弁護士志望者「2割未登録」報道の意味

     今年の司法修習修了者の弁護士志望者の内、約2割が弁護士登録をしなかったことを、12月16日の朝日新聞朝刊が1面に報じています。15日の一斉登録日に登録したのが1423人。二回試験合格者1991人から70人の検察官任官、裁判官任官は昨年並みの98人と推定し、21.9%に当たる400人が未登録という計算です。一斉登録日の未登録者は過去最高になります。

     さすがにこの現象の原因について、「朝日」も「就職難」を挙げています。

     「弁護士急増による『就職難』で弁護士会費などを払える見通しがたたず、登録できない志望者が多いとみられる」

     このニュースを1面で扱ったことからすれば、あくまで「改革」の旗を振り、弁護士会から聞こえてくる増員反対論の「心得違い」をなじってきた「朝日」が、この事態には放置できない深刻なものを読み取ったという風にとらえられなくはありません。

     ただ、それがどういう方向性をもったとらえ方なのかは、今後の報道も含めて、観察しなければなりませんし、まして「朝日」論調に異変ありとまでいうのは、いささか早計のように思えます。むしろ、この報道でじんわりと「朝日」チックな感じを出してきているのは、37面の関連記事の方のようにも見えるからです。

     「朝日」は一連の記事のなかで、「就職難」につながっているものとして弁護士会費に注目しています。

     「各地の弁護士会と日弁連に入るには計数万~数十万円の負担が必要で、毎月の会費も数万かかる。就職できない人が登録をためらうのは、定期収入が得られる見通しがたたなければ、こうしたお金を払うのが難しいからだ」

     取りあえず「会費」はなんとかしろ、という認識に立っているようにはとれなくありません。ただ、「朝日」がこの就職難の根本的な原因、つまりこの急増政策の妥当性、あるいはそれに見合うニーズがあるのかないのか、といったことには一切踏み込んでいません。

     それどころか、都内の事務所に就職が決まった30代の女性を登場させ、彼女の就職活動中の印象としてどこの事務所も「弁護士が増えすぎて仕事がない。だから新人を雇えない」と嘆いていたことを挙げたうえで、こんな彼女の言葉で記事を締めくくっています。

     「事務所を構えて顧客を待つこれまでのスタイルはもう限界。弁護士の側にも意識改革が必要だと思う」

     これを見る限り、「朝日」は宗旨替えはしていません。むしろ急増の妥当性、増員に見合うニーズの不存在という議論にはならないとする線を引き、改めてそこは弁護士の意識改革不足、努力不足をいいだけであります。逆に言えば、弁護士側の意識によって、まだこの事態がなんとかなるという認識につなげようとしているようにもとれます。

     30代女性新人弁護士の真意は分かりませんが、弁護士の努力をいう、「朝日」従来の「まだまだ」論におあつらえ向きのコメントを抜いている感じがしてしまいます。

     そもそもこの1面の記事にしても、弁護士未登録者数=就職できない人の人数ではなく、就職先がなくても「ノキ弁」「即独」は弁護士登録していることを考えれば、就職できない人は彼らを含めて500人を優に超えるとして、この報道は、故意に就職難を少なく見積もろうとしているとする見方もあります(武本夕香子弁護士のブログ) 。

     しかし、「朝日」がどんなに小細工をしても、さすがに読者も弁護士の意識改革よりも、増員政策の無謀さ、その根拠性の有無に目がいくと思います。そして、何よりはっきりしているのは、「朝日」がどこまでそれを見越しているかは分かりませんが、こうした報道がまた、弁護士志望の断念もしくは敬遠の方向を後押しする効果を発揮するということです。
     

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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