弁護士支援民営化という段階

      11月7日付けの日本経済新聞が報じた国内初となる民間の弁護士就職支援企業「日本司法サービスセンター(JSC)」(東京・千代田区)が話題となっています。詳しくは、同センターのホームページをご覧頂ければと思いますが、新人弁護士を対象に法的書類を書く上での注意点を研修で教えたり、法律相談の場を提供して、早期に独り立ちできるよう、有料で支援するそうです。

     要するに即独、ノキ弁、さらにはイソ弁の独立を視野にいれた支援サービス業ということになります。ちなみに、入会金が21万円のほか、基本会費が月額5万2500円などがかかるとしています。

     前記JSCのホームページには、設立の趣旨としてこんなことが書かれています。

     「司法制度改革が始まって10年余り、法科大学院の開校、法テラスの開設、裁判員制度のスタートなど、新たな組織や仕組みが登場しました。これにより日本の司法サービスは着実に改善し向上して来ました。しかし、法曹養成機関の法科大学院が創設され、司法制度改革の担い手として弁護士が増員されたものの、ここにきて新たな問題が生じています。世界的な景気低迷の影響、そして期待されていた司法サービスの需要拡大が進まないために、司法研修所を修了した弁護士の就職先が見つからないという事態が発生しています。この問題は、年々より厳しい状況になってきており、司法サービスの『需要』と『供給』のミスマッチの解消が急務となっています」
     「この状況を打開するため、日本弁護士連合会では『いつでも、どこでも、だれでも良質の司法サービスが受けられる社会』の実現を目指し、弁護士過疎・偏在の解消や、新しい司法サービス組織による対策、新人弁護士の就職問題などに取り組んでいます。しかし、司法制度改革の目的を目に見える形で実現するためには、新たな発想とさらなる打開策が求められているのではないかと考えます」

     ここで言われているのは、まさに法科大学院制度と法曹人口増員という「改革」がもたらした結果の話です。「期待されていた司法サービスの需要拡大が進まない」「司法サービスの『需要』と『供給』のミスマッチ」という現状を直視しています。

     ただ、いうまでもなく、法科大学院を修了した新人弁護士に、「日本の司法サービスの担い手として大いに活躍いただくため、そして厳しい就職状況の打開を図る一つの試み」として、彼らが登場するのは、この「改革」路線をあくまで大前提として、これを何としてでも支えようとする試みともいえます。前記したような需要拡大が進まず、需要と供給のミスマッチを生んだ「改革」の描き方そのものの反省に立つわけではありません。

     もちろん、現実の新人救済策としての面がある以上、この事業に対する弁護士の評価は分かれると思います。こうした事業の登場もまた、現実的にOJTが失われる即独時代の弁護士には、当然、想定されることでもあるからです。

     しかし、この事業の登場は、さらに今後の法曹界への影響として、いくつかのことを予感させます。

     もし、こうした事業が続き、あるいはいくつかのライバル事業も立ち上がるという未来があるとすれば、一つにはまず弁護士が就職先の法律事務所で修行する旧来からの形は完全に壊れるということです。仮に、事務所で養成する形になったとしても、逆にこの事業が成り立つのであれば、ノキ弁に有料で事務所が修業の場を与える形まで考えられなくありません。

     一方、そうなれば、弁護士志望者は、法科大学院の学費、貸与制の司法修習時代の費用、弁護士になってからの民間かあるいは事務所での修行代、免除されなければ弁護士会費を覚悟しなければなりません。負担は明らかに増大しますから、現在、既にいわれているような志望者の敬遠傾向、経済的条件を満たしたものしかこれないことによる人材の偏りといった問題は、さらに指摘される可能性が出できます。

     そして、この向こうには、支援の担い手も変わることからの弁護士会の強制加入の不要論、さらには弁護士に関して養成そのものの担い手も民間へという発想が進めば、司法修習の不要論まで、若手弁護士の意識が大きく傾斜することも考えられます。

     もちろん、この方向は、「改革」路線を基本的に突き進むことが前提ですから、国内の景気が大きく改善するといった要因を別にすれば、需要が追い付かないことが一体何を意味しているのかを考えない以上、この状態がいつまで続くことなのか、それも皆目予想が立たないことです。

     この民間救済事業が継続・発展するという状態が、意味するものも考えておく必要があります。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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