日弁連会長選挙の状況変化

     日弁連の会長選挙を取り巻く状況は、変わってきたと思います。その変化は、内と外にあるといえると思います。内なる変化は、弁護士の増員に伴い、若手が急増していることです。

     弁護士の数は2001年以降の10年間で約1万人増えていますが、2007年以降の司法試験合格者が2000人の大台にのって急増した結果、同年以降昨年度末までの4年間の弁護士登録者が、日弁連全会員の4分の1を占める状況になっています。もちろん、この政策が続く限り、どんどんその若手の比重が増えていくことになるわけです。

     いうまでもないことですが、これは弁護士会内の勢力図を塗り替えることにつながる可能性があります。そして、選挙ということになれば、当然、この票の行方が結果に影響することになるわけで、そのことはこれまで以上に、候補者とその陣営が、意識せざるを得ないは状況になってきたことを意味します。

     この若手は、増員政策の影響の直撃を受けている層でもあります。事務所経験を経ずして独立する「即独」の登場がクローズアップされ出した時代の弁護士です。さらに一世代上の弁護士を含め、「会費」負担の問題を深刻受け止めている層も存在し、強制加入不要を含めた声が聞こえてくる層でもあります。

     候補者は当然、こうした層をにらみながら、選挙公約を考えていかなければなりません。これまでの日弁連会長選候補者の選挙公報などを見れば、「本命」と目される候補ほど、総花的といえるような内容でした。もちろん、これは日弁連内の多様な問題意識と要望の受け皿になることで集票につなげたい意向とも、そうした多方面に目配りが効く会長としての資質をアピールするものともとれたわけですが、ともすれば、日弁連の会務報告を読んでいるようで、一体、この候補が何に力点を置き、何に本気で取り組むつもりなのかが、ぼやける感じもありました。

     そうした候補者の主張が、果たしてどれだけ前記した会員に通用するのか、心をとらえるのか、という点は、やはり候補者たちに突きつけられているように思います。

     そして、弁護士会の外の変化といえば、やはり注目度です。かつての日弁連の選挙にしても、全国紙でもほぼ結果だけしか報じない時代もあり、その後も、多数候補者出馬の過熱ぶりを物珍しそうに報道する企画記事ばかりが目立ってきました。

     もちろん、現在もそのスタンスは変わっていないようにも見えますが、ただ、それでおさまらなくなってきているのは、やはり「改革」の状況です。およそ司法改革が国民の関心事かどうかは別にしても、弁護士の増員政策や法科大学院など、「改革」の目に見えた破綻とも言うべき状況が、弁護士周辺に存在していることを、さすがにかなりの人々が認知し出している状況にあります。

     現在の弁護士会のスタンスに対して、「改革」推進の立場から、否定的なマスコミ報道もあるなか、そうした論調の影響を受けた世論も存在しますが、逆にその意味でも、どういう会長が日弁連の舵とりし、組織としてどういう方向の主張を掲げるのかにも、これまでより視線が集まっている状況におるというます。

     日弁連会長選挙では、1998年から2008年までの6回の選挙で、「改革」推進派の主流派と反「改革」派の候補が激突し、2008年には反「改革」派候補が全投票数の4割以上を占めるまでに票を伸ばしてきていました。

     その状況下、前回2010年選挙で、これまでの反「改革」派とは違う立場から、現在の路線に対する修正を含めた慎重論を掲げた現会長の宇都宮健児氏が、再投票に持ち込んで主流派候補を破る劇的な勝利を収めたわけです。しかし、それは見方によっては、これまで「改革」をめぐる会内の対立的な世論状況の末にあったとみることができます。

     「改革」をめぐるマスコミ論調など外から批判的な見方を意識し、迎合した主張がここでまた展開される可能性もありますが、そうしたスタンスそのものが、法科大学院にしても増員政策にしても、これまでの日弁連の主張を返って分かりにくくしてきたという見方も強まっている感があります。

     注目されている日弁連が外に向かって、これからどういう主張を展開し、筋を通すのかが、これまで以上に、弁護士そのものの今後の存立にかかわってくるととらえている有権者会員に、候補者が何をどう訴えるのか、注目の選挙になります。


    「司法ウオッチ」会員特典として弁護士情報検索サービス「弁護士データバンク」を追加。ただいま新規登録先着100名様、来年3月まで会費無料キャンペーン実施中! http://www.shihouwatch.com/membership.html

    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。
    http://www.shihouwatch.com/

    司法改革に疑問を持っている人々ための無料メールマガジン「どうなの司法改革通信」配信開始!無料読者登録よろしくお願いします。http://www.mag2.com/m/0001296634.html

    にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
    にほんブログ村

    にほんブログ村 その他生活ブログへ
    にほんブログ村



    人気ブログランキングへ

    スポンサーサイト

    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事





    コメントの投稿

    非公開コメント

    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR