「弁護士」にふさわしい選挙

      およそどこの世界にも見られることかもしれませんが、弁護士会の選挙、とりわけ日弁連の会長選挙でも、その投票行動には、会員有権者のさまざまな意図が介入しています。それはいくつかに分類できます。

     一つはいうまでもありませんが、表向きあるいは本心から、ある候補者の政策や人間性を支持し、投票を行うものです。極普通に考えられる投票で、あるいは本来の形ということもできるとは思います。

     もう一つは、これもよくあることですが、ある候補に当選してもらっては困るということから、最大の対立候補に投票するというものです。これも厳密にいえば、いろいろな程度がありますが、両候補を比べて、前者のようにA候補を丸ごと支援できるわけではないが、B候補に比べればまだましという評価でA候補に投票するというものです。

     これもいうまでもないことですが、この場合、B候補が当選圏内にあるという読みが前提になり、またA候補が勝ち負けになる位置取りでなければ、これもあり得ません。どっちみち勝ちが決まっているという判断の場合は、どちらかといえば投票に行かない、棄権という選択肢になります。

     もっともこのやり方が悪いともいえないのは、選挙は、あくまで候補者の中からベターな人を選ぶものだという考え方もあるからです。

     ある憲法学者は、必ず学生に、選挙でどの候補も投票に値しないと思ったらば、棄権はしないで、投票所まで行き、白票を投じることで「該当者なし」という投票者としての政治姿勢を示せ、と言っていました。ただ、現実的には、選挙として成立してしまう場合がほとんどなわけで、やはりここは勝たせない投票行動、よりまし投票は当然選択されることではあります。

     時に、そうした投票を決断した弁護士の口からは、「次善の策、いや次々善の策だ」といった言葉を悔しそうに語るのを聞くことがあります。以前にも書きましたように、日弁連会長選挙で、東京・大阪の弁護士会以外の会から、事実上、勝ち切れる候補を立てられない現実があり、それ以外の弁護士会の会員のなかからは、そうした声もよく聞かれます(「選挙に燃える弁護士たち」)。

     ただ、ある意味ここまでは、前記地方会からの出馬が困難なことを除けば、適材を選ぶという選挙の本来の役割は一応機能しているのかもしれません。実は、これ以外にも弁護士の投票行動に見られる傾向があります。

     一つは「勝ち馬に乗る」という考え方です。これも選挙で見られることといえばそれまでですが、要するに勝ちそうな候補を支持するという傾向です。よく言われるように、死に票を嫌うという見方でもありますが、一方で、勝てる候補に目をつぶって選択するということは、政策や人物度外視という無関心か、どれでも同じ、影響なしという判断のもとにした投げやりか、いずれにしても、弁護士が行う弁護士会の選挙としては、あるべき形とはいいにくい迎合的で選挙の本来の役割を考えていない姿勢にも見えます。

     弁護士会にもサイレント・マジョリティともいうべき無関心層が存在していることは以前も書きましたが、そうした存在が透けて見える時があるです。もっとも、「勝ち馬に乗る」という発想ながら、早い段階からその判断の下、表向き一番目の姿勢で、支持表明されている方がいないとは言えませんが(「『沈黙する会員』と会内民主主義」)。

     だが、これよりも弁護士の選挙らしからぬという意味では、確固たるものとして存在してきたのが、いうまでもなく、大都市弁護士会に存在する会派という名の派閥です。以前にも書きましたが、そのつながりがいわば「集票マシン」として機能する形です。当然、そこには個別候補との政策比較や適材主義とは違う力学が働いているということで、少なくとも表向きの公明正大なイメージ(もっともいまやそれにも異論を唱える方いらっしゃるかもしれませんが)とは異質の、いわば選挙の本来の機能を働かせない形がとられているといわざるを得ないものです( 「『会派』という派閥の存在感」)。

     こうした派閥の影響力は近年低下しつつあるという見方がある一方で、いまだにそれは、選挙はもちろん日弁連の総会や弁護士会常議員会の議決においても、確固たるものとして存在しているという会員の声を聞きます。

     さて、来年は、早々に日弁連会長選挙が行われます。現宇都宮健児会長の再出馬の動きを日刊紙まで取り上げ、4候補者の名前が浮上するなど早くも乱戦が予想されていますが、それよりも新法曹養成や法曹人口問題などをめぐり、重要な局面を迎えているなかでの、日弁連の方向性を左右する可能性がある選挙となります(「宇都宮日弁連会長の『ミラクル』」)。

     およそ国民が直接監視するわけでもない、その選挙が、いかなる選挙で本来あるべきなのか。前記したようなこれまでの事情を踏まえながら、今、考えてみる必要があるように思います。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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