嫌われる弁護士と同業者の目線

     これまでもいろいろな形で触れてきたことですが、弁護士を嫌う人の話は、大きく、三つくらいに分けられるように思います。

     一つは「威張っている」「権威主義的」などといった、偉そうな態度の問題にかかわる話、もう一つは「手抜き」「能力不足」など具体的な対応の悪さの話、そして、「カネ」にまつわる「汚さ」をいう話です。

     現実は、これが複合的に絡み合ってもいます。例えば、「手抜き」自体は、怠慢な、権威にあぐらをかいている態度の問題としても言われますし、また、対応の悪さは、「カネ取り主義」との比較において不当性が強調されます。そして、これらに対する依頼者市民側の抗議に対する対応が、また「権威主義的」であるとも批判されます。

     これも以前書いたことですが、こうした「嫌う人」の批判的な言い方は、もちろん弁護士とかかわった個人的な経験に基づくものですから、そこには当然、弁護士として正当な対応をしながらも、当事者として最終的に納得がいかなかった人の逆恨み的なものや感情的な行き違い、弁護士という仕事そのものへの過剰期待を含めた誤解が含まれていることも少なくはありません。弁護士という仕事は、そうした形の恨みを買うことは宿命でもあります。

     しかし、そうだとしても、弁護士は胸に手を当てて、考えなければなりません。なぜなら、そうした批判に当たる弁護士も存在することは事実であること、そしてあるいは自分も、知らず知らずのうちに、そうした弁護士と同じようなことや、そうとられても仕方がないことをしていないか、疑ってみることは、決してマイナスなことだとは思わないからです。

     ただ、かつてよりも、こうした世間の声を受け止める弁護士は格段に増えた印象も持っています。もちろん、それはかつてよりも、ネット空間も含めて、そうした弁護士に対する社会の受け止め方が、大きな声として弁護士たちに届いていることもありますが、よりそうした問題のある同業者を認識している感があります。

     つまり、「そんな奴いるかなあ」とか「少なくとも私の周りにはいない」ではなく、「まあ、そういう奴もいるんだよなあ」の方が圧倒的に多くなっているのです。これだけで、前記「嫌う」方々の主張の現実を相当程度まず認めてしまっている感じがします。

     例えば、こんな言い方も聞きます。

     「弁護士臭い弁護士になりたいと思わない」
     「弁護士の仕事は好きなのだが、弁護士という人種は好きではない」

     これは同業者に対する厳しい目線であると同時に、違和感とも不信感のようにもとれます。「弁護士臭い」とは、もちろん悪い意味なのですが、その中身についてはさまざまな見方があるかもしれません。ただ、ここはやはり一般市民目線で考えて、同業者としても首をかしげたくなるものがあるということです。

     弁護士のなかには、「弁護士」という人間たちを「偽善的」という人もいます。自分たちが「正義」として、それを誇りとするのを通り越して、社会の中で優越的な存在であるかのように勘違いしてはならない、という人もいます。おそらく、こんな風に考える弁護士がいるとは、夢にも思わない市民は沢山いると思います。

     もう、一つ別の見方をすると、もはや弁護士自身が、徐々に同業者たちの、いわば「質」の話に自信が持てなくなってきているととれる感じもあります。現在の弁護士の激増、そして、それを肯定する競争による「淘汰」が、同業者の良質化につながらないことを実は多くの弁護士は知っています。そして、既に経済的な面と、教育の面から、弁護士の「質」確保が脅かされているなかで、嫌われても仕方がない弁護士の登場は、弁護士にとっても想定内のことなのです。

     「嫌う人」のなかには、「権威主義的」というのは、「改革」以前の弁護士で、それこそ「淘汰」のなかで、彼らこそ変わることを余儀なくされるように言う人もいます。しかし、どうもそんな話ではありません。中堅の弁護士からは、この「改革」のなかでも、中堅以上の弁護士層の多くは、経済的にもいわば「安全圏」にいるという話をよく聞きます。仮に競争が起こっても、彼らは変わらない。「競争」の影響を受けるのは、中堅以下基盤がない若手なのだ、と。

     もっとも「安全圏」にいないベテランのうち、そもそも倫理的な自覚においてボーダーにいる人間が、増員の影響を受け、経済的に困窮して、道を踏み外すことだって多くはなります。その現実も実は多くの弁護士は、分かっていると思います。

     一方、若手に対して、中堅弁護士がいうのは、むしろ「能力」のことです。「能力」不足がゆえに、勝ち目がないような案件でもファイティングポーズだけで依頼者の気持ちを引きつけようとしたり、言い掛かりのような主張を掲げてくる依頼者を説得できず、結局、依頼者のいいなりで、同業者から見たならば、明らかに首をかしげるような主張を掲げたりという話が聞こえてきます(「『ポーズ』弁護士増加の嫌な兆候」 「歓迎できない『従順』弁護士の登場」)。

     もちろん、若手弁護士がみんなそんなレベルであるわけはありません。ただ、先輩弁護士から見て、それは率直にこれからの弁護士を考えれば、不安な兆候にも見えるのです。

     弁護士が、その同業者に胸を張れなくなる、より自信が持てなくなるという危い未来が、一体、何のために、誰の無責任によって、市民にしわ寄せがくる未来なのか、そこをまず、考えなければなりません。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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