日弁連、合格「1500人」提言への動き

     日弁連の法曹人口政策会議が、司法試験の年間合格者数について、現状の約2000人を1500人に減員するよう求める提言案をまとめたことが話題になっています。日弁連が正式に発表したのではありませんが、既に会員間で情報は広がっていますし、ブロクなどでも言及している人もいます。一部マスコミも報じています。

     話題の中心は、一つには日弁連の内部で、ついに3000への増員を目指す政府方針に対し、具体的な削減案を提示する方向が出てきたことにありますが、さらに、合格者をまず1500人程度にまで減員し、さらなる減員は法曹養成制度の成熟度などを検証しつつ対処すべきとしているところです。検証しつつ、「さらなる増員」ではなく、「さらなる減員」という方向が出されているところがミソです。

     また、「さらなる減員」のための検証項目として、就職難の解消の程度、二回試験の不合格者(2005年以前の水準に戻っているかどうか)、法科大学院の選抜・養成機能の向上(修了者の法的知識・応用能力の全体的水準が司法試験の合格水準に近づいてきたといえるか)、司法修習(法科大学院での実務導入教育と、実務修習との連携が不十分であることによる問題点が改善されたかどうか)、法曹志望者の減少傾向の歯止め――の5点を具体的に明示、そこには「質」の維持に対する姿勢もはっきり示されています。

     さらに、注目すべきところは、現在のように弁護士急増の影響の危険性をはっきりと次のように認めているところです。

     「増員目標値の前提となった需要予測が外れ、需給ギャップが生じているときに、既定の路線に従って弁護士人口の急増を続けるならば、一方では人の不幸の現場で事件漁りをするようないびつな需要の掘り起こしがはびこり、他方では熱心に公共性の実践に取り組む弁護士ほど淘汰の圧力にさらされて、司法制度の利用者である市民の権利保障に支障をきたす事態になりかねない」

     以前にも書きましたが、現日弁連会長の宇都宮健児氏は昨年の選挙で年1500人というラインを打ち出して当選を果たし、当初、会員の中には「1000人~1500人」のラインで政策を進めるという期待感までありましたが、1500人という数字はその後、はっきりと表に出なくなり、マスコミへの露出のなかでも、前執行部と同じ「増員ペースダウン」論しか言及しなくなっている現実もありました。

     その意味で、彼の任期中、彼が議長となる法曹人口政策会議でこうした方向がまとめられたことを、公約実現への一つの形を示したものとして歓迎する意見が会員間にあります。既に出馬の意向を示している次期会長選へもつながる成果ということにもなります。とりわけ、「さらなる減員」の可能性に言及したことで、既に各地の弁護士会で決議が採択され、弁護士間では多数になってきているとされる「1000人」あるいは「1000人未満」論者にも、一応飲める内容になっているともとれなくありません。

     ところで、この内容をすっぱ抜いた12月19日の毎日新聞朝刊の報道ついて、坂野真一弁護士が自身のブログで、増加ペースをできるだけ落としたくない(現状合格1000人でも1500人でも弁護士数そのものは増加するわけですが)推進派のリークがあった可能性を指摘しています。そこには前記選挙に向けた対立候補の思惑も登場してきます。

     ただ、坂野弁護士は法曹人口政策会議の提言案は、日弁連執行部に対して提言するもので、その後各単位会や、関係委員会への意見照会を経たうえで、日弁連理事会の承認を得て日弁連の提言として公表されるのが筋として、この段階でリークによって公開されたことも問題視しています。

     しかし、審議の経過そのものを報道する意義はあります。なぜなら、最終結論が違うものになったり、潰されたとしても、その過程で一定の方向が出ていたことを伝えられる意味もあるからです。したがって、日弁連の正式提言でないのならば、そのことをはっきり書き、これがどの段階の決定で、これからどのよう段階を経るのかについて触れたうえで、報道されるのであれば、それの方がいいとは思います。

     むしろ、この法曹人口政策会議の議事については、当初から会員にも一般にも公表しない方向の神経質な対応がとられてきました。なぜ、この議論が、「法曹の養成に関するフォーラム」のように公表されないのでしょうか。閉鎖的な議論の印象を与えるものになっています。

     坂野弁護士の指摘に被せれば、むしろそちらの方に、内部議論への外からの目線を気にされている方々の思惑を感じます。提言案の方向は、当然逆風も予想されます。それだけに、主張する覚悟ということを考えても、もはやそうした姿勢は、この提言にふさわしくないようにとれます。


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    さらなる減員って
    世の中どんどん悪くなる一方ですね・・。
    日本脱出も考えたほうがいいのだろうか・・。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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