日弁連会長選挙に見るパターン

     「勝負は時の運」といいますが、選挙にもまた、そうであると思えることが、日弁連・弁護士会の会長選挙を見てきても、度々ありました。当選する人、落選する人の差は、やはりと、うなずかせるものばかりではありません。

     弁護士会の選挙では、単独出馬の無風ということもありますから、本来は、決して弁護士会で票を集められない存在ではない人が、その年、たまたま強い出馬の意向を持つ人とぶつかって、選挙になってしまうとか、ぶつかった相手が悪すぎたととれる場合も少なくはありません。

     かつて東京の弁護士会から日弁連会長に当選した、ある弁護士は、会内で「彼の選挙戦は10年前から始まっていた」といわれていたのを覚えています。その彼を見て来て、確かにその10年くらい前から、「彼はいつか会長にのぼりつめる」といわれていた数少ない方の一人でした。ご自身も十分にそれを意識され、その準備を地道にされてきたのだと思いますが、ある意味、最も確実に勝ち切れる年をにらみ、そのタイミングを見計らっていたともとれなくありません。彼は、見事、強力な対立候補とぶつかることなく、楽勝で当選を果たしました。

     もちろん、そうした候補も、やはり選挙ですから、それなりの会員の認知と了解ともいうべきものがなければ、当選は難しくなります。プラスポイントというよりも、むしろ極端なマイナスポイントがないことが大事です。どういうことかといえば、先行して出馬の意向を示していた候補者を、どうしても会長にさせたくないという強い意向が会内にあれば、必ず対立候補が擁立されてくるからです。

     時々ありますが、往々にしてこれは、先行候補の負けパターンです。先行候補が決定的に会内世論をつかみきれていない現れでもあると同時に、後発候補の擁立は、それなりに勝ち切れる見通しの人間を立ててくる、逆に言えば、そういう候補でなければ、後発では立ててこないからです。先行2候補の一騎打ちかと思いきや、第3の候補が勝利を手にするパターンもありました。

     以前書きましたように、東京には会派と呼ばれる派閥があり、それなりの所帯の大きさがありますから、時に、同一会派から手が挙がることもあるわけですが、調整が難航すれば、「参考投票」などといって、会派内で事前の人気投票をやり、勝ち切れない立候補希望者には、それとなくご理解頂くような形もあったりしました。

     しかし、こうしたある意味、運も含めて、外から敗戦理由がはっきりする場合ばかりではない、「なぜ、この人が当選しないのか」と釈然としないこともあります。そして、そのケースの多くは会派が絡んだ、弁護士会内の「政治力学」ともいうべきものが被った部分のように思えるのです。

     もちろん駆け引きともいえるものもあります。対立候補予定者で、ともに当選が確実に見込めない状況、もしくは両者の票の食い合いが共倒れとなる危険が考えられる場合などで行われるのは、一方の出馬断念・応援と引き換えにした、次期立候補の時の協力のお約束、いわゆる「指定席」というものです。

     しかし、弁護士同士のお約束でも、現実的にはこれほど当てにならない話はありません。単位弁護士会なら1年先、日弁連会長なら2年先の話ですから、「鬼が笑う」なんてもんじゃありません。どういう展開で、どんな新たな候補が登場するかも分からない選挙の話ですから、このお約束の話は、案の定というくらい空手形に終わる場合を多くみることになります。

     もう一つは、「にわか仕立て」といわれるものです。

     「あの人、そんなに『人権派』だったっけ」

     かつて出馬した日弁連会長候補者の演説や選挙公報をみて、嘲笑的にこんな陰口を言い合う会員の声を聞くことがありました。およそそれまでの彼の弁護士活動からは、それほど強調されていなかった人権問題などを、選挙になって、突然、自分のカラ―のように打ち出してきている候補者の姿に対して言われたもので、「にわか人権派」などと言う人もいました。

     もちろん候補者側からすれば、とにかく日弁連会務に幅広く目配りがきくことのアピールであると同時に、日弁連内でかっちり固まっていた人権派や革新系のグループを敵に回しては、とても勝ち切れないという読みもあってのことでした。

     ただ、一面、「にわか仕立て」に結局、期待して、当選後、もののみごとに裏切られるということも、実は起こります。つまり、今度は、有権者会員側が空手形の被害を受けるパターンです。およそイメージからすれば、弁護士のような仕事をしている人間たちの選挙で、なぜ、そんなことが起こるのかと思われるかもしれませんが、そこはやはり国政と同じ選挙は選挙。やはり魔物が棲んでいるというべきなのか、弁護士も人の子というべきか。

     さて、乱戦も予想される日弁連会長選挙が近づいています。有権者会員弁護士の方には、おかしな「政治力学」にも、「にわか仕立て」にも、十分に目を光らせて投票に臨まれることをお勧めします。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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