日弁連・弁護士会批判の不思議

     弁護士界外の人と話していて、かねがね不思議に思うことですが、どうも弁護士増員という話になると、日弁連・弁護士会がこれに反対しているとする批判に出会います。大マスコミの論調にも、そういったニュアンスが見てとれます。しかし、このことに、首をかしげている弁護士は少なくないと思います。

     いうまでもないことですが、これまでの日弁連の「改革」主導派は、完全に増員派で、基本的に日弁連・弁護士会は、その路線を走ってきたからです。会員のなかには、これに批判的な人もいましたし、また執行部も、この数年は、増員のペースダウンを言ってはいますが、これまで増員路線の旗は下ろしていません。もっといってしまえば、今回の「改革」路線の基本となった10年前の司法制度改革審議会で、委員の中からも実現可能性を疑問視する見方があった、司法試験合格者年3000人方針を強力に後押しし、方針として決定させたのは、ほかならない弁護士委員と日弁連側です。

     以前にも書きましたが、それでも日弁連の前執行部が、2008年に増員ペースダウンを求める緊急提言を行うと、当時の町村信孝官房長官も、「見識を疑う」「司法制度改革に携わってきた立場をかなぐり捨てて」と、厳しく批判しました(「『改革』の反省と『市民目線』という描き方」)。

     当時の宮崎誠・日弁連会長もさすがに「改革を後退させるつもりはない」と会見で反論したそうですが、「改革」主導派の執行部としては、増員派としての見識を疑われるのは、それは不本意だったろうとも思えるくらいです。ただ、当時の町村官房長官の調子を見ても、ペースダウンを批判したとはいえ、日弁連執行部が増員路線を堅持していることを「評価」しているとは、とても思えないものでした。

     この日弁連=増員反対という、ある種の「誤解」ともいえる決めつけは、大きく二つのことが原因で起きているように思います。一つは、弁護士は絶対に自己保身・既得権益保護から、弁護士の増員には反対するはずだ、という強いイメージがあること、もしくは作られていること、もう一つは、日弁連という組織が、ほとんど一枚岩であるという思い込みがあること、です。

     そのために、既得権益保護を組織挙げて実践している、と即座に結びつけがちなのです。しかし、いうまでもありませんが、日弁連は一枚岩でもなく、増員反対に一丸となってきたわけでもなければ、多くの会員の声を必ずしも公平に吸い上げてきたわけでもありません。

     最近も、この疑問について、ある弁護士のブログ(「ニガクリタケは偶に生えます」) で取り上げられていました。ブログ氏は、現在の状況に非常に興味深い分析を加えていますが、そのなかでこの「誤解」に関連して、こんな記述があります。

     「元来、日弁連執行部、つまり日弁連としては、弁護士激増に賛成してきていたのです。1500名維持についても、シブシブ感を漂わせているのが見て取れると思います。そうだとすると、上記の弁護士を批判する人たちは、むしろ、日弁連(つまり日弁連執行部)を応援して、弁護士激増に批判的な一般の会員弁護士をこそ批判しなければいけないはずなのに、なぜか、日弁連を一生懸命批判している・・・。このギャップはなんなんだろう・・・」
     「つまり、弁護士嫌いの人から見ると、『彼らの言う』人権人権といっている左派系弁護士というのは、弁護士激増に批判的であるのが当然・・・というか、彼らにとってもこれが筋だと感じているからなんでしょう。だから、彼らの思う弁護士会=左派というのは、弁護士激増に反対していてしかるべきという想いがあるのでしょう。実際、普通に考えれば、市場原理に基づく弁護士激増の行く先には弁護士会強制加入の廃止がありますからね」
     「ところが、いわゆる左派系弁護士嫌いの人の『弁護士を甘やかすな、弁護士をもっと増やせ』と、そのいわゆる左派系弁護士の『弁護士が食えないからと言って、社会奉仕ができないなどと言うな。法の支配を隅々まで行き渡らせるために弁護士をもっと増やせ』。奇妙な結論の一致があるのです」

     ブログ氏も指摘していますが、弁護士のなかにも新自由主義的な弁護士の方もいますから、その方が言うのであれば、ある意味、矛盾がない話です。ところが日弁連の「改革」路線は、それとは表向き一線を画そうとする「市民のための改革」を目指してきたものです。

     ブログ氏は、この「奇妙な結論の一致」を「現行司法改革の摩訶不思議、魑魅魍魎さ」とくくっていますが、まさにこれこそ、この「改革」が同床異夢の改革であることを示すものといえます。「誤解」と「ねじれ」をはらんだ日弁連の「改革」路線をどこかの時点で、弁護士会員自らが仕切り直すことが必要になってきているように思えます。


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    それは反対派の情報発信力が強くて目立つからでしょうね
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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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