第1回「予備試験」結果の受け止め方

     「改革」の推進論者たちは、この結果に満足なのでしょうか。法科大学院を経由しない、いわゆる「バイパス」ルートの、第一回目の「司法試験予備試験」の最終結果が発表されました。総受験者数6477人のうち、最終合格者は116人。合格率は約1.8%だった。

     一見して「狭き門」という印象を与える数値だと思いますが、この試験実施前には、100人を下回り合格率も1%を切るのではないかとの観測もあっただけに、違う評価をされる人もいるのかもしれません。

     ともかく、この試験は、経済的事情などで法科大学院に進めない人のための、いわば救済措置であるはずなのに、関係者の注目の仕方は、その効果についてのものではありませんでした。端的に言って、法科大学院制度の「抜け道」にならないかどうかのその懸念の方に、気を使ってきた制度なのでした(「狭き『予備試験』の本当の目的」)。

     したがって、冒頭に書いた、この結果への彼らの満足度もまた、ちゃんと「抜け道」防止の効果があるかどうかの一点にあるといっても過言ではありません。

     11月11日付けの朝日新聞朝刊の報道によれば、合格者の内訳は大学生が40人、無職32人、公務員13人、会社員12人、法科大学院生8人で、92人が旧司法試験の受験経験者で、法科大学院修了者も19人いたようです。

     この結果から分かることは、そもそも法科大学院修了者に比べて圧倒的に少ない合格者なので、こういう評価自体疑問かもしれませんが、まず、法科大学院制度の欠陥とされる「多様な人材確保」の貢献度が低いこと。また、受験者の内訳がはっきりしないので断定できませんが、かつて認められていた多数回受験の旧司法試験チャレンジ組、法科大学院修了者で、受験回数制限の3回不合格の、いわゆる「三振」組には予想通り、このルートが継続チャレンジの機会としては厳しいものであることや大学・法科大学院在学チャレンジも難しいということは推察できます。

     同日の朝日は、中西一裕・日弁連事務次長と、法科大学院協会事務局長の中山幸二・明治大学法科大学院教授のコメントを掲載しています。
     
     「合格者数が少なく、懸念されていたような抜け道にはならないのではないか。受験者数も当初の予想ほど多くなく、法科大学院を中核とした制度が定着している」

     中西事務次長は、前記「抜け道」懸念に関しては、この「狭き門」となった結果に満足され、さらに法科大学院定着との見方まで提示しています。以前、書きましたように、日弁連はこの「予備試験」について、一貫して法科大学院本道主義の立場から冷遇策の必要を強調してきましたが、まさに狙い通りといわんばかりの言い方で、その姿勢を確認しているようにとれます(「『予備試験』で見せた日弁連の意外な顔」)。

     一方、中山教授は、これと対照的に意外なほど、悲観的な見通しを示しています。

     「合格者数は少ないものの、20代前半の割合が多く、今後、優秀な人材が予備試験に流れる可能性がある」

     ある意味、中山教授の方が、現実を直視しているととれる発言です。どういうことかといえば、つまり、バイパスがここまで絞られていても、法科大学院は経由されない懸念がある、少なくとも若くて、優秀な人材は回避するという見方であり、それは取りも直さず、現在の法科大学院がそれだけ敬遠される要因を持っているということを認識しているともとれるからです。

     あるいは、もっと絞り込まれていなければ安心できない、というよりも、もはやこの制度全体が、「抜け道」云々の問題ではない、と分かってのご発言ではないのか、とも思えるのです。

     その意味では、少なくとも中西事務次長の発言を通して見える、もしくは通して読者に伝わってしまう日弁連の姿勢は、より法科大学院本道に現状でも楽観論を持つ推進派ということになりそうです。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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