「オウム」がもたらした弁護士の変化

     弁護士に絡んで、「オウム以降」とくくられることがあるものが、二つあります。一つは、弁護士のテレビへの露出です。オウム真理教をめぐる一連の事件が発生した当時、テレビはさまざまな弁護士の姿をお茶の間に伝えました。
     
     オウムの信者である教団の弁護士、教団幹部についた弁護士、信者になった人を救済する側の弁護士、そして事件の被害者となった坂本堤弁護士。そうしたさまざまな立場で、この事件にかかわった弁護士を国民は目にすることになりました。中には、そのキャラクターの方が話題になったりすることもありましたが、およそ一つの事件を通して、ある意味、さまざまな種類の弁護士がいることを大衆は知ったと思います。

     なかでも、連日、救済側つまり教団と対立する側で、テレビに登場した弁護士たちは、テレビを通じた弁護士とお茶の間の距離感を変えたという人もいます。弁護士コメンテーターは今では、当たり前に番組に登場し、いまやタレント弁護士としてのポジションを作った観もありますが、むしろこの「オウム」の時期の弁護士の露出に、「使える」手ごたえを制作者側がつかんだのではないか、ともとれなくありません。

     「オウム」報道が一段落したあと、度々、特番などに出ていた教団と対立していた弁護士が、ワイドショー番組のなかの「オウム」とも法律問題とも無縁のコーナーで、何かを試食しながら談笑しているのを見て、当時、ちょっと驚いた記憶がありますが、今思えば、やはり「マルチ」化へのさきがけだったようにも思えます。

     もう一つ「オウム以降」が言われるのは、弁護士の防衛意識です。坂本弁護士事件を契機として、弁護士が自らの身を守る意識が強まったというのです。とりわけ、坂本弁護士が自宅を襲撃され、家族とともに教団によって殺害されるという痛ましい事態は、多くの弁護士に衝撃を与えました。

     以前にも書きましたが、弁護士会では、それまでも業務妨害というテーマで、こうした弁護士個人への攻撃への対処が取り上げられてきましたが、ここまでの衝撃を与えた事件はなかったと思います。自宅が攻撃にさらされ、家族が犠牲になるという状況に対して、自らの無防備さを多くの弁護士が実感したはずです。

     それが証拠に、それまで自宅の住所を日弁連の会員名簿で公開していた弁護士が、続々と掲載中止を希望するようになり、数年して、日弁連は全面的に自宅住所公開を取りやめました。私が制作にかかわっていた「全国弁護士大観」でも同様に、この時期から自宅住所の削除希望が急増しています。

     当初こそ、弁護士と依頼者のアクセス確保は24時間保障されてもいい、とか、こうした対応をむしろ弁護士への圧力に対して屈した、後ろ向きの対応のように批判的にとらえる弁護士もいましたが、やはり、弁護士が自らの身を守ることも否定するわけにはいかない、という見方が大勢になりました。これもまた、「坂本弁護士事件」の衝撃の大きさが影響したように思います。

     全くつながりのないように思える、弁護士に「オウム以降」もたらされた二つの変化は、見方によっては、弁護士を外と内へ向かわせる形に、正反対の方向で現れたものとみることができます。

     個々の弁護士が自らの身の危険を感じ出すと同時に、テレビの向こうから「弁護士」という存在が社会に現れ出した――ある意味不思議な、そして皮肉な「オウム」がもたらした現実です。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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