宇都宮日弁連会長の「ミラクル」

     宇都宮健児・日弁連会長に関して、経済誌「ZAITEN」11月号の特集記事が「ミラクル」という表現を使っていました。一つは、昨年の日弁連史上、初となった再投票による会長当選。いうまでもなく、1回目の選挙で相手候補が得票数で勝りながらも、全国の三分の一の会(18会)で最多票を獲得できず、再投票では総得票で宇都宮氏が逆転するという異例の展開だったということです。

     これが意味するところを補足的に説明するならば、主流派とされた相手候補を破ったこと、強力な派閥を背景とした選挙の勝ちパターンと違う形になったこと、さらには1回目の選挙結果が示すような都市と地方の会員意識のねじれが表面化したこと、さらに選挙で争点となった司法試験合格者数について、よりはっきりとした減員の方向を支持する会員の意思が示されたことなどが挙げられると思います。

     この雑誌が二つ目に挙げていた「ミラクル」は、昨年11月から制度移行が決まっていた「貸与制」の延期です。「給費制」維持を宇都宮執行部の重点課題に、相当な精力を注ぎこみ、ひとつの結果を出したということです。

     しかし、その後、「法曹の養成に関するフォーラム」で財務省・法務省の反転攻勢、法科大学院関係者からの攻撃にさらされ、そこでは貸与制移行の方向で固まってしまいました。経済問題から切り込んだ戦術ミスもいわれ、「給費制」の本来的な意義に関する議論に踏み込めなかった失敗をいう会員の声もあります。「宇都宮氏の魔法が切れた」。同誌は、こんな関係者の声も取り上げています。

     そして、実は同誌が宇都宮氏の三つ目のミラクルとして注目しているのが、来年の次期会長選への再出馬というシナリオです。ご本人が正式表明をしているわけではないのですが、会員間では既に取りざたされている話を同誌も注目しています。

     現職が1期2年を務め、継続して2期目に名乗りを上げるというのは、そうした前例がないだけに、一般の人の受け止め方よりも、弁護士会内の人間の方が、やや違和感に近いものを持つかもしれません。通算4年を同一の会長のもとで、会務を進めるということは、これまでに比して、やはりそこに特別の必然性を見出さなければならない、という意識につながっても当然だからです。

     そして、これは、もし宇都宮氏が出馬するということになれば、これまた日弁連会長選挙史上初めて、前会長任期2年の評価が選挙の争点の一つになる、信任投票的性格が加味される形になることを意味します。

     つまり、端的に言えば、彼の政策方針の実現が道半ばであると評価するのか、それともその期待感に比して、よりこの2年間の彼の実績に対する会員の失望が上回るのか、にかかっているということができます。

     その前者に対しては、「給費制」問題の延長戦の行方が焦点になるという見方もあります。なんらかの暫定案という結論が出ればもちろん、さらにそうでなくても給費制完全復活をかけた闘いへの望みと会長への期待感がつながるかどうかという話です。また、彼が強調する「貧困」というテーマについても、その成果を会員がどう受け止めているかが問われます。

     そして後者についていえば、最大の焦点はやはり増員問題です。選挙では「年1500人」というラインを打ち出し、当初、会員の中には「1000人~1500人」のラインで政策を進めるという期待感まであった宇都宮氏でしたが、1500人という数字はその後、はっきりと表に出なくなり、マスコミへの露出のなかでも、前執行部と同じ「増員ペースダウン」論しか言及しなくなっている現実もあります(「宇都宮日弁連会長への『失望』の行方」)。

     これは、法曹人口のあり方についての日弁連の基本的な方針をどうするかが話し合われ、年内に基本政策の最終案が出される予定の法曹人口政策会議の結論とその扱いによっても、微妙に評価が違ってくる可能性があります。(「法科大学院撤退と日弁連バッシング」)。

     「道半ば」か「失望」か――。宇都宮氏の三つ目の「ミラクル」は、再び会員の審判にゆだねられることになります。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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