日弁連会長選の環境変化

     弁護士会内の取材や、原稿依頼で、このくらいの時期から2月末くらいにかけて、弁護士から良く聞いたセリフがあります。

     「今、選挙の時期だから」

     「だから」何だというのかというと、発言や原稿の内容に気をつけなければいけない、あるいはそれらを今は控えたい、という話です。こう言っても、ぴんとこない方もいらっしゃると思いますが、要は弁護士会の役員選挙の候補者あるいは候補予定者にかかわる内容は差し障るから、という気遣いなのです。

     どうしてこういうことを言うかといえば、この内容が特定の候補・候補予定者を批判したり、逆に応援したりといった選挙活動ととられたり、また、それを指摘されるのを、敬遠してのことではあります。そうとられることを極力望んでいないというわけです。

     もっとも正当な批判ならばいいではないか、ということもありますし、現にそれもなくはありませんでしたが、弁護士会の中でそうしたものの方が少なかったような印象を持っています。敬遠意識には、やはり選挙というテーマが、弁護士会内では、一般の人が想像する以上に、「うるさい」テーマであり、かつデリケートで、場合によってはしこりも残る、「取り扱い注意」の存在であるところが関係していたのです。

     弁護士の選挙では、普段とは違う弁護士たちを見ることになりました。連日、選対事務所に赴き、熱心に電話攻勢をする姿や、選挙情勢に目の色を変えて向き合っている姿は、やはり、弁護士にとっての、このテーマの特殊性を感じさせます。そこには本当に弁護士・弁護士会の将来を憂えて立ち上がっている方々もいれば、そこはいろいろな「大人の事情」が絡んでの方もいるようです。

     さて、最近の日弁連会長選挙をめぐる弁護士を見て、大きく変わったと感じることが、一つあります。それは、インターネットでの論評です。つまり、弁護士個人がブログなどで、候補予定者の発言や姿勢を取り上げ、時に厳しく論評するものを目にすることになったということです。

     日弁連会長選の選挙戦では、実はその前哨戦として、立候補予定者が、「有志の会」を立ち上げ、自らの日弁連に対する問題意識、今後の政策に対する基本的な考え方を提示するのが慣例化しています。選挙運動ではないという名目の、、選挙を十分意識した活動であり、時に、賛同者という形での勢力アピールもあったりします。

     もともとこうした形はあったにもかかわらず、前記したように、この動きに対して、前哨戦から少なくともオープンな形で、批判を含めた論評が弁護士間で行われていたかと言えば、そうでもなかったという印象です。多くの会員は、この時点で、一方的な候補予定者のアピールを目にするだけだったようにも思います。

     いまやその「会」側もネット上で多くの会員やさらに一般市民に見える形で主張を掲げていますが、それに対する弁護士の論評もまた、ネットで堂々と展開される時代になってきた、というわけです。

     そのなかには、かつてならば考えられない辛辣な批判、立候補する前からもはや「不適格」とするものまで見られます。こうしたものに、眉をしかめていらっしゃる弁護士の方もいるとは思いますが、ある意味、候補者・候補予定者側もこうしたものにさらされ、さらに、それを乗り越えていかなければならない時代になっているということのように思えます。

     もちろんインターネットの普及、会員数の増加、さらに若手人数の比重増大といった要因が、こうした変化を後押ししたことはいうまでもありません。会員が誰でも発信できて、そして誰でもいつでも見られるという環境とそれに伴う会員の意識変化が、弁護士会の選挙をはじめ世論形成に劇的な影響を与える可能性が今後、さらに高まるように思います。

     「今、選挙の時期だから」。遠慮しがちな、こんな言い方も、近い将来、聞くことがなくなるのかもしれません。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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