「不本意な」弁護士登場というとらえ方

     弁護士の登場というのは、多くの場合、相対的な関係のなかで現れるものです。つまり、紛争当事者として、相手がいる状況です。これは、何を意味するかといえば、弁護士の登場が、弁護士の登場を生むということを意味します。

     要するに、相手方が弁護士を付けて何らかの対応してきたことを知った一方当事者が、弁護士を付けるという対応をとるということです。実は、ここではっきりさせておかなければならないのは、少なくともこの後者の当事者は、必ずしも弁護士の登場をこころよく思っているとは限らないということです。

     これは、当事者と話をしてみると、はっきりしていることです。相手が弁護士を付けてくるから、こちらも仕方がなく付けざる得ない、いわば、そういう状況に不本意ながら追い込まれてのことであると感じている人は少なくありません。

     相手が戦闘モードで弁護士をつけてきたので、よし、こっちもだ、という方は、どちらかといえば、こうした状況になれていたり、弁護士と親しい関係を持っている人になるかもしれません。裁判沙汰とも、弁護士ともご縁がなかった方からすれば、相手が弁護士を付け、その名前が入った書面が送り付けられてくれば、それだけで動揺し、なんとかしなければという気持ちの中で、弁護士へのコンタクトを求めることになります。

     弁護士の側からみれば、弁護士の登場が、さらに弁護士の出番を生むということは、ニーズが倍になったようにも見えます。弁護士を付ける市民が増えれば、また、弁護士に頼る市民も増える――。弁護士が増えて、社会の隅々まで登場する社会では、こうした現象が生まれるように思います。その前提に立てば、より「身近に」弁護士がいて、相手が弁護士を付けて臨んできた時も、市民が動揺したり、困惑することなく、スムーズに弁護士を依頼し、対決姿勢を整えられる環境をつくろうという話になっていくように思いますし、現にいまの「改革」がそうした絵を描いているように思います。

     ただ、忘れてはいけないのは、前記したように、この状況を一方当事者は、本心から望んでいない、いわば不本意である、ということです。紛争だから仕方がない、ということもできなくはありません。本来、こうした形で裁判に持ち込まれなければ、どうにもならない案件は存在します。その場合、いかに当事者が不本意でも、弁護士を依頼しなければならない、むしろそれが望ましいことも確かにあるでしょう。

     しかし、この「改革」が描いている「身近な」弁護士は、もちろん相手側のそばにもいたのです。そこでもこれまでより弁護士が介入するほどに、そういう環境が整えられるわけで、問題は、そこの妥当性ということになります。つまり、そこが、これまで弁護士がかかわるべきなのに、かかわってこなかった部分なのか、それとも本来的に介入しないで済んでいた部分なのか、ということです。いうまでもなく、前者ならば、それは依頼者・市民のためということになり、問題はありません。しかし、後者の場合、目的は別のところにあります。

     弁護士を社会のあらゆる場面に登場させるため、劇的に増やそうとしている方々は、いうまでもなく、前者の形を振りかざし、そこに弁護士が介入しないことによる不正解決や泣寝入りを描き込んでいます。それがないとは思いません。ただ、そうした市民社会の要請を上回る数の弁護士が社会に放出された場合、どういうことになるでしょうか。

     しかも、生き残りのための競争が弁護士の自覚としてもいわれ始めています。弁護士がビジネスと割り切り、生き残りをかけた競争に挑んできた場合に、後者が選択される危険があるのは明らかです。それは、また、本来、国民が望まない、あるいは必要がない、弁護士の登場を生むということになります。

     今、多くの国民が心配しなければいけないのは、弁護士の数が少ないゆえに弁護士が登場してくれないことか、それとも多すぎるがゆえに、不本意な形で登場してくることなのか、そこを考える必要がありそうです。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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