ボス弁「感化力」の恐ろしさ

     弁護士が「即独」する時代に、法律事務所でのOJTが確保できないことが問題となると同時に、改めてこれまでのようなイソ弁時代という修養期間が果たしてきた役割も見直されつつあるようにも見えます。このイソ弁時代ということを考えた場合、非常に大きな影響があるのは、いうまでもなくボス弁の存在です。

     ボス弁がどういう人間で、どういうタイプの弁護士なのか、ということの問題です。ここでいうボス弁というのは、経営者弁護士、雇用者弁護士ではありますが、その意味よりも、新人弁護士が登録後、はじめて身近でその仕事を見て、あるいは影響を受ける存在としての意味が重要なポイントだということです。

     なぜ、そういうかといえば、いうまでもなく、良い意味でも悪い意味でもボス弁の感化力の大きさを感じることを、これまでも弁護士の口から度々聞くことがあったからです。

     以前にも書きましたか、ボス弁とイソ弁の関係は様変わりし、かつてのように実務にとどまらず、弁護士道から人生観まで影響を与えるような師弟関係はなくなり、トレーナや単なる上司との関係になりつつあるように思えます(「様変わりした『イソ弁時代』」 )。

     かつてはまさに弟子として、師匠の教えを守り、その結果、弁護士としてのスタイルからスタンス、果ては立ち振る舞いまで、影響を受けた方もいました。いまは前記したような変化もあって、そこまでではありませんが、実はそれでもやはり似てきてしまうという話も聞きます。もちろん相性というものもあり、そうなる前に、お別れするケースはこれまでだっていくらもあるわけですが、お別れしないケースについていえば、どういう影響を受けてしまうのかは、やはり昔も今も、どんなボス弁のいる事務所に入るのかで大きく違う現実もあります。

     そしてそれが、良いものになるのか悪いものになるのかも、弁護士にとっては運不運もあるようです。事前の評判で新人側が判断することもあるわけですが、やはり限界があり、先輩弁護士が「僕に相談してくれていたら、あそこの事務所には入れさせなかった」と、同じ弁護士会の新人の入所先について懸念する声を聞くこともあります。

     もちろん弁護士という人間は、一般的な感覚でいえば、独立心の強いタイプが多いので、先輩とはいえ訳の分からないボスならば、さっさとおさらば、と考える方もいるわけですが、ある意味、実直な方も多いうえ、この就職難で当面、今いる事務所にしがみついていたいと考える人もいるご時世なので、そこはそう単純に割り切れないものもあるようです。

     拝金主義的な傾向やビジネス化への割り切り方から人権感覚まで、ボス弁のタイプとその事務所の「カラー」によって、かなり新人弁護士に与える影響は違ってくることも事実です。

     最近もある弁護士のブログで、このボス弁の影響をテーマに書かれたものがありました。

     「イソ弁は、何年かボス弁に師事するうちに、事件処理方針の決定や依頼者への態度のみならず、口調や考え方まで似てきます。ときには、洗脳に近い状態になるときもあります。かくいう私も、ボスの口調が乗り移って、独立後数か月は抜けませんでした。ひょっとすると今でも気づいていないだけで、抜けていないのかもしれません」(「大阪発→弁護士Kのブログ」)

     彼はかつて、あるイソ弁の話として、「愛人をつくるのは男の甲斐性」という持論をお持ちのボス弁に「感化」され、愛人ができたことを報告したところ、「君も一人前になった」とほめられたという話を紹介しています。また、彼自身は、仕事が多いと言いつつ土日出勤しなかったことと絡めて、「土日来ていたら一日中ネットサーフィンをして帰っても、私は来ているというだけで評価していたはずだ」と、独立の時、言われたボス弁の言葉を、今もネットサーフィンする度に呪詛のように思い出してしまう、としています。

     弁護士に限ったことではありませんが、おかしなボスの影響は所詮ろくなもんではなく、また、そのボスのセリフを思い出しただけでも、口の中に苦いものが広がるような、嫌な気持ちになるというのも、理解できることではあります。その意味では、「悪影響を及ぼすダメボスとは、かかわるな」というのは、どの世界にも通用する教訓とも思えます。

     しかし、そのうえで、このブログ氏は、最後に次のような決意を示しています。

     「良くも悪くも大いなる影響を受けたといわざるを得ません。私もそろそろイソ弁を雇いたいななどと、偉そうに思っていますが、もう少し、自分の人格を磨いといたほうがいいのかな、などと思い直したりしています」

     もし、ダメボスの下についたとしても、その「感化」を取捨しつつ、こうした反面教師的自覚に立てるのであれば、やはり、それはそれで意味があったことにもできるということになります。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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