎候補側を「左翼系」、山岸候補側を「ビジネス系」とくくっています。日弁連の「改革」路線は、この共闘路線だったとみることができます。と同時に、日弁連が掲げる「市民のための改革」という旗のもとで、実は規制緩和的色彩や経済界からの要求が強く反映したこの「改革」を弁護士会が受け入れた、その背景がここにあったとみることもできれば、この形がまた、この「改革」の同床異夢的性格を象徴しているということもできると思います。

     この分裂の引き金になったのは、前回の選挙での宇都宮弁護士の当選にあるとみるべきかもしれません。それまでの「改革」対反「改革」という図式の選挙に、「市民のための改革」という視点に立ちながらも、「路線」修正の立場で、かつ政府との緊張感という意味では、「オールジャパン」路線とも決別する勢力が立ちあがったとみることもできるからです。彼は、どちらかといえば「改革」、どちらかといえば反「改革」という、双方の不満層ともいえる人たちの受け皿になったようにみえます。

     その意味で考えれば、これに対抗するということを考えたとき、この状況での前記共闘を継続していれば、一番色分けとしての立場が分かりにくくなる不利が出てくるのは、尾崎陣営ととらえることもできます。「若手」支援や参画を強調する尾崎候補の主張を見ても、共闘を解消し、むしろ宇都宮期待層の取り込みを視野に、直接対決を選択した観があります。

     もう一人の候補者、森川文人弁護士は、純然たる反「改革」派であり、前記三者との違いは鮮明です。前々回の選挙まで5度にわたり出馬し、票を伸ばしてきた高山俊吉弁護士の陣営からの出馬です。司法試験合格年1500人への減員を掲げる三候補に対し、500人以下を主張しています。原発についても、一番はっきりと再稼働阻止・廃止を日弁連として掲げるべき、という立場です。

     有り体に言えば、今回の選挙は、票の流れ・割れ方が、これまで以上に読めない選挙ということになるかと思います。注目ポイントは以下のようになります。

     ① 宇都宮氏は信任票をどこまで獲得するか。
     ② 宇都宮氏失望票(前回投票者のうち)の受け皿がどこになるか(第一に直接対決を意識した尾崎氏に流れるか、より反「改革」に期待し、森川氏に流れるか)。
     ③ 旧主流派票の割れ方が、どうなるのか(二候補の票の食いあい)。

     もちろん上記いずれにして、若手と地方票の行方は焦点になります。山岸陣営も前回選挙での旧主流派の地方での敗北の轍を踏むまいと、早くから総力を挙げて、その点での巻き返しを図ってきたようです。若手・地方の期待度が、宇都宮氏2年の評価と絡んで、どちらの方向に大きく触れることになるのか、予断を許さない情勢です。

     いずれにしても、26年ぶりの4氏激突の選挙は、今後の日弁連の展開に大きくかかわることになりそうです。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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