「弁護士議員」の存在感

     国会議員のなかに、弁護士資格を持っている方がいるのは、みなさんもご存知かと思います。ちなみに昨年7月の参院選終了時点で、弁護士資格を有する国会議員は、衆院20人、参院11人の合わせて31人います。

     それがどうした、という方もいらっしゃるかと思います。実は、ある意味、そこが今回のテーマです。

     一般的に弁護士が国会議員になる意味は、法律に精通した弁護士が立法に携わることの意義です。法律実務家として法律の運用に当っている弁護士は、どういう法律がどのような形でこの国に存在するのが望ましいのか、当然、分かっていていい存在となります。依頼者としての市民と接することで、より大衆の意をくみやすいポジションという人もいるかもしれません。

     だけども、言ってはなんですが、今の弁護士議員のなかに、そういう意味での「弁護士」としての存在感を感じる人は、ほとんどいません。弁護士議員が、その肩書を口にするのは、選挙に立候補するときと、議員活動のなかで、ここは法律家ということを強調したいときに、箪笥から引っ張り出してきたように、取って付けていうときだけです。

     その都度、大衆は、「へーこの人、弁護士なんだ」と思い、やがて時ともに、そのことを忘れてしまう人も沢山いるでしょう。ゆえに、国会議員に何人弁護士がいても、「それが何か?」というリアクションにもなるのも、ある意味、うなづける話ではあります。

     弁護士界には、国会議員なる弁護士は、特殊な人だという見方がないわけではありませんでした。かつて、ある著名な国会議員が弁護士会館で、弁護士を前に講演したとき、こんなことを言っていたことを覚えています。

     「みなさんの中で、国会議員におなりになりたい方がいらっしゃるのならば、ますは弁護士が板についてしまう前に、政界入りすることをお勧めします」

     この人は与党の政治家でしたが、これはどういう意味で言ったかといえば、国会での議論は、会議の前の根回しが重要で、あるいはその時点で大方決着している場合もあるのだが、弁護士はそれがよく分かっておらず、会議の本番でなんとかなると考えてしまう、と。要するに、ニュアンスとしては、公明正大な弁護士スタイルは、政治家には不向きだから、来るならば弁護士に染まる前にいらっしゃい、ということです。

     当時でも、野党の弁護士議員だったならば、同じようなことを言ったどうかは疑問ですが、弁護士スタイルに染まる前に来い、ということになると、同時に弁護士としての経験を生かすということとは矛盾するような形にもとれます。法律を勉強してきた国会議員というくくりにはなるかもしれませんが。

     ただ、現在は既に、前記講演の与党弁護士議員の懸念はほとんどいらないと言っていいでしょう。弁護士議員は、別に出身がどこであったか分からないくらいに、ある意味、どっぷり国会議員ですから。

     弁護士界にも、日本弁護士連合会の外郭団体として、日本弁護士政治連盟という政治団体があります。弁護士会が政策提案を国会に反映し、実現させるために、国会に弁護士を送り、また応援するための団体です。かつて弁護士議員はむしろ野党政治家としての存在感が大きく、永田町では弁護士会=革新系団体ととらえる政治家も多くいたので、弁護士議員がそういうカラーでとらえられる面もなくはなかったのですが、いまやほとんどなくなりました。55年体制の崩壊とともに、弁護士会も弁護士議員も様変わりした面もあります。

     いずれにしても、「弁護士議員」のなかの、「弁護士」的要素というのは、大衆からすると、よく伝わってきません。もし、国会議員やその候補者が、自分を飾るための肩書の一つとして、「弁護士」を掲げただけだとしても、少なくとも、そこに前記した何かを期待して託した有権者については、場合によって裏切っていることにもなります。

     もっとも、「弁護士」だといわれても、もともとそれは有権者の判断材料になっていないし、そこに期待するものは何もない、ということだとすれば、それはそれで、この社会での「弁護士」という仕事の存在感の程度を示していることになりますが。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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