日弁連の法科大学院方針に「異変」?

     10月20日に日弁連会員にFAXされてきた「日弁連速報 給費制号外N0.5」(編集責任者 日本弁護士連合会事務総長 海渡雄一)の内容が、話題になっています。

      「貸与制移行は法曹志望者に対するマイナスのメッセージ!現在、法科大学院の入学志望者数(法科大学院適性試験の志望者数)は当初の約4万人から約8000人と5分の1に減少し、その質の低下も指摘される等、新しい法曹養成制度は危機的状況にあります。法曹志望者減少の要因は司法試験の合格率の低迷、司法試験合格後の就職状況及び法科大学院の高額な学費負担です。このような法曹養成制度全体の問題点を議論することなく、給費制を廃止して貸与制を実施することは、法曹志望者をますます減少させ、経済的理由により法曹になることを断念する事態を広範に生じさせることは明らかです」

     既にこの内容は、会員によってネットに公開されています。これを見て、何が話題になっているかといえば、いうでもなく、法科大学院の高額な学費負担に、日弁連がついに言及したということです。法曹志望者の減少の要因として、合格率の低迷、司法試験後の就職状況と合わせて、法科大学院の高額な学費を挙げ、法科大学院が現実的な参入障壁であることを認めたようにとれるのです。

     もっとも合格率の低迷は、法科大学院制度の当初言われていたレベル、あるいは描こうとするレベルと現実を見比べたときの失望という意味では、志望者の敬遠要因ですが、さらに合格率が低かった旧司法試験で志望者が減少しなかったことも考えなければなりません。就職がいまほど困難ではなく、また、なるために借金を背負わなくて済んだ時代には、狭き門にも、多くの人間がチャレンジしていた、ということです。

     海渡事務総長が編集責任者とするこの文章の、位置付けについて、執行部見解とみていいのか等々、早くも会員間で取りざたされていますが、個人的見解というわけにはいかないでしょう。

     なぜ、今、こうした見解が示されたのでしょうか。「給費制」問題をめぐり、言われた「お金持ちしか論」について、会内からも言われ続けてきたのが、この法科大学院という負担でした。つまり、それほど志望者の経済的負担や志望離れの原因になることをいうのであれば、なぜ、法科大学院について日弁連は問題視せず、本道主義を掲げるのか、と。

     それを主張していた会員側からすれば、日弁連方針に異変あり、というわけです。ついに、法科大学院制度に対して、これまでの司法審「路線」と決別し、構造的に高額負担となる法科大学院制度を批判し、さらにはこのプロセス強制反対に舵を切る流れにするのではないか、という話です。

     その意味では、法科大学院本道というスタンスのまま、ある意味、その結論を尊重する立場で臨んだ「法曹の養成に関するフォーラム」で、「給費制」をめぐる日弁連の主張は全面的に退けられ、なおかつ、法曹養成全体の議論を先行させるべきとの主張も通らない事態に及んで、ようやく会員間で出されていた、いわば最も根本的な課題に目を向ける意志を固めたかのようにもとられることもまた、当然のことではあります。

     ただ、そうだとすれば、なぜ、「フォーラム」の前半で、「給費制」の問題をそれこそ法曹養成全体のなかで位置付けるためにも、この問題が、負担と志望敬遠要素の観点として、日弁連側から提起されなかったのか、という気持ちは残ります。

     これを今、日弁連がこれを掲げて、「フォーラム」に臨めば、そのお歴々が、またぞろ「いまさらなんだ」的な発言で、弁護士側委員と日弁連オブザーバーを攻撃し、その後、数日中に某紙「社説」が日弁連の姿勢を「変節」となじる論調を出す図も、想像できないわけではありませんが、ここはどこまで腹をくくったのかが注目です。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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