「格調」を重んじ「夢」を与える「フォーラム」

     現在、会議が進行中の「法曹の養成に関するフォーラム」に日弁連が提出した資料のなかに、若手法律家らのネットワークであるビギナーズ・ネットが現役司法修習生の声を集め、4月にまとめた「当事者の声ブックⅡ」という冊子がありました。

     「給費制」存続をどう思っているかの設問に、率直に「ありがたい」「助かった」という司法修習生の本音が出てきます。そのなかに、「給費制」がなければ他の修習生や教官との懇親会や飲み会へ参加にできなかったといった趣旨の回答がありました。もちろん、酒好きが会に出る話ではありません。円滑な人間関係や人脈作りで必要と感じた修習生が、ストレートに本音を言ったまでのことだと思います。

     これを、7月13日に開かれた「フォーラム」第3回会議で、鈴木克昌・総務副大臣が疑問視する一幕がありました。要するに、こうした「次元の低い」ことをなぜ、日弁連は資料として提出しているんだと。日弁連オブザーバーの川上明彦弁護士は、この時、司法修習のいろいろな段階でのコミュニケーションを交わす重要性、それによって成長してきたことは確かであるとして、「それが許される時代ではなくなってきているのならば、改めて考えていくべき」という一応の反論をしました。

     この鈴木副大臣の疑問視する見方が、「貸与制」基本を打ち出した「第1次取りまとめ」の原案に次のように載っていました。

     「日本弁護士連合会から提出された『当事者の声ブックⅡ』の中で、給費がなければ他の修習生や教官との懇親会への参加にちゅうちょするという司法修習生の回答が複数あったことを踏まえ,給費制の必要性や意義について疑問を呈する意見も述べられた」

     実は、今度はこの原案の下りが、第5回会議で問題になりました。委員の久保潔・元読売新聞東京本社論説副委員長が、原案は「全体的には非常に大局的で幅広い視点から説得力のある取りまとめが行われている」が、「この部分はいささか瑣末」として違和感を言ったのに対して、同じく委員の井上正仁・東京大学大学院法学政治学研究科教授は、こう言います。

     「私も結論としては同意見です。懇親会というものにはそれ自体としてそのような意義があるのかもしれませんけれども、それを国民の負担による給費で賄うべきだといったことを堂々と言うことには、見識を疑うところがあり、内容的には、ここに書かれているとおり、いかがなものかと思うのですが、今おっしゃったように、それに言及することで、まとめ全体の格調が下がってしまうように思いますので」

     要するに、疑問視することは当然だが、それを載せると、取りまとめの「格調」が下がる、そもそもこんな修習生の本音は載せること自体、汚らわしいという扱いです。こんなことをいう修習生のレベルの低さを、ここでさらすまでもない、と言っているように聞こえます。

     この違和感にはほかからも賛同の声が上がり、座長が諮って、即刻、原案削除が決定します。

     この後、この削除部分に触れながら、日弁連が調査に基づいて主張した今後の過払金返還請求事件の減少に伴うさらなる所得減少の可能性などについて、委員の鎌田薫・早稲田大学総長が、こんなことを言います。

     「先ほど削除したところも余り品位のある話ではないんですけれども、実はこの給費制維持の問題のある側面を鋭く突いているところがあるように思います。給費制を維持してくれという論拠がたくさんある中で、先ほどの話とか、今後、収入が減るかもしれないから、もっと経済的支援をくれみたいな、こういう物取り的な次元にこの問題を引き下げることは妥当でないという感じがしてならないのと、弁護士の役割について若い人たちにもっと将来の大きな夢を与えるような議論に、この議論全体がなってほしい」

     司法修習生の本音は、この会のまとめの「格調」を下げると切り捨て、日弁連による、弁護士の経済的な現実問題の指摘は「物取り的次元」とまでされています。そして、弁護士の役割については若い人に夢を与える議論にせよ、と。

     これが、法曹養成を議論する有識者たちによる会議の現実です。これらの事実を見ただけで、この会議が出した方向が、仮に若い人に「夢」を与えるものであったとしても、それが、どこまで現実を直視したものかを、まず、疑わなければなりません。


    ただいま、「法曹の養成に関するフォーラム」についてもご意見募集中!
    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。
    http://www.shihouwatch.com/

    司法改革に疑問を持っている人々ための無料メールマガジン「どうなの司法改革通信」配信開始!無料読者登録よろしくお願いします。http://www.mag2.com/m/0001296634.html

    にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
    にほんブログ村

    にほんブログ村 その他生活ブログへ
    にほんブログ村



    人気ブログランキングへ

    スポンサーサイト

    テーマ : 資格試験
    ジャンル : 就職・お仕事





    コメントの投稿

    非公開コメント

    夢とはなんなんでしょうか。

    私は,この法曹養成フォーラムの出すという「夢」が全くわかりません。夢とは,普通お金を稼げるようになるとか,そういうことだと思っていましたが,そうではないようですからね。とすれば,自らも飢える寸前になりながら(実際にそういう法科大学院卒の若手弁護士がいるから恐ろしいのですが)弱者救済に奔走するとか,そういうこととしか思えません。果たして,そんな「夢」に乗っかってくるような人がどのぐらいいるのでしょうか。弁護士の仕事は,今後鳩山家のような超大金持ちの子弟の慈善事業にしかならないのではないでしょうか。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR